杜撰な脳内妄想

財政制度等審議会財政構造改革部会の新聞社メンバーを再掲します。

【委員】

岩崎 慶市 (株)産業経済新聞社論説副委員長

玉置 和宏 (株)毎日新聞社特別顧問(論説担当)

【臨時委員】

榧野  信治 (株)読売新聞東京本社論説委員

長谷川 幸洋 東京新聞中日新聞論説委員

【専門委員】

五十畑 隆 (株)産業経済新聞社客員論説委員

田中 豊蔵 元(株)朝日新聞社論説主幹

渡辺 恒雄 (株)読売新聞グループ本社代表取締役会長・主筆

名簿順からですが、

    委員 > 臨時委員 > 専門委員
で関与が深いと考えて良いかと思います。関与が深いとは財政制度等審議会財政構造改革部会の結論に賛成し、それに副った意見しか言わないと言う意味です。社会の木鐸とか公器とか自分では言っているようですが、この財務省主導の「結論ありき」の会議の内容の枠内しか考えず、それ以上は何も考えず判断しないと受け取っても良いと思います。

中間管理職様のところから引用としますが、1/20付の産経新聞の「主張」からです。ただのベタ記事や解説記事ではありません、新聞社が自らの考えを世に問う論説部分としてもよいかと考えます。上記のように御用新聞化している事を前提として読んでもこの記事は余りにも杜撰と考えます。

【主張】診療報酬改定 開業医も痛み分かち合え

産経ニュース 2008.1.20 02:53

http://sankei.jp.msn.com/life/welfare/080120/wlf0801200253000-n1.htm

 来年度の診療報酬改定の個別点数配分の議論が中央社会保険医療協議会中医協)で始まった。今回の改定の大きな課題は、過酷な労働を強いられている勤務医対策だ。医師不足が深刻化する産婦人科や小児科、救急医療などに手厚く配分することを求めたい。

 厚生労働省が開業医の再診料引き下げを提案した。再診料は、開業医(710円)が病院(570円)よりも140円高い。厚労省はこれが、病院の夜間外来に患者が集中する一因になっているとみている。開業医の引き下げで浮いた財源を、勤務医の待遇改善策に充てようというのだ。

 厚労省がまとめた医療経済実態調査によると、開業医の平均年収は2500万円で勤務医の1・8倍だ。限られた中でメリハリを付けるためにも、思い切った引き下げが必要である。

 厚労省は再診料引き下げと同時に、開業医の夜間報酬を上げることも提案している。夜間救急を開業医にも分担してもらい、勤務医の仕事を減らそうとの狙いだ。開業医は夜間診察をすれば、再診料の目減り分を補えるわけで、積極的に協力すべきであろう。

 ところが、日本医師会(日医)はこの提案に強く反対し、中医協の答申案骨子から「引き下げ」の文字が削除された。エゴむきだしの主張だ。今回は、日医が政府・与党に強く働きかけて、医師の技術料にあたる診療報酬本体部分が8年ぶりに0・38%のプラス改定となった。産婦人科や小児科など医師不足対策を理由としていたことを忘れてもらっては困る。

 しかも、診療報酬本体部分の引き上げは、結果的に健康保険組合がその財源を肩代わりする形で実現した。大企業のサラリーマンは平均年5000円の保険料アップになるという。

 医師不足対策はサラリーマンら国民に押し付けておいて、自分の身を切るのは嫌だというのでは、とても理解は得られまい。開業医も応分の痛みを分かち合うべきだ。

 ただ、勤務医に手厚くしようとしても診療報酬を受け取るのは病院だ。勤務医にどう配分するかは病院経営者の判断にかかっている。引き上げ分が勤務医の待遇改善にきちんと反映されるよう、国民がチェックできる仕組みの導入も必要である。

正論も入っています。

    ただ、勤務医に手厚くしようとしても診療報酬を受け取るのは病院だ。勤務医にどう配分するかは病院経営者の判断にかかっている。引き上げ分が勤務医の待遇改善にきちんと反映されるよう、国民がチェックできる仕組みの導入も必要である。
まさにその通りで、この記事にも書かれている通り、
    今回の改定の大きな課題は、過酷な労働を強いられている勤務医対策
これが根本の目的ですから、病院側に配分された診療報酬が「勤務医」のために使われてこそ初めて政策が生きる事になります。しかしそんな事は可能でしょうが、勤務医に配分されるためには病院が勤務医に配分するだけの余力が無いと話になりません。そこまで考えて初めて対策と言えます。

