謎のレポート(第32話)翆のケース

 翆が熊倉から受けた様々な性暴力、それによる屈辱の中に性奴隷誓約書へのサインがある。一度目はアヌスを守るために口による奉仕を受け入れ、咥えて飲むところまで強制されている。だけど、そこまでして守りたかったアヌスを騙されて無残に貫かれているんだ。

 二度目の性奴隷誓約書はもっと酷くて、翆は熊倉以外の男にも命令があれば無条件で体を開かなければならず、そこまでしてようやく二度目のアヌスを守れるだけ。さらに誓約書に違反、たとえば他の男を嫌がったりすれば、アヌスさえやられ放題になるんだよ。

 二度目の性奴隷誓約書へのサインがまさに強烈で、熊倉に貫かれてるだけではなく、熊倉の射精に合わせてさせられてるんだもの。ペンを握っていた翆がどれだけの屈辱と絶望を感じていたかを想像するだけで涙が出るもの。

 二度目の性奴隷契約書へのサインは翆のすべてを奪い、すべてを縛り上げて行くんだよ。あの昼休みのトイレから、さらにロリコン変態男とのベッドでの売春になっている。あの二度目のサインは翆を徹底的に破滅させるもの。

 そこまでされた翆が崩壊させられたのは、熊倉の前で、責め上げられ。ついに耐え切れずついにイカされた時で良いと思う。以後の翆はひたすら堕ちて行くだけになったもの。最後は自分で体を売ってたし、そこまでされた熊倉に保護を求めていたもの。


 ここなんだけどレイプ状態の翆が感じるのかの疑問あるのよね。それもイクまでだよ。レイプされた女は感じないんだよ、あるのは恐怖と屈辱と痛みだけ。こんな状況でイクどころか感じたりしないはずだもの。だからレイプされて気が狂ったり、PTSDになるのも珍しくないぐらいなんだ。

「シノブちゃんの言う通りだけど、レイプされるのって極限状況なのよね」
「だから発狂までするんじゃないですか」
「経験がないから難しいかもしれへん」

 そりゃコトリ社長は経験者だからよく知ってるけど・・・あれ、コトリ社長のレイプ経験も強烈なものだけど、五千年前のしかも人時代なのに発狂してないか。まあ、世の中例外もあるから、中にはレイプされながら感じてイクのがいるのか。

「こらっ、人を淫乱みたいに言うな。あれには理由がある」
「そうよコトリはアレが大好きだったから」
「違うやろが。大好きだけやったらユッキーも同じやろが!」

 だ か ら、エレギオンHDの社長と副社長の会話かよ。

「ちょっとだけ真面目に話すと・・・」

 ユッキー副社長が説明するには、レイプという極限状況を受け止めるのは精神、つまり心だとした。これはわかる。恐怖と屈辱を受け止めるのは心しかないもの。心で極限状況を受け止めた時に耐え切れず破綻してしまったのが発狂とかPTSDだよね。

 この心だけど、破綻しそうになると、破綻しないようにする防御メカニズムが働くことがあるんだって。たぶん現実逃避としても、そんなに間違っていないと思うよ。これをレイプにあてはめると、

「レイプされてると言う現実から心が逃避するとすれば、これは夢だと思うとか、単なる普通のセックスをしてると自分で思い込んじゃうぐらい」

 女のセックスって体だけじゃなく、心も受け入れないと感じないんだよね。ここも言ってしまえば心が受け付けないと体も感じないで良いと思う。心で拒否しながら体が勝手に感じてしまうのはエロ小説の世界だけって事だよ。

 妙な例えになるけど、商売女はセックスが仕事だけど、仕事の時には感じないそう。まあ、いちいち感じてたら体が持たないだろうし、心まで感じてたら商売にならないぐらいかもしれない。やった事ないから最後のところはわからないけどね。

 レイプは心が拒絶するから体も感じるはずがないのだけど、心の防御メカニズムが働くと状況が変わってしまうと言うんだよ。

「逃避した心はある種の妄想世界にいるのだけど、その世界は当人にとっては現実世界と感じてることになる。妄想世界では心がセックスを受け入れてるから体も反応することになる」

 えっ、どういうこと。

「レイプと言う極限状況は変わらないでしょ。言い換えればセックスさせられる状況よ。これをレイプとして心が受け止めたら壊れるから、自ら望むセックスと思い込むのだよ。そうなれば心は受け入れてるから体も受け入れる」

 なんとなくわかったような、わからないような。

「翆はまだ中学生よ。処女を奪われる状況に、心が耐えられなくなってもおかしくないじゃない」
「だから心が逃避したってことですか」

 レイプされた女がずべて発狂するわけじゃないけど、翆があの状況で発狂していない。心に深い傷は出来たと思うけど学校さえ休んでいないものね。そう出来たのは心の防御メカニズムが働いたからか。

 その後の状況も熊倉に弱みを握られて、次々と苛酷な状況に見舞われてる。口での奉仕、アヌスの貫通、性奴隷誓約書への二度にわたる屈辱のサイン、公開ストリップ、トイレからホテルでの売春・・・

 そのどれもが女として、ましてや中学生なら極限の状況だものね。だから翆の精神はその度に心の逃避を繰り返していたのか。言われてみれば、そうでもしないと耐えられる状況じゃないのはわかる気がする。

「とにかく連日みたいなものじゃない。そうしているうちに心の逃避のスイッチが入りやすくなったんじゃないかな。今日もまた犯されると感じただけで心が逃避してしまうぐらいだよ」

