恋せし乙女の物語(第22話)ウンザリする真相

 アキラにはロリコンさえ越えるペドフィルまであり、それを明日菜が呼び覚まして中学生相手に熱中するようになったって言うけど、

「アキラ君のファッションセンスだよ。あんなものが似合う女は明日菜ぐらいしかいないじゃない」

 あんなものが似合っているものかと言いたいけど、悔しいけど似合ってるところはあった。あんなものが似合ってしまうのは、

「明日菜の童顔と幼児体形の賜物」

 賜物って言うな。どれだけコンプレックスを抱えてると思ってるんだ。だけどアキラのロリコン風ファッション好みは事実だし、年を追うごとに過激になっていたのも事実だ。あれは明日菜をロリータにしたかっただけだなんて・・・千秋も気づいていたなら、

「だから後出しジャンケンって断ったじゃないか。だいたいだよ、学生の時に明日菜に言ったところで素直に別れた?」

 む、無理だ。聞く耳なんて持つはずないし、それどころか千秋と大喧嘩の果てに絶交になってたと思う。こんな事は今だって全部は信じきれないところがあるぐらい。ところで呼び覚まされたってどういうこと。

「前科があったんだよ。正確には前科にならないけど、前科とした方がわかりやすいと思う。アキラ君は中二の時に小六の女の子を襲ってるんだよ」

 ガビ~ん。ガチの犯罪者じゃないか。それも女の敵、レイプ魔だ。

「まあそうなんだけど、その時にアキラ君はまだ十三歳だったんだよ」

 歳なんて関係ない。明日菜が裁判官なら去勢してやるのに。

「そうはいかないのが少年法なんだ」

 それぐらいは知ってる。刑務所の代わりに少年院送りになるんだよね。

「なってないどころか、罪にも問われていない」

 なんだって。カネの力でもみ消したでも言うの。ここは日本だよ、

「少年法も年齢によって扱いが変る法律なのよね」

 それは明日菜だって聞いたことがある、成人年齢の引き下げで十八歳以上から二十歳未満の扱いが変ってるはず。

「それもあるけど、十四歳未満は刑事責任が問われないんだ。もっとも何もないわけじゃなく触法少年として保護の対象になるし、それからあれこれあるけど、そこは長くなるから省略しとく」

 アキラはそれからカウンセリング治療を延々と受けていたらしい。学校も大阪の私立だったけど、そんなことをすれば退学になり、さらに噂も立つから何回か転校を繰り返していたで良さそう。

「木島産業の跡取り息子だからね」

 カウンセリング治療の効果がどれほどあったのかは不明だけど、大学に入る頃には治療終了となり明日菜に目を付けたって流れになるのか。永遠の謎と思っていた、どうしてアキラが明日菜を好きになったのかの理由はわかったけど、まさかロリータの代用品だったとは。

「それとあの部屋だけど、出来たのは卒業してからじゃないの」

 いや大学四年の時だったはず。結構なリフォームをしてたもの。

「中の様子は啓介も話してくれただけだけど、完全防音で、まるでお姫様用みたいな天蓋付ベッドがあって、部屋の内装だって・・・」

 ロリロリ趣味満載の部屋だったってことよね。だから明日菜にも秘密にしたのか。

「社会人になって気づいたことは何かなかった」

 同棲を断り続けられたり、結婚へのステップを渋られまくったりもあったけど、逢う回数が減っただけでなく、ヤル回数も減ってた。その代わりでもないけど、今から思えばロリータ趣味が過激というかディープになってた。あの変態野郎のリクエストの姿になるのは時間と手間が半端じゃなかったもの。

「たぶんだけど、明日菜が明日菜なりに大人になったからで良いはず」

 引っかかる言い方だけど老けたって言いたいの。

「誰もそんなことは言ってないよ。相変わらず可愛いけど、学生の時とは見違えるぐらい大人っぽくなっていて驚いたもの。だからアキラ君は気移りしたで良いと思うよ」

 じゃあ、じゃあ、別れたって良いじゃない。

「たぶんカムフラージュにされたんだと思う。明日菜がいくらロリータやっても年齢で疑われないし、むしろ明日菜の趣味って思われるよ」

 そんなオバちゃんタレントがいるものね。

「それと同い年の彼女がいたら裏でロリコンに励んでもバレにくい」

 なんだよそれ。アキラの明日菜への愛のすべてが偽りではなかったと思う。でもどこかで切り替わっていたのは事実だろう。遅くともあのヤリ部屋を作った時にはそうなっていたはず。それに気づかず能天気だった明日菜はピエロだよ。

 アキラにしたら明日菜がロリータで無くなるほど醒めて行き、社会人になった頃にはカムフラージュのためだけにオバハンと思いながら義務的に抱いていたのか。そんなアキラに愛を感じて満足させてられていたなんて道化師芝居も良いとこじゃないか。

 ダメだ涙が溢れて来るのが止められない。明日菜の六年間はなんだったの。ロリコンのベドフィル野郎にバージンを捧げ、イキまくるところまで弄ばれ、そんな最低野郎に尽くしまくり、結婚まで真剣に夢見ていたんだよ。

「明日菜、今夜は朝まで付き合うよ」

 千秋の優しさが身に染みる。千秋はポンポン言うタイプだし、男だって気に入らなければサッサと切り替えるけど、本当に友だち思いで気配りができる人なんだよ。今日だってわざわざ明日菜のために来てくれたんだ。

 そりゃ、彼氏がたまたま事件の担当になったのもあったろうけど、ここまでの話を彼氏から聞き出し、落ち込んでいるはずの明日菜に話に来てくれたんだ。内容だって現段階では公表してはならないもののはずなのによ。

 千秋とも卒業後はさすがに疎遠になってた。勤め先が違うもの。社会人になっても合コンはあるけど、ガチの彼氏持ちの明日菜には無縁の会だったものね。なのに、なのにだよ、明日菜のピンチだとわかると駆けつけてくれたんだ。

「実はね、アキラ君の交友関係でわたしも捜査線上にあがったのよ。もちろん容疑者じゃなく、明日菜のことを知る友人としてね。知ってしまえば放っておけないじゃない」

 持つべきものは友だと本当に思った。一人でいたら気が狂ってたかもしれない。

「お腹空いたよ~」
「ピザかウーバーイーツで何か取ろうか」