仮想旅行記

 私の小説のジャンルとして旅ものがあります。登場人物を旅行させるだけですが、これが案外手間がかかります。神戸から有馬温泉に行かせるぐらいならお手軽ですが、もうちょっと本格的なものになると大変です。昔から神は細部に宿ると言いまして、出来るだけ細かい描写が欲しいからです。

 これも行ったところがあるのならまだしもですが、行ったこともない、行ったとしても四半世紀前以上になると記憶もおぼろげで怪しくなってしまいます。

 ですからルートを調べ、宿泊先を考え、観光をさせ、名物料理を食べさせなんてのを調べます。ネット時代なので、実際に行った人の旅行記なんかがあって、その辺は助かります。

 ですがイメージがどうしても静止画になります。あるだけ有難いのですが、静止画と言うのが曲者で、実際と結構乖離していたりします。ある名所があったとしても、その周辺がどうなっているかとか、そこまでの道沿いがどうかだとかです。

 その辺は実際に行かない限り、どうしようもないとあきらめていたのですが、さすがのYoutuberブームです。こんなところと思うところまで探訪番組が作られています。

 Youtuberもピンキリは言うまでもありませんが、訪問者目線の動画ですから、旅ものの参考にピッタリです。それにちょっとでも名所であればテンコモリ出てきます。あれだけの個所を実際に訪ねて回ろうと思えばカネとヒマがかかりますし、実際に現地を訪れても見逃しそうなポイントもあります。

 小説の参考資料としては優れものと思いましたが、やっぱり自分で行きたいですよね。Youtuberでもその場所の空気や匂いまでは伝えてくれません。どうしたってレンズを通した画像、マイクを通した音と、目で見、耳で聞いた音は違います。鼻で嗅ぐ匂いなんて不可能になります。

 コロナが終息し、早くそんな日が来てくれる事を願うばかりです。