サンマ 苦いか 塩つぱいか

中間管理職様の「<水平線>サンマと医療費」 医療費とサンマ33匹分(自分のサンマ代込み)で見つけた12/15付東京新聞より、

<水平線>サンマと医療費

2009年12月15日

 「サンマが特売で六十円だって。しかも新鮮」と、近くのスーパーで買い物した妻が驚きました。

 八月の異動で千葉支局に赴任し、千葉市に住み始めて四カ月余り。その前は東京都江東区に住んでいましたが、サンマは特売でも百円しました。

 千葉に来て、小学生の長男を耳鼻科で診てもらいました。初診料と薬代で自己負担は約三千円。江東区では中学卒業まで医療費の自己負担はありません。

 計算してみました。千葉市で特売サンマ五尾を買い、子どもを診察してもらうお金(計三千三百円)で、江東区では特売サンマ三十三尾を買うことができ、子どもを診察してもらえます。「そんなに食べないでしょ」と、妻には無意味な計算だと笑われました。

 確かに三十三尾も食べられませんが、長引く不況の影響でしょう。個人の格差だけでなく、自治体のサービスにも格差が広がっている気がします。サンマの値段以上に、子どもの医療費でこの差は腑(ふ)に落ちません。国が現状を改善するべきだと思います。 (森川清志)

正統的な批評は中間管理職様のエントリーを是非お読み下さい。同じ視点ではおもしろくないので、できるだけ変えて考えて見たいと思います。


どこから手をつけようか悩むところですが、とりあえず森川記者はサンマの値段と医療費の関係に重大な関心をお持ちのことはわかります。サンマの値段も記事に明記してあり、どちらも特売と言う条件付ですが、

問題の3300円で買えるサンマは江東区では33尾ですが、千葉市では55尾になります。森川記者がサンマを買うのにわざわざ江東区まで出かけて買う理由が思い浮かびませんから、33尾のサンマが江東区で3300円だったのが千葉市では1980円になられる環境にお住まいと言う事になります。

どうでも良いような事ですが、サンマに関して、森川記者は江東区に較べてはるかに恵まれているところにお住まいである事は自ら書かれております。だから住み良いかと言えばそうではなく、千葉市に住むことによって、小児医療費が発生したことに大きな不満を抱いている事はわかります。医療費がどうなっているかと言うと、

  • 江東区:中学生まで自己負担なし
  • 千葉市:小学生は3割負担らしい
江東区時代はタダであったのが、3000円も支払いが発生したのに驚愕されているのが文章から伝わります。いままでタダと思い込んでいたものが有料、それも3000円も支払う必要が出たのに憤懣やる方なしと解釈すれば良いのでしょうか。可哀そうに千葉のサンマが安いことはちょっと置いてけぼりになっています。

あまりの医療費の高額さに森川記者の自治体によるサービス格差に話が展開します。

    自治体のサービスにも格差が広がっている気がします
サンマと言う庶民的な食べ物の話題から、自治体のサービス格差に話を発展させて綺麗にまとめているかのように一見思えます。もしこれが普通の人のブログであれば何の問題もありませんが、書いているのは東京新聞の記者です。どこが問題である事に気がつかないのでしょうか。

どういう事かと言えば、自治体のサービスに格差が生じる原因を少しでも考えればわかることですし、少しでも考える職業的必要性が記者ならあるかと思っています。自治体による住民サービスの差が生じる原因が何かと言う事です。森川記者も全然考えていないわけではなく、

    長引く不況の影響でしょう
それも原因ですが、もっとわかりやすい原因として自治体の財政力の差が決定的な要因になるはずです。財政が豊かであるなら各種の住民サービスは自然に手厚くなりますし、財政が苦しければやりたくても出来ないと言う事になります。小児医療の無料化に対し自治体が財政補助を行なうかどうかの判断は、小児医療のその自治体の位置付けと、他の必要な事業との兼ね合いになると言う事です。

そこでなんですが、自治体のサービスに格差と言うのであれば、江東区のように中学生まで無料の自治体と、そうでない自治体の比率を考えてみるべきかと考えます。どっちが多いかの詳しい統計資料は存じませんが、そうでない自治体のほうが圧倒的に多いかと考えています。東京のように銀行ゴッコに何百億円も使ったり、五輪誘致ゴッコにまた何十億円も費やしても平気な自治体は日本では例外と言うことです。