中央社会保険医療協議会 調査実施小委員会(第23回) 議事次第日本病院団体協議会提出資料があります。そこに病院の経営状態を示すデータがあります。

開設主体 平成17年度赤字率 平成18年度赤字率 年間赤字増加
国立 66.14 69.29 3.15
公立 89.28 92.73 3.45
公的 45.89 58.90 13.01
医療法人 19.68 25.33 5.65
個人 14.93 21.21 6.28
その他 42.19 47.67 5.48


この数字を見ればおわかりの通り、国立、公立、公的病院の多くは赤字です。黒字のところも黒字幅が年々縮小しアップアップのところが大部分です。民間病院も経営が厳しくなっています。勤務医の待遇が改善するためには、この赤字が一層され、経営に余力が出て初めて実現します。こんな事は経営のイロハです。診療報酬の配分で収入が増えた分を病院の経営改善に回さず、勤務医の待遇改善にのみに費やせば本体である病院が倒れます。

総額でいくらが病院に回るかの概算はここでは難しいですが、その額で赤字病院が一掃され、勤務医の待遇改善まで手が及ぶ事を検証してから物を言えとつくづく思います。雀の涙ほど診療報酬が上れば勤務医の労働環境がすぐにも改善されるとか、そうならなければ病院が利益を着服しているような書き方は問題が多すぎます。



何も考えない、受け売りの垂れ流しにしても、余りにもがこの部分です。

    厚生労働省が開業医の再診料引き下げを提案した。再診料は、開業医(710円)が病院(570円)よりも140円高い。厚労省はこれが、病院の夜間外来に患者が集中する一因になっているとみている。
本当に正気で書いているのか頭を疑います。平日の診察時間の再診料はたしかに、開業医が710円、病院が570円です。まずここで病院ですが、570円なのは病床数200未満の中小病院だけです。200床以上の病院では名称が外来診察料に変わり700円です。つまり200床以上の病院では10円高いだけです。あえてまとめると


医療機関 再診料 診療所との差額
診療所 710円
200床以上の病院 700円 −10円
200床未満の病院 570円 −140円

一応厚労省見解の引用としていますが、再診料の差で夜間外来が繁忙すると言うのなら、その繁忙の度合いは

    200床未満の病院 >> 200床以上の病院
当然こうならないといけないはずです。開業医と差額140円が患者の動向を左右するのなら、診療所に較べて10円しか変わらない200床以上の病院は忌避され、140円の差額がある200床未満の病院に殺到するのが当然となります。なんと言っても130円も差があるのですから、巨大な影響力があるはずです。

そもそも本当にこれが厚労省の見解かどうかも怪しいと考えています。これぐらいは言い出しかねないところも多々あるのですが、そこまでバカではないと考えています。夜間外来を受診した時には、診療時間帯と異なる加算料金が加わります。医科診療報酬点数表から引用します。

保健医療機関が表示する診療時間以外の時間、休日又は深夜において再診を行なった場合に、それぞれ所定点数に65点、190点又は420点(6歳未満の乳幼児においては、それぞれ所定の点数に135点、260点又は590点)を加算する。

いわゆる時間外加算のことで、ここで深夜とは午後10時から午前6時の事を指します。他にも細かい加算はあるのですが、これは診療時間内でも時間外でも同じと見なしてよいですから、再診料の差がどうなるかですが、深夜以外の時間外受診でも、

医療機関 再診料 時間外加算 診療所との差額
診療所 710円
200床以上の病院 700円 650円 +640円
200床未満の病院 570円 650円 +510円


深夜や休日になればさらに拡大しますが、200床以上の病院で640円、200床未満の病院でも510円、夜間診察を受けた方が高くなるのです。別に知られざる事実でも公然の秘密でもなく、産経新聞社以外の人間なら額の詳細はともかく常識です。この論説を書いたお偉い、お偉い論説委員は、今日の今日まで、診察時間帯の診察料と時間外診察が同じだと信じていたことになります。

産経は麗々しくも140円の負担が夜間診療が繁忙になる一因であるとしています。それも厚労省の見解であるとしています。私はあえて厚労省を弁護しておきます。まず産経記事のようなニュアンスでは発言していないと考えます。これはこの論説を書いた担当者の脳内妄想であろうと思われます。

産経新聞社に問いたい、

  • 夜間受診は深夜でなく、200床未満の病院であっても、昼間の診療所より510円高くなる。なのに実際の支払額よりも再診料のみに患者は注目して夜間診察を選択する理由を説明せよ。


  • 貴社はこれを厚労省の意見とするが、それならばそのソースを示せ。この程度のソースは取材源の秘匿に該当しないと考えるられる。