売り物になる作品の基準

 出版社に認められる作品にどれだけの価値が必要かは気になるところです。出版社はガチの商売であり、慈善事業ではありません。費用をかけて売るからには、そりゃ厳しい基準を設けているはずです。ここで芸術的な評価は置いといて、もう少しドライな基準を考えてみます。

 風詠社さんのNO.6 自費出版本の制作に必要な費用(その2)がわかりすかったので紹介しておきます。これは書籍化された本のビジネスとしての原価計算率の一例だそうです。

 まずビジネスですから千円の本を1万部発行するとし、これを100%とみるそうです。そうなると最大収入は1000万円になりますが、そこから取次と書店の手数料が30%消えるそうです。そうなると残りは700万円になりますが、そこに返本が入って来ます。返本率の想定は20%ですが理由は後述します。そうなると収入は560万(56%)になります。

 そこに本の製作料が必要になります。列挙してあるのを整理してみると、

  1. 印刷・造本代20%・・・200万円
  2. 編集費(印税、装幀、校正費その他)12%・・・120万
  3. 広告費10%・・・100万円
  4. 返品のための倉庫代3%・・・30万円
  5. 人件費10%・・・100万円
 これらの新規に出版するための支出を合計すると55%(550万円)になり、売り上げと差し引きすると利益はなんと1%(10万円)になります。これだって返本率が30%になれば売り上げが490万円になりますから、赤字が60万になります もっと売れ行きが悪くて返本率50%になったりすれば200万円の赤字です。

 出版社が儲かるようになるのはベストセラーになった時で、返本率がゼロになれば15%(150万)の利益になります。10万部になれば1500万円、100万部になれば単純計算で1億五千万円になります。この辺は増刷分になれば造本代や、編集費が安くなると考えられるのでもっと儲かる気もします。

 この原価計算の取り様なのですが、本気で本で商売しようとするなら、

    千円の本を1万部作って、8000部売れる
 これが最低ラインで、それ未満の売り上げしか期待できない作品はボツとされるで良いと思います。見ての通り1万部作って8000部売れてもギリチョンですから、これ以上を期待できる作品にならないと採用してくれない事になります。

 他の分野でもそうですが、有名作家なら固定ファンがいるので出版されやすくなりますが、無名の新人ではよほど元の作品の質が高くないと採用へのハードルが高くなるのは必然です。

 こうして見ると出版社に書籍化して出版してもらうのは容易なことでないのが良くわかります。もちろん出版社もそれだけ厳しい基準で選んでもハズレる時はハズレますから、ベストセラー作家がどれほど怪物的な存在かわかると思います。