 心が逃避したら発狂とかは回避できるけど、その代わりと言ったらなんだけど、

「そうなのよね。心がセックスを受け入れてるから体は感じてしまうのよ」

 まだ中学生と言いたいけど、連日経験を積み上げてるようなものだものね。トイレだって昼休み中だし、ホテルとなると朝から夕まで、さらにその後は熊倉にやられる。一日だけでも、どれぐらいセックスさせられてるか怖いほど。

「翆が受け入れてた証拠みたいなものだけど、あれだけ連日やらされてアソコが壊れてないのよね。そのためには挿入時点でしっかり濡れ、性的な興奮状態になってたはずなの」

 これもあんまり想像したくないけど、そうじゃなきゃ到底無理だよね。翆には悪いけど、それこそ喜んで男を迎え入れる状態になってた事になる。そこまでの状態になるには、

「心の防御メカニズムがさらに強力に作用したんだと思ってる。翆が初めてイッたのはホテルだと思うけど、エンドルフィンの助けもあったはずだよ。翆には悪いけど、そりゃ良かったはずだよ」

 エンドルフィンとは体内ホルモンの一つだけど、非常に特殊な性質があるものなんだ。別名で脳内麻薬とも呼ばれるぐらいで、薬物の麻薬と同様に苦痛を取り去り、多幸感が促進させる効果がある。

 その効果はランナーズ・ハイにもするとされてるし、死の苦痛に見舞われても、その苦痛を無くしてしまうともされてる。なにしろ鎮痛効果はモルヒネの六倍半らしいのよね。さらにはセックスの快感まで高めると言われてるぐらい。

「エンドルフィンの分泌量については未解明の部分が多いけど、心の防御メカニズムが働く時に増えるはずだし、翆のように頻繁に心の逃避を行っていたら増えて行っても不思議無いはず」

 ここでだけど体がイクまで感じるのを覚えてしまった女は、心が受け入れれば体は感じたくなり、イクを求めてしまうのよね。あれは心が求め、体が欲するとして良いよ。だって女の最高の楽しみの一つだもの。

 これも、そこまで単純な話じゃないけど、女の感度も回数比例の部分は確実にあるのよね。回数も心の受け入れ方とか相手との相性があって複雑なんだけど、翆の場合は、たとえ嫌な相手であっても心が逃避するから結果として心も体も受け入れちゃったのか。

「おそらくだけど熊倉が翆をイカそうと執念を燃やしていた頃には、翆はホテルの客相手ならかなりの頻度でイクようになってはず。とにかく同時進行だから、遅かれ早かれ、そうなっていくしかないもの」

 翆はなにがあっても熊倉の前ではイキたくなかったはず。

「そりゃ、そうよ。処女をレイプされて、売春まで強要されてる相手だよ。女がイキ姿を見せるのは男と意味が全然ちがうからね」

 これは間違いなくある。男に取ってイクはセックスのセットの様なもの。と言うかそれだけを目的にセックスしてるようなもの。イケば満足するだけだから、どんな表情で、どんな格好だろうが、そんなもの気にもしてないもの。

 でも女は違う。女にとってもっとも恥しくて、見せたいものの一つがイキ姿なんだよ。たとえ恋人相手でも男との初イキだったら我慢しちゃうぐらい。そりゃ、恋人相手なら見られちゃうけど、あれですら見せるのを許してるぐらいの感覚だし、何回見せても羞恥は残るぐらいなんだ。

「だから翆は崩壊した。以後は完全に壊れちゃってるもの」

 翆がイカないためには心を逃避させずに心の拒否をすること。だけど相手は憎んでも憎み足らない熊倉だから、セックスをされてる状況だけで翆の心が限界に達してしまったのだろうって。

 そうなれば防御メカニズムが働いて心は逃避するのだけど、こんどは熊倉に感じてしまい体が昇り詰めようとしてしまう。なんとか我に返った翆はイカないように心で拒絶しようとする。

「逃避している心を戻すのにもストレスがかかるだろうし、戻ったところで自分を貫いているのは憎っくき熊倉じゃない。また心はストレスに耐え切れず逃避しようとするはずよ」

 こういう理解で良いかわからないけど、あまりのストレスに防御メカニズムがさらに強力に働き、それにともなってエンドルフィンが大量に分泌され、

「最後にイッた瞬間は体は臨界点を越えて大爆発かな」

 それでも翆は連続イキの阻止にも死力を尽くしてるんだ。

「あれは連続イキじゃなくて二度目のイキの阻止の気がする。だけど頑張れば頑張るほど心の防御メカニズムは強くなりエンドルフィンも増えたのだと思う」

 それって、

「翆は逃避した世界から戻れなくなった」

 発狂したでイイよね。翆の心が逃避した妄想世界がどんなものかなんてわかるはずもないけど、現実と合わせると、好ましい男に次々と求められ、体を開き、女の快感を楽しむ世界ぐらいかもしれない。

「まだ中学生だよ・・・」

 熊倉は翆で女の扱い方を覚えたって嘯いていたけど、あれは扱い方じゃなく、女の精神の壊し方だったんだ。監禁状態にされて間断なしに殴る蹴るの暴力、性暴力を加えられ続けたら、女じゃなくとも壊れるもの。

 そうだよ女がイッたから従順になったんじゃない、憎い熊倉の前でさえイカされてしまうぐらい精神が壊されてただけなんだ。女がイク快感に溺れて屈服したなんて思ってもらったら大間違いだぞ。女を舐めるんじゃない。