奇々怪々

また加古川かと思われるかもしれませんが堪忍してください。あれからも情報が断続的に入るのですが、入れば入るほど謎は深まっていきます。もちろん焦点は「消えた搬送先探し」です。この事件にはマスコミ報道、Dr.I様のところの内部情報、判決文要旨の3つの大きな情報源があります。内部情報と他の2つの情報の最大の違いは搬送先探し騒動の有無です。この騒動の有無については補足情報から「確かにあった」との感触が非常に濃厚です。出来る範囲の検証としてこの3つの情報の時間経過を見直してみます。ただしここでは出所がはっきり出せない情報が混じっているためそこの点は御了承ください。



出来事
マスコミ報道
内部情報
判決文要旨
発症時刻11:30頃記載なし事実認定では12:00頃発作
問診で11:30頃より胸痛確認
来院時刻朝日情報では12:15不明12:15
医師受診時刻不明12:00すぎ12:30
診断時刻不明12:40頃12:39
搬送決断時刻13:50診断後引き続き13:50
トロポニン検査判明時刻なし12:40頃12:39
除脳硬直発生時刻14:3014:3014:30
死亡時刻15:30頃15:30頃15:36


わざわざ3つ並べたのは内部情報は記事情報だけでは書けない事を検証したかったのです。3つの情報は細部で微妙に異なりますが、内部情報及び判決文要旨に書かれているトロポニン検査情報が内部情報の信憑性を裏付けていると考えます。この検査の有無と検査時刻は現場に居合わせたもので無いと分からないと考えます。全くの創作では作りようが無いからです。

他の情報とも合わせてやはり「搬送先探し騒動」はあったと考えます。あったものがなぜ消えたのかになりますが、まず訴訟でこの騒ぎの事実認定を行なったかどうかです。これは判決文の読み方になるそうで、プロの判決文要旨の解釈は

    最初から事実認定を争わなかった
つまり被告側はこの訴訟でこの騒ぎが「なかった事」にしたと考えるのが常識だそうです。決して法廷で争った挙句、法廷が事実認定しなかったわけではないと言うことです。搬送先探し騒動が法廷から消えたのは、原告側弁護士の巧妙な法廷戦術や、裁判官の無理解といった性質のものではないと言う事です。もし争っていれば、「事実認定できない」みたいな表現になるとの事です。

法廷に被告側がこんな重要な事を持ち出さなかったそれだけで「原因不明の謎」なんですが、騒ぎを法廷で事実認定してもらうためには、やはり証拠が必要です。証拠として考えられるのは、

  1. カルテ記載
  2. 通話記録
  3. 関係者の証言
カルテ記載は一般的に必須のものの認識が医師にはありません。また当日は裁判所が事実認定したように救急外来は「多忙」であり、被告医師は死亡した患者につききりでは無かったと考えます。他の救急患者の診察の合い間、合い間に診察、治療を行なっていたと考えるのが妥当です。搬送拒否の記載の習慣が無く、そのうえ多忙であったのでこれは致し方なかったかと考えます。

通話記録は何度かこの事件を取り上げた時に頂いた情報に、時期的にもう消去されているはずだのコメントがありました。その辺のシステムには詳しくないのですが、これはそのまま信用しても良いかと思います。

カルテ記載と通話記録が物理的に無くとも関係者の証言は残っているはずです。最低限の関係者として、当事者である被告医師、外来看護師がいます。被告医師は訴訟の当事者としても、外来看護師は証人になるかと考えます。ただしこの場合は、被告医師に近すぎるとして証拠能力がやや弱いとされるそうです。

加古川病院関係者が被告に近すぎると言うのなら、搬送依頼先病院の関係者がいます。搬送依頼電話はまず搬送先病院にかかります。搬送を依頼した病院クラスなら、事務当直が電話を受け、それから当直医に取り次ぐのが普通です。少なくとも各病院に2人、5病院ですから最低限10人はいます。事務当直は取り次いだだけですから記憶に薄いかもしれませんが、当直医は直接対応しているわけですから、最低限5人は存在していると考えます。

5人は医師ですし、この件で依頼があった事実を証言してもさして問題があるとは思えません。「○○の理由で搬送依頼を断った」だけの証言ですから、同じ医師としてその程度の証言を断るとは考え難いところがあります。ところがこれも協力を得られなかったようです。この辺は頂いた情報のニュアンスの解釈になるのですが、医師個人が断ったと言うより、病院が「そんな事実は記録に無い」的な回答で門前払いしたような感じです。ニュアンスの解釈なので微妙ですが、とにもかくにも5病院から等しく協力を得られなかったのは事実のようです。

被告側としては、事実認定の3点セットのいずれも得る事が出来ず、医師と外来看護師の証言だけでは事実認定が困難と判断して争わなかったのが「消えた搬送先探し」の真相との情報となっています。

証拠が得られなかったから法廷での立証を断念したのはなんとか理解できたとして、なぜ5病院が一致して協力を拒否したかの謎が依然として残ります。5病院はいずれも経営母体が違います。高砂、三木はそれぞれの自治体運営の病院ですし。姫路循環器は県立、神鋼加古川は私立、は神戸大学病院となると国立です。地理的に神鋼加古川高砂、姫路循環器、三木はある程度連携が取る可能性があるにしても、神戸大病院はそういう連携とはやや別格と考えます。

それがそろいもそろって口裏をあわせたように非協力とはちょっと考えられません。舞台裏で何があったのか、まさしく奇々怪々です。