医療報酬引き下げ

分かっていたとはいえ実際に決まるとため息が出ます。まずまず開業医への影響は甚大です。かの医療経済実態調査で、収支差が100万円以下の診療所が1/3、150万円以下まで拡げると半分があたります。さらに平均以下の診療所となると7割を占めます。収支差とは一般に院長の給与ととられそうですが、ここから福利厚生費、退職金積み立て、設備の更新充実、診療所自体の改修やリニューアル費用が支払われます。どれぐらいをその資金に回すかは経営戦略でかわりますが、少なく見積もっても5万とか10万ぐらいの規模でない事は間違いありません。

収支差とは売り上げから職員の給与を始めとする必要経費を差し引いたものですが、必要経費自体は減りません。薬価や材料費が引き下げられても仕入れ値もそれだけ比例して必ずしも下がるものではなく、医療側が患者側に提供する定価が下がるだけですし、経費の大部分を占める人件費なんてよほどの事がない限り下げられるものではありません。

例えば医療経済実態調査での平均では、おおよそ600万円の売り上げで200万円の収支差があるとなっています。この平均値がいかに実態とかけ離れたものであるかは12/2のうちのBlogで解説しました。その平均でも3%の診療報酬の削減があれば、18万円の収入が減ります。減った分はほとんどが収支差分を直撃します。つまり9%の減少です。

この減少比率は収支差が少ない診療所ほど深刻になります。医療には一定の絶対経費が必要です。つまり収支差が200万円でも100万円でも余り変わらないと言う事です。全体の1/3の収支差100万円以下の診療所では、売り上げが500万程度と想定され、3%減少なら15万円、すなわち15%もの減少となります。収支差100万の診療所では収支差が85万円となり、そこから医療経済実態調査で経費と認められていない経費分を差し引けば70万円そこそこに落ちるのは確実です。院長は経営者ですから、ボーナスなんてありませんから、年収が800万程度となります。ここからもちろん税金は引かれていきます。

さらに今度の医療費改定では受診抑制策がテンコモリ盛られています。どの程度減るかは私では正確な試算は難しいですが、どうみても1割程度は影響が出るとしても不思議はありません。そうなるとどうなるか、もともと500万円の売り上げが患者が1割減れば450万円、そこに診療報酬削減が3%ですから13万5000円、すると売り上げは436万5000円、収支差は36万5千円となります。年収は300万程度に落ち込みます。これほど単純ではないかもしれませんが、開業医の1/3の年収が500万円以下になるという計算が容易に成り立ちます。また診療報酬は従来、診療所に厚めに病院に薄めに配分していましたが、これを是正すると意気込んでますから、さらに減少することは確実です。

こういう影響は収支差が大きいところほど小さいのです。つまり収支差の平均値を境にして平均より上の3割の診療所は「痛いな」程度ですが、平均以下の7割は「苦しい」となり、7割のうち約半数は「死活問題」となります。

医師の権益の擁護団体とも言える医師会はまず莫大な入会金が必要です。私のところで全部で500万近く必要です。年会費も一般感覚からすると相当高額です。それを払うのは医師の利益を代表してくれるからです。ところが屁のツッパリにもならないとすれば、今でも問題になりつつありますが、医師会に入らない医者が今後益々増える可能性があります。また医師会以外の新しい団体が作られるかもしれません。払った分だけキッチリ仕事をしてくれる団体です。

寒波襲来に震えながら寒々しい試算をした今朝でした。