謎のレポート(第12話)最後の希望の夜

 色々考えておかないといけないが、オレの体が元の男の体の戻れる可能性だ。そのためには、どうやってオレを女にしたのかが問題だ。まず、オレが最後の晩餐で気を失っている間に性転換手術をされた可能性はまずある。

 本来ならこれが一番現実的なはずだが、手術の痕などどこにもない。別人になるほどの手術だから、オレが考えただけでも大手術になるはずだが、そんな痕跡はどう探してもない。それに膣の仕上がり一つにしても、どう見ても本物の女の膣だ。だから性転換手術ではないとしか言いようがない。

 ここだけは考えようで手術なら、オレのキンタマは取り出されて捨てられたことになる。もう一度性転換手術で男に戻しても男として機能しないだろうな。人工キンタマなんか聞いたことがないからな。

 だが手術でないとすると話は一遍にオカルトじみてくる。たとえばだ、オレは女になる前になんらかの力を送り込まれた感触があった。あの後にオレを縛っていたロープが急に緩んだのは、オレの体が女になって小さくなって縮んだからと説明は出来る。

 説明は出来るが、だったらその力はなんになる。魔術か、超能力か。そんなものがこの世に存在するものか。あるとしたエロ漫画の世界だけだ。これだけは絶対にあり得ねえよ。それぐらいはオレにもわかる。

 だったらになるがクスリだと思う。性転換薬もエロ漫画の世界でしかあり得ないものだが、最後の晩餐で使われた媚薬はタダものじゃない。そもそもだが、この世にエロ小説みたいな媚薬なんてねえんだよ。

 オレのダチにも好きな奴がいて、あれこれ集めて試してやがったが、あれは飲んだら効いた気がした程度だ。あれだったらエナジー・ドリンクの方がよっぽどマシだ。実際に効果があったのはバイアグラぐらいだ。あれはオレも使ったことがあるが、最後の晩餐で使われた媚薬とは効き方が桁外れだ。

 あんな凄まじい媚薬が作れるのなら性転換薬があるかもしれないぐらいだ。そりゃ、性転換薬が実在すると考えるのにも無理があるが、超能力より現実的だし、他にどんな方法があるかになるからな。

 とりあえず性転換薬を前提に考えるとすると、続けて飲んでいく必要はあるんじゃないかと思う。つまりヤクが切れたら、男に戻っていくってことだ。だが食事に混ぜられたらヤクは切り様がない。そりゃ、食わなきゃ飢え死にしてしまう。上手く出来てるぜ。

 それとマリが言うように元に戻らない可能性だってある。そりゃ、これだけの変化だから、どうやったら元の男の体になるかオレでさえ疑問だからな。だとすると、このまま女の体と付き合う必要が出てくる。

 嬉しくないが、そっちも考えておく必要はある。それには女はどうやって暮らすものなのか覚えなきゃならんが、ケッタクソ悪いがマリに教えてもらうしかないか。そうなんだよ、ここを逃げ出しても食って行かなくちゃならない。

 女なら体も売れるがそれはゴメンだ。女に何が出来るか思いつかないが、そうだな、女詐欺師ぐらいなら出来そうだ。あれは女の魅力で男を騙すのが仕事だから、本物の女っぽさを覚えとく必要はありそうだ。


 とりあえず男の体に戻れるかどうかは、ここを逃げ出してからの話になる。逃げ出すとなるとまずは部屋のチェックだ。まず部屋のドアだが、やっぱり頑丈そうだ。蹴ったぐらいじゃ破れるものじゃない。カギだが、こりゃ監獄並みだぜ。内側にカギ穴すらないじゃないか。

 次に窓だが鉄格子がある。だけどな鉄格子を破って脱獄した野郎の話は聞いたことがある。その野郎だって鉄格子をへし折るほどの怪力の持ち主だったわけじゃねえ。各房には朝食が配られるが味噌汁はセットみたいなものだ。

 その野郎は、毎日味噌汁を指ですくって、鉄格子の根元に塗り付けてやがったのさ、聞いてるだけで、気の遠くなりそうな作業だが、やがて鉄格子の根元が錆びて、それをへし折って脱獄しやがったんだ。

 だがその手はこの窓には使えねえ。窓が開かねえんだよ、一枚ガラスの嵌めころしだ。さらにガラスがかなり分厚い。これは防犯ガラスだと思うぜ。防犯ガラスだって割れねえことはないが、この部屋で割るのに使えそうなものは椅子ぐらいだ。だがこの椅子で割れたとしても、次は鉄格子だ。そこで行き止まりなっちまう。