日本で例外的に財政が豊かな東京都の基準を持ち出して、他の殆んどの財政に苦しむ自治体とのサービス格差と言われても苦笑しか出てきません。もちろん財政に苦しむ自治体でも小児医療の無料化を行なっているところはあります。しかしそういうところは他の住民サービスを犠牲にして行なっていると言う事です。つまりは地方自治の選択として、他の住民サービスを犠牲にしても小児医療の無料化が必要であると判断しているだけです。

東京都と張り合って、同じレベルの住民サービスを行なえる自治体が日本に存在するかどうかはかなり疑問です。もっとも同じ日本国民ですから、住む自治体によって住民サービスに大きな格差が生じるのは好ましいとは言えないのは確かです。住民サービスの格差解消の方法も森川記者は提案しています。

    国が現状を改善するべきだと思います
これがどういう意図かと勘ぐればキリがないのですが、今日は単純に解釈して国庫負担による小児医療全国一律無料化の提案と受け取ります。これももっともらしい提案ではありますが、記者が言うには少々雑な内容です。東京都は豊かですが、日本国の財政は非常に苦しい状態です。小児医療の無料化のためには、新政権が四苦八苦して捻出しようとしている子ども手当ぐらいの予算が必要とも考えられます。

そうでなくとも医療費は政権が変わり、マニュフェストに書いてあろうが「削減、削減」のシュプレヒコールが行なわれています。そんな中で小児医療の国庫負担による全国一律無料化が行なわれたらどうなるかですが、医療費の総額は変えずに、他の医療費を削減して小児医療の無料化に回されるというのが常識的です。そこまで極端でなくとも小児医療の無料化の財源に他の医療費がかなり回されるぐらいは確実かと思われます。

小児医療無料化に伴う国家としての医療費の配分問題は長くなるのでこれぐらいにして、

    子どもの医療費でこの差は腑(ふ)に落ちません
これも子を持つ親の心情としては理解しますが、狭い狭い視点の様に感じます。子を持つ親ならば小児の医療費の差が重大問題でしょうが、これが高齢者の視点になれば、もっともっと腑に落ちない事がいっぱい出てくるかと思います。それをすべて国に改善してもらおうと思うのなら、大増税が必要条件になります。記者であるならそこら辺も考察する必要があるんじゃないでしょうか。全然期待はしてませんけどね。

ただしなんですが、この小児医療費の問題をどれほど森川記者が真剣に気にしているかと言えば、

    サンマの値段以上に
この「以上」がどの程度かの解釈が難しいのですが、サンマ基準は江東区で1尾100円であったのが千葉市で1尾60円であるレベルです。「以上」ですからこのサンマ基準よりもう少し上程度に考えたいところです。もっともその割には、いきなり国が是正に登場するのが物凄いところです。

それと言わずもがなの事ですが、サンマがもし高騰して食べられなくなっても我慢すれば耐えられますが、医療が同様に我慢できるかどうかは個人的に疑問です。同列に較べる喩えとして相応しいかどうかを考えるべきかと思います。比喩を使うのは表現技法として常套手段ですが、比喩対象が不釣合いであれば何を主張したいか意味不明になることがしばしばあるからです。

ついでに言っておくと、サンマが60円なり100円で買える事が本当に良い事かどうかぐらいにまで、思考をめぐらすべきかと思います。サンマは天然物ですから、これが店頭に並ぶまでどれだけの手間とヒマがかかり、その対価が本当に60円や100円で問題ないのかまで考えないと、千葉の支局の記者としても問題ありかと思います。



さてなんですが、天漢日乗様の新聞各社の2009年冬のボーナス 朝日は116万5千余円 読売は別枠支給抜きで60万4千余円 毎日は45万余円 日経は93万3千余円@新聞労連機関紙に元ソースは新聞労連機関紙、二次ソースは2chの新聞社の冬のボーナスが掲載されています。ちょっと紹介しておきます。

