皇室問題はしばらくお休みにします

小泉首相が召集した皇室典範改正のための有識者会議の結論は、これまでの男系維持が不可能となったので女性皇族に継承権を与えるとともに、これまでご結婚後は臣籍降下する規則であったのを新たに宮家を創設させ後継者を作ろうとするものでした。

この改正に従えば継承権2位は愛子様になります。女性が皇位につく事については、現在の男女同権の時代に相応しいと手放しで考えも強く、紀子妃殿下の第3子がたとえ男児であってもこの声は根強く残る事は想像され、いずれにしろ将来のために必要な皇室典範改正論議に大きな影響が残る事は間違いありません。

たぶん出てくる声は「女だからと言って、そこまで排斥するは時代に逆行している。直系の第1子の愛子様がなぜ皇位につけないんだ」と、なかなか手強い意見です。正面切って反論するのは非常に難しいところです。男系維持論者の拠り所は皇室2000年以上の伝統の保持ですが、これだけを材料に反論しても、「皇室も時代とともに変わる必要がある」とでも付け加えられたら、たとえ反論しても水掛け論で平行線が関の山です。

私も当初は女性天皇歓迎、その延長線上で女系天皇もまた容認論でした。今でも絶対男系維持ではありませんが、少々スタンスが変わってきています。というのも後継者枯渇の危機から出された有識者会議の改正案でも、皇室の安定に役立ちそうにないと考えるからです。

記憶がやや曖昧なんですが、若い皇族女性は愛子様を含めて4〜5名であったはずで。時代が下るほど男性女性を問わず皇族方のご結婚は難航する傾向があります。それでも男性皇族に嫁ぐ女性は実態はどうであれ「究極の玉の輿」ともてはやされます。臣籍降下する女性皇族を嫁にもらう男性は莫大な持参金を羨ましがられるのと、これ以上は無い肩書きが形の上ではつきます。

デメリットは多々あるでしょうし、普通に庶民の結婚相手を選んだ方がよほどラクで幸せかもしれませんが、まだそれでも名乗りを上げたり、選ばれて従う人は確実に存在します。ところが改正案の女性皇族の旦那とはどんな人を想像しているのでしょうか。それともそんな人間がはたして存在するのでしょうか。どうにこうにも具体的な想像をするのが困難です。なんと言っても日本では皇室は残りましたが、貴族階級は綺麗に消滅しており、名家であればあるほどうるさくなる釣り合いなど取れる家柄は存在しないからです。

たとえば世界の大企業であるトヨタ自動車の御曹司であっても皇室から見ればクルマ屋の息子です。天下のパナソニックの一族であっても電気屋の息子です。皇室クラスの家から見るとお里の知れた庶民です。旧徳川家の一族クラスでも朝敵の子孫ですし、旧華族の生粋の京都貴族の出身であっても、家柄だけはカツカツで、実態はただのサラリーマンです。配偶者選択獲得の困難さを考慮すると、現改正案では皇室の安定繁栄に寄与すると思えないのです。

皇室を安定繁栄させるためには子孫を増やし継承者を増やす事です。まず現在の皇室典範のままでは、紀子妃殿下の第3子以外には期待が持てません。紀子妃殿下は生来もう少し多産系の可能性があり、これからバンバンなんて説もあるそうですが、お年はもう39歳。おそらく東宮家への配慮などもあり控えられていた部分もあったでしょうが、幾ら望んでも後一人、がんばって後二人が限度ではないかと考えます。

紀子妃殿下の御懐妊に刺激されて雅子妃殿下もガンバル説もありますが、雅子妃殿下にこれ以上多くのことを望めないのは周知の事実として国民は承知しています。となれば最大で次々世代の皇室を支えるのは最大で3人となります。下手すると一人も無しも可能性としてあります。

有識者会議の改正案の最大のガンは若い女性皇族が有識者会議の目論見どおり結婚して子孫をふんだんに残してくれるかどうかに尽きます。これについての懸念は既に上述しました。非常に心許ないと評価せざるを得ません。

となれば他の方法を考えなければなりません。現皇室内で御子孫増やせる可能性が低いとなれば、皇室外の人に後継者を増やす事です。皇位継承のための絶対条件は古来からただ一つです。天皇家の血筋を明瞭に男系で引いている事です。爺さんのホラ話であるとか、怪しげな家系伝説ではダメです。現在の境遇はともかく、間違いなく証明された事実で、由緒正しく天皇家の男系の血を引いている事です。

そんな家となると旧十一宮家以外は存在しません。他にもあるかもしれませんが、旧十一宮家でもときに怪しまれる事があるのですから、他では無理です。これをなんらかの形で復権させる事が一番効果的ではないかと考えます。

長い回り道になりましたが、ここで冒頭に挙げた「愛子様が女性であるから天皇にさせないか」の議論に戻ります。現代の日本の常識として「兄弟姉妹であれば男女といえども差別しない」はわかります。この主張は根拠がありますし、民法でも明確に定義されていますし、私も尊重します。ただし兄弟姉妹であっても長幼の順によって差別しない」もまた同じように尊重されるのではないでしょうか。

兄弟姉妹の第2子、第3子であるからと言って法律上はなんの差別、区別も無いのが現代社会です。実態はともかく建前はそうです。この建前を間違っているという根拠はありません。であれば女性差別をするなと同様に兄弟姉妹差別をするなの声もあってしかるべしでしょう。ただしそこそこ財産のある家では相続者が大部分を引き継ぎます。その後継ルールはその家のその時々の事情により様々です。実子がボンクラであれば養子を取ることさえもあります。

これはあくまでも私案ですが、旧十一宮家を準宮家として皇族に復帰させるのです。身分も準皇族とします。正式の皇族とどう違うかですが、正式の継承権は準皇族には無いものとしするかわりに、宗家である天皇家に養子を出せる資格はあるとします。養子となった時点で正式の皇族に昇格します。

また準皇族と言いながら皇室費用は申し訳ありませんが僅少なものにしておきます。ようするに養子を出せる家系の認証だけを与える事にするのです。名誉な肩書きが増えるだけで旧十一宮家の皆様には負担ばかりが多い制度ですが、旧宮家の方々の皇室への忠誠心は極めて厚いとお聞きしています。なんとかお聞き届けいただけるのではないかと推察します。

いずれにしてもしばらくは皇室問題はお休みにしたいと思います。当分はどんな案を書いても、世論の大勢がどう傾くが読めませんので静観と言う事で。