4月にすったもんだの末に、限りなく黒に近い灰色決着になった看護師内診問題。発端の発端は現国立看護大学長の田村やよひ氏が厚生労働省看護課長時代に出した2通の通達であり、直接の発端は去年の堀病院事件です。堀病院事件以降、巻き返しを図る産科サイドは内診内測分離論で名を捨て実を取る戦略を行ないましたが、土壇場で厚生労働省看護課及び看護協会の密接な連携による猛反撃を食らったのは周知の事です。
患者不在の不毛の抗争でしたが、現時点では上記したように限りなく黒に近い灰色の決着で、判定としては産科サイドはKOこそされなかったものの、大差の判定がついていると言ったところです。また内診内測分離論の推進に助力したと伝えられる武見副大臣も看護師サイドの猛反撃が始まってからはダンマリ状態になり、メタボに逃避している状態です。大臣は完全に蚊帳の外ですがね。
雨霰の看護師サイドの猛反撃ですが、「過ぎたるは・・・」の指摘が出てきています。大勢への影響力は乏しいのですし、「そこまで言うなら」式ですので余話としますが、理屈は通っています。
まずかなり偏った主張ではありますがeggplanty氏の看護協会 Watchを御参照ください。eggplanty氏はまず看護協会の基本主張として、
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看護協会は、内診を「高度な知識と技術、臨床家としてのリスク感性等が求められ、国家資格をもつ助産師、医師以外の内診は違法行為である」としている。
この主張を受けてeggplanty氏は「そこまで言うなら」の反論を行なっています。
医師であれば「高度な知識と技術、臨床家としてのリスク感性等」が求められるような医療技術は、間違っても免許を取る前の学生にやらせたりはしない。やらせれば犯罪だ。
ところが、助産婦の実習生は、そうした高度な医療行為を国家資格を取る前に普通にやっているのだ。
田村よ。看護協会よ。実習生は助産学実習で内診をしているのかいないのか?「明確に」してもらいたい。
田村/看護協会のロジックに従えば、次のような呼びかけが正当化される。
実習病院は、いますぐ助産婦(師)実習生による内診を明確に拒否せよ!
屁理屈と冷笑する向きもあるかもしれませんが、このロジックを論破するのは容易ではないと考えます。医学生は患者に対する侵襲行為は一切許されず、ポリクリと言えども問診や侵襲を伴わない診察、見学のみしか許されていません。看護師資格を持っていても内診行為が一切許されないのであれば、助産師学校生徒でもあっても扱いが変わるはずがありません。助産師学校の生徒は一般に看護師資格を有していますが、助産師資格は無いからです。
つまり助産師学校の生徒が持つ資格は看護師資格だけであり、助産師資格は当然無く、看護協会が主張するところの「内診してはならない看護師」に該当します。また助産師学校生徒であるからと言って助産師免許の仮免みたいな制度は無く、資格としてはただの看護師であるということです。
もう一つ助産師・アロマ・自分奮闘日記にもっと恐ろしい事を書かれています。このブログは6年目の現役助産師が書かれているようですが、現在の助産師教育の実態を赤裸々に書かれています。まず引用先を読まれることをお勧めします。
要点をピックアップすると
- 看護大学4年間で看護師、保健師、助産師の免許がとれるシステムに変わる。
- このうち助産実習は「実習期間はたった6週間!!たった6週間で分娩を10件とる!!そして、取るだけ。」
- 大学の助産実習の指導講師は1件しか分娩を扱ったことが無い。
看護師資格のみを持つ看護師の無資格内診は捜査員50人よる強制捜査まで行なわれています。これは堀病院だけではなく、たしか10箇所ぐらいの産科病院で行われたはずです。起訴は諸般の事情で見送られましたが、看護師による内診問題は未だに黒に近いグレーのままです。
警察の皆様、全国の看護大学や助産学校にはもっと悪質な法律違反が白昼堂々行なわれています。看護師による内診は黒に近いグレー決着ですが、それでも運用上で辛うじてお目こぼし程度の扱いになっています。それも内診の一部の内測だけです。ところが助産師学校では看護師資格のみによる分娩が行われ、看護大学に至っては全くの無資格者による分娩が行なわれています。
これが犯罪でないのなら看護師による内診問題など鼻で哂える程度のことです。それとも学生という身分は、そういう法律を超越した存在になったのでしょうか。この無茶苦茶な矛盾は、個人的には「過ぎたるは及ばざるが如し」を地で行っていると思うのですけどね。