 それとだが、ここは三階だ。たとえ鉄格子を破れても、飛び降りたら、打ち所が悪ければ死ぬし、落ちた時に足ぐらいは折る。折れたら逃げられるものか。そうなるとロープが欲しいがあるわけないな。

 それどころかロープ代わりによく使うカーテンすらない。他はシーツと掛け布はあるが、これはなんで出来てんだろう。とにかく薄くて、見るからに華奢そうな生地だ。まるでガーゼみたいとでも言えば良いのか。いくらオレが小さくなっているとはいえ、これじゃ、ロープ代わりに使いようがない。

 壁もチェックしてみたが、裏はコンクリートだな。石膏ボード一枚って事はない。床もフローリングだがその下はコンクリートだろう。天井には点検口などないし、机の上に椅子を乗せて調べたが、どうなっているかはわからんが、無暗に頑丈そうなのだけはわかる。

 他に部屋にあるものとしては、クローゼットみたいなものがある。だが開く気配もない。それに表面は木製だが、内側は金属製だぞ。なんなんだこれは。気にはなるが、ここで椅子でぶっ叩くのはやめておこう。壊れそうな気さえしねえ。

 見た目は高級ホテル風だが、なんにもない部屋だ。洗面所はあるが、歯ブラシどころか、タオルすら置いていない。さすがにトイペだけはあったがな。あれがなければ、オシッコの後はビショビショのままだったぜ。


 部屋は独房並みだな。今のところ抜け出せそうなところは見当たらない。だからオレを一人に出来るのだろう。腹が立つがすぐにはどうしようもない。逃げる時にポイントになるのは、この建物から出るのも言うまでもないが、出た後のことも考えておかないといけない。建物を出たら脱走は完了にならないからな。

 だが窓から見える風景はウンザリさせられる。窓の下には庭があり、その先が高い生け垣なのはまあ良い。問題はその先で森しか見えないんだよ。さらにその先は山だ。つまり人家がないんだ。夜になっても明かり一つ見えやしねえ。

 逃げる時に人家は必要なんだよ。こんな目立つし動きにくいメイド服とハイヒールで逃げれるものか。着替えと靴は必要だし、カネだって必要だ。なにか武器になる物も欲しいし、クルマが調達できれば言うことはない。

 実はここもネックだ。男の時だったら朝飯前だったが、このチンケな体じゃ逆襲されたら抑え込まれちまうぜ。だから先に武器が欲しいが、その前に人家も見えないのはキツイ。ここは窓から見えないところに期待するしかないだろう。

 それより不安がある。ここが果たして日本なのかだ。風景の感じから日本の気がするが、これだけの事をするのだから海外の可能性だってある。オレは大阪拘置所の絞首台で眠らされたから、どれぐらい時間がかかって、どういう経路をたどってここに着いたのか情報がない。

 海外でなくとも大阪から船に乗せられて、瀬戸内海のどこかの島に運び込まれているかもしれないんだよな。もし島だったら、あの山の向こうは海かもしれない。そうなると船がいるが、行ってみなければどうしようもないか。


 オレの今の状態は女にさせられて監禁状態ではあり、明日から起こることにロクなものが思いつかない状態だ。逃げたくとも、この部屋から出る方法の見当すらつかない。だがなオレは生きてるんだ。絞首台で死んでいるはずが生きてるんだよ。これだけは素直に喜んでイイはずだ。

 それとだ。いつかは犯されるにしろ、まだ犯されていない。あいつらがその気なら、オレが女になった瞬間にでも襲えたからだ。今ごろはロスト・バージンの痛みに耐えながら、女にされてしまった悲しみをメソメソ泣いてたっておかしくないだろ。

 そうなんだよ、あいつらはオレを犯す前になぜかオレを女にしようとしている。これじゃ、おかしいか、体は女だからな。そうだな女らしくというか、女っぽくしようとしてるのだ。

 目的はわからないが、そうだな、犯される時に男言葉で喚いたら興ざめするとか。それとも元男のオレが女言葉で許しを請うのが楽しみだとか。気色悪すぎる理由だが、とにかくオレが女っぽく振舞えるようになるまでレイプはない可能性がある。

