民主党

先の総選挙で大敗しとはいえ曲がりなりにも日本の二大政党の一翼です。大敗した前の選挙もよく分析すると、ほんの5%ぐらい投票動向が変われば民主党政権が出来たかもしれないぐらいの勢力はあります。

この党の目標はなんでしょうか。もちろん自民党から政権を奪取する事です。「より良い日本を作る」とかいくらスローガンを唱えても政権を握らない事には話になりません。例えは悪いかもしれませんが、「大学で勉強するんだ」といくら力んでも、大学に入学しない事には話が始まらないのに似ているんじゃないかと思ったりもしています。

政権奪取は政争です。綺麗事では獲れません。前の総選挙の大敗の原因は幾つかあるでしょうが、自民党小泉劇場と言われるほどの巧妙な選挙戦術を展開したのに較べて、民主党は余りに無策であった事です。総選挙がないと政権を取れないのは絶対前提ですから、解散総選挙に持ち込むために郵政民営化反対に回った戦術はしかたが無いとして、民主党の本音として郵政民営化を正面切って争点にしたくない選挙戦術では無策の象徴と酷評されても当然かと考えます。

選挙戦は何を争点にするかが肝要です。最近の選挙の勝敗の鍵を握るのは無党派層の動向です。どれだけ無党派層を取り込めるかが勝敗を決すると断言してよいかと思っています。無党派層の取り込みには候補者個人の努力はほとんど意味がありません。告示から投票までの間の選挙期間中に候補者が無党派層に出来ることは、何回か選挙カーが「お願いします」と通るぐらいの事です。人にもよるでしょうが、あんなものは時間帯によっては迷惑なだけで、昼寝の邪魔にでもなったら「絶対投票しない」と決める引き金にもなりかねません。

そうなると投票を決める最大の要素は候補者が所属している党がどういう政策を訴えるかです。その流れに沿って民主党はマニュフェストなるものを持ち出だしています。ところがこのマニュフェストがいかにも総花式な代物で、いくら読んでも「うちにまかせてもらえれば、大丈夫です」としか書いてないのです。重要案件になるほど具体策を書かずに「きっと良くなります」の結論しか書いてなく、そのうえ何でもかんでも詰め込んであり、自民党の公約同様、選挙が終われば自分のしたいことだけ「選挙で約束した」と取り出してくる役割以上のものは期待できません。

選挙には日常活動による長期戦略と、解散直前の政治状況による短期戦略の二つに分かれると考えます。短期戦略はその時に臨機応変に対処せざるを得ませんが、長期戦略は今の時点からコツコツと積み上げておく必要があります。長期戦略には幾つか考え方がありますが、現在の小選挙区の特徴からして、最終的に有権者にシロかクロかの選択枝に絞り込ませる党の特徴をアピールしておくのが重要だと考えます。理想的にはそれが短期戦略と融合すれば完璧です。

かつての五五年体制のような社会党自民党では政策が水と油でしたが、民主党自民党は血の濃い兄弟みたいな関係です。どうしても似たような政策になるのはしかたありませんが、似ているから容易に相手の支持者を引き込む事が出来ます。似ているからと言って全く同じ政策では支持を集める事は出来ません。どこかで違いを際立たせる必要があります。野党の有利さは自由に争点を選べることができます。必ずしもすべての政策で争う必要は無く、「ここぞ」という一点だけを浮き彫りにすればよいのです。

そういう意味で前原民主党代表の中国問題の発言は愚策です。日中関係は重要な課題ではありますが、正直なところあんなもので注目を集めても選挙の足しになるとは思えません。大多数の選挙民にとっての関心は外交ではないと考えます。大きな関心は現政権の小さな政府路線による社会保障の切り捨てや、憲法改正まで踏み込もうとしている安全保障問題です。そこで自民党と一味違う路線を鮮明にする事こそが長期戦略になると考えます。

政治家個人としての信念や信条はあるかもしれません。それでもあまりに偏った主張は熱狂的な支持者は集めるかもしれませんが、逆に反発するものも多く、差引勘定は下手するとマイナスになります。とくに靖国問題まで絡んでくる中国問題は現在の政治情勢ではどういう立場をとっても賛成、反対意見が噴出するのに、ここに自民党との争点を求めようとする戦略は足もとの党内抗争の火種にすらなり、政権を狙うマキャベリストのする発言とは思えません。

民主党も人材不足ですね〜。