ツーリング日和13(第25話)高知横断

 昨日は徳島から南に下り、室戸岬でターンして安芸のツーリングだった。今日は、

「あれが安芸市営球場か・・・」

 とりあえず聖地巡礼を済ませ西へ、西へ。クルマのドライブとバイクのツーリングは重なる部分もあるけど、同じではない。もちろんどんなツーリングコースを取ろうと自由だし、個人差が大きすぎる部分があるけど都市の観光は避ける傾向がある。

 理由は単純で信号地獄と渋滞が嫌だってこと。クルマだって嫌だろうけど、あれってしんどいのは運転手だけなのよ。同乗者だって辛いかもしれないけど、とにかく辛いのは運転手だ。バイクなんか運転手しか乗ってないものね。

 それとバイクの方が発進停止の繰り返しで受けるダメージは大きい。これはバイクが大きくなるほどそう。それととくにバイク女子なら気になるのがファッション。バイクウェアって街中ではどうしても浮くのよね。

「メットをどうするかも大きいぞ」

 それを言えば荷物もそうだ。ボックスでも装着してればまだしも、シートに括り付け状態の場合は、長時間バイクから離れるのは気を遣う。つまりって程じゃないけど、ツーリングにも観光はあるけど、出来ればバイクからあまり離れずにいたいと言うのはある。

「高知市は桂浜の龍馬像だけで駆け抜けるぞ」

 高知城はパスにするか。それとクルマだって窓から見える景色は重視されると思うけど、バイクの方がもっと重視されると思う。極端な話をすれば、ツーリングって走りながら見える風景に価値を重く置いている部分がある。

「ひたすら走るだけのツーリングをするのも少なくないからな」

 そういうわけで高知市も海岸線沿いにコースを取り浦戸大橋から桂浜に。桂浜って岬のように突き出た先にあるのだけど、ここは昔から土佐の名勝として知られ、とくに月見の名所とされたそう。

「あれが坂本龍馬の像か」

 中岡慎太郎の像も大きかったけど龍馬の像もさすがだよ。桂浜からもシーサイドロードだけど、宇佐大橋を渡って横浪黒潮ラインに。ここも四国で屈指のツーリングコースとされているところ。このコースを選んだのは絶景ロードでもあるけど、

「これで維新の三偉人の像を撮れたぞ」

 そうここには武市瑞山こそ武市半平太の銅像があるんだ。武市半平太像は第二次大戦後に出来たものだけど、共通しているのはどれも寄付とか募金を集めたものであること。

「みんな海を見てるな」

 そりゃそうなるでしょ。山見てどうするの。横浪黒潮ラインを抜け、須崎から四国横断自動車道に入る。これを下りたところで、

「お昼にしよう」

 道の駅あぐりの里窪川ってなってるな。せっかくだから名物を食べたいけど、なになに米豚ってのが名産みたいだ。でもここまで来たら、

「四万十川の鰻重は予算オーバーだからな」

 紹介するのはバイク乗りでも楽しめる範囲の物って条件付があるのよね。あれこれ却下されて、先輩は米豚丼、双葉は米豚カレー。この辺をバイク乗りなら頼みそう。それにしてもさすがに高知県も広いよね。

 というか、徳島からここまでほぼシーサイドロードじゃない。こんなに長いシーサイドロードは北海道にでも行かないと無いと思う。

「宮崎もそうだったぞ」

 あっ、そうだった。あそこも延岡から都井岬、いや志布志までそうだった。道の駅からもひた走り、あの川は、

「四万十川のようだな」

 日本最後の清流だ。これも見たかった。一条神社で休憩と取材をしてから、

「四万十川と言えば」

 屋形船での川遊び、

「バイク乗りがやるか!」

 それはバイク乗りへの偏見だ。

「水無月君が乗りたいだけだろう」

 バレたか。四万十市は四万十川の河口にあるのだけど、四万十川を遡りながら沈下橋の取材を何ヶ所かやって、

「今日の宿だ」

 なんとなんと温泉だよ。宿は鉄筋二階建てだけど、鄙びた感じは悪くない。まあこれぐらいの宿が多いけど、温泉なのはアタリだ。中も豪華には縁遠いけど、清潔感があって良い感じ。それよりなにより、風呂が岩風呂なのが乙だ。

「カンパ~イ」

 良く走った後のビールが美味い。料理は川魚と山菜が中心だけど、

「天然鮎の塩焼きとは贅沢だなぁ」

 川エビの天ぷらなんて初めて食べた気がする。アメゴの刺身ってなんだと思ったら、アマゴのことらしい。素朴だけどこれこそ旅先の楽しみみたいなものじゃない。温泉も気持ち良かったもの。

 やっぱり宿は温泉付きが良いな。やっぱり普通の風呂とは違うよ絶対。信州ツーリングは景色も良いけど温泉、それも秘湯の宝庫みたいなとこなのも嬉しいんだ。ツーリングってさ、ひたすら風を受けて走るじゃない。

 それがツーリングの醍醐味ではあるけど、実際のところ鼻の奥まで真っ黒になるし、お肌だって気になるのよ。これでも年頃の娘だからね。そうやって傷んだ肌を癒すのに温泉は必要だ。

 気持ちの良い温泉に入って、美味しいご飯を食べて、美味しくビールを頂いて、次の日のツーリングに英気を養うのは絶対に必要だもの。それと静かだねぇ。窓から外を見ても真っ暗だもの。

 やっぱりがお泊りツーリングでバイク乗りが選ぶならこういう宿だよな。そりゃ、おカネを持っているバイク乗りなら好きなところに泊れるだろうけど、懐具合とささやかな贅沢の折り合いを付けるならここぐらいの気がする。

「カネがあっても帝国ホテルは選ばないだろう」

 場違い感がバリバリだものね。もちろん泊るのは自由だけど、双葉はマッチしていない気がする。というか東京の道だってバイクは走るけど、わざわざ東京にツーリングなんて来るのはいないと思う。

 ところでだけど室戸岬から四万十まで走って来たのだけど、高知横断なら土佐清水に行って足摺岬を目指すべきだったんじゃないかな。室戸岬も足摺岬も有名なとこだし、

「台風の時に毎年出るものな」

 なのにどうして、

「ツーリングのトレンドとバリエーションだ」

 今だって四国一周ツーリングなら足摺岬は人気はあるのだそう。一周って言うからには、四国は島だから端っこは外せないよね。

「だがな四国で端っこツーリングで一周となるとシーサイドばかりになる」

 それはそれで贅沢すぎるツーリングになるけど、絵的に単調になるのか。ツーリング動画なら山と海の対比があった方が見る方が飽きないものね。海沿いの絵と、山から見下ろす絵がうまい具合に混じっているのが望ましいのはそうだ。

「それに四万十川まで来て、沈下橋の絵がないのはウソだろう」

 たしかに。沈下橋も一つなら良いけど、ここも絵的には複数、それも多いほど効果的だ。だけど沈下橋巡りをやると四万十川の上流まで遡ることになるよね。だからこの鄙びた温泉宿に泊ってるけど、ここまで上流になると寄り道レベルを越えてる。

「足摺岬も捨てがたいが、二択で最初にどちらに行きたいかだ。高原ツーリングも王道だし・・・」

 四万十市まで来たら北か南の二択になるけど、ここは絵の変化として、シーサイドロードから高原ツーリングへの切り替えを選んだのか。

「足摺岬から宇和島へのツーリングはまたのお楽しみだ」

 とんでもない高原ツーリングのスポットがあるものね。明日は個人的にもワクワクしてる。