 つまりやられるまでにまだ時間があり、その間に逃げるチャンスを見つければ良いはずだ。いや、やられたって逃げてやる。自分で言いながら、ムカムカするが、貫かれても、イカされても生きてれば逃げられる。

 最悪の場合は、男に媚だって売ってやる。気に入られるように股だって開いてやる。飲んで欲しけりゃ咥えてやる。イキまくってよがり狂う姿だって見せてやる。チャンスってのは、そうやって手に入れるもののはずだ。

 オレは一回死刑になった男だ、あれより怖くて辛いものなんてないはずだ。それに比べたら、男に抱かれて貫かれるぐらい、なんだって言うんだよ。女の体のままでも死ぬよりましだ。


 はあ、はあ、はあ。そうは言ってはみたものの、言いながらジンマシンが出そうだ。女の体ってレイプされると思うだけで、これほどビビるのだろうか。あれだろうな、襲われたら終わりってのがこういう感覚にさせられるのかもしれない。やっぱり何度言い聞かせても、相手が男ってのが生理的に受け付けねえ。

 だがな、本物の女にはレイプ願望があるやつが多いって話は聞いたことがある。だからか、ホモ同士がやるBL物が好きなのも多いらしい。それもだ、レイプがかったシチュエーションで、やれた方が感じてしまうシーンが好きだとかだ。だから女がオナる時にもオカズにすることが多いらしい。

 実際にレイプされたら、やっぱり嫌がるし暴れやがるのは良く知っているが、女って本能的に男のぶっといのが好きなのかもしれんな。だから、やりまくられているうちに大人しくなっていくのかもな。

 最後のところはオレにはわからんな。別にわかりたくもないが、とにかく男は嫌だ。やっぱり処女を散らされる前に逃げないといけない。だが、いつ気が変わってオレをレイプするかなんて、あいつらの気分次第だからな。


 もしそうなったら、やっぱり抵抗するよな。服を脱がされないように暴れるとか、とりわけパンティを脱がされないように頑張るとか。手で殴ったり、足で蹴ったりもする。もちろん犯されないように必死で足を閉じるのもな。女はみんなそうだった。

 だがどんなに抵抗しても、この女の体じゃかなわない。服はむしり取られ、膝は割られ、股は開かされる。手も抑えられてしまう。手足を広げられて、オッパイをこね回され、アソコだってさぐられ放題になる。さらに唇だって力づくで奪われる。男とキスだぞ。想像しただけで虫唾が走るぜ。

 ああわかってるぜ。そういう女の儚い抵抗は男を喜ばせて興奮させるだけだってな。火に油を注ぐってやつだ。オレは女を犯す時に往生際が悪い女だとか、あきらめが悪すぎると思ったものだが、そういう気持ちになれねえわ。

 だったら、せめて男のプライドを示してみるか。潔く無抵抗で体を開き、されるがままにされる。キスだって奪われるがままでな。そこから当てがわれ、貫いてきても反応を見せずに・・・考えただけでゾッとするし、貫かれ出したら我慢なんか出来るものか。

 ウンザリしそうだが、男が一番喜びそうな反応をするしかなさそうだ。ああ、やだやだ、か弱く抵抗しながら抑え込まれ、「許して」とか「やめて」とか「痛い」言ってしまいそうだ。それがどんなに無駄とわかっていてもだ。

 それと初めて貫かれ女にされる時は痛そうだ。そりゃ、血が出るぐらいだ。あれってやっぱり処女膜が裂ける時のものなのか。そうだそうだ、貫かれて男がイクまでの間も辛そうだったよな。そうなると必死にシーツをつかむ姿も晒しそうだ。

 今の目標はその日の前に逃げる事だ。その日の前にレイプされたらあきらめるかしかない。たとえレイプされても逃げる事だけはあきらめない・・・ダメだ、レイプされると思うだけでも目の前が真っ暗になる。それはレイプされてから考える事にしよう。

 とにかくだ、レイプされるまでの猶予期間はあるはずだ。とにかくレイプは嫌だ、そんなものが受け入れられるか。それまでに逃げ出してやる。たとえ女のままでも、逃げ出して暮らす方が千倍も、万倍もマシだ。

 とりあえず服を着ておこう。パンティってホントに小さいな。最低限しか隠してないじゃないか。ブラの後ろフックもやりにくいな。それよりなによりスカートのスカスカ感。これめくったら次がパンティだぞ。けど文句を言っても始まらん。女のままなら、死ぬまでのお付き合いになるものな。