新聞社 年齢 要求額 回答額 前年度賞与 前年比
朝日 41 134万5817円 116万5722円 165万2060円 ▲48万6338円
毎日 35 100万円 45万39円 72万8302円 ▲27万8263円
読売 30 99万7238円 60万4116円 111万5629円 ▲51万1513円
日経 30 97万979円 93万3575円 122万4345円 ▲29万770円
共同 39 143万9700円 111万8000円 120万6000円 ▲8万8000円
時事 30 85万9930円 62万5467円 66万7675円 ▲4万2208円
東京 40 178万9409円 120万5773円 130万890円 ▲9万5117円
道新 40 130万5000円 112万5773円 130万4773円 ▲17万9000円
山陽 35 165万円 116万円 119万円 ▲3万円
愛媛 35 125万円 112万8982円 129万8210円 ▲16万9228円
高知 36 120万円 113万6786円 120万1262円 ▲6万4476円
琉球 41 94万8688円 68万5757円 69万6211円 ▲1万454円
沖縄 38 83万532円 72万4005円 72万7538円 ▲3533円


まずですが各新聞社の賞与の金額が高すぎるとか低すぎるとか論じる気はありません。各新聞社の経営体力に応じて、従業員の仕事振りに対し適正な賞与が支払われたに違いないとしておきます。

もうちょっと軽いところを注目して見ます。全社とも程度の差こそあれ、現在の不況や新聞業界の構造的衰退を反映して賞与は減っています。業界の苦しさを示す一端かと解釈しています。そういう中で従業員の自分の仕事振りへの意識をこのデータで考えてみます。あくまでも限られたデータでの遊びですからそのつもりでお願いします。

遊びですから単純なんですが、前年度の給与より高く要求したところは自らの仕事を高く評価しているとします。逆に低く要求しているところは、そうではないとします。こんな単純に評価してはいけないかもしれませんし、各社の要求交渉の慣例もあるとは思っていますが、まず前年度より要求額の低いところです。

新聞社 要求額 前年度賞与 差額
朝日 134万5817円 165万2060円 ▲30万6243円
日経 97万979円 122万4345円 ▲25万3366円
読売 99万7238円 111万5629円 ▲11万8391円
愛媛 125万円 129万8210円 ▲4万8210円
高知 120万円 120万1262円 ▲1262円


朝日、日経、読売がかなり下げて要求しているのがわかります。この中で読売のボーナス交渉がとくに厳しかったようで、前年度より11万8391円下げての要求を行なっていますが、回答はさらに下げられて前年度から51万1513円下げられての60万4116円になっています。朝日も相当シビアです。漠然と新聞業界の中でも相対的に勝ち組と勝手に考えていた読売の厳しさはちょっと驚きました。

これだけ読売が厳しいのは、新聞業界のパイの縮小をにらんで先手を打って体力温存を図ったのか、それとも外部から見えるほど余裕がなくなっているのかになりますが、内部事情など知る由も無いので真相は不明です。朝日の下げ額も大きいのですが、ここは経営の厳しさが報じられていましたし、元が業界ダントツの水準でしたから、今年度は適正化を行ったと見ることは可能です。

今度は前年度より高く要求したところです。

新聞社 要求額 前年度賞与 差額
東京 178万9409円 122万4345円 48万4636円
山陽 165万円 119万円 46万円
毎日 100万円 72万8302円 27万1698円
琉球 94万8688円 69万6211円 25万2477円
共同 143万9700円 120万6000円 23万3700円
時事 85万9930円 66万7675円 19万2255円
沖縄 83万532円 72万7538円 10万2994円
道新 130万5000円 130万4773円 227円


東京、山陽がダントツに高いことがよくわかります。それにしても高い要求額で、額だけで言うと業界最高峰にしろと要求しているように見えます。それだけの業績と会社への貢献をしたという自負か、とりあえず目一杯吹っかけるのがこれらの会社の交渉戦略の通例であるかは、これもまた知る由もありませんが、これだけ要求して結果として下げられる交渉結果に微笑が誘われます。

結果として昨年度と今年の賞与額の順位はどう変わったかと言えば、

順位 前年度 今年度
新聞社 給与 新聞社 給与
1 朝日 165万2060円 東京 120万5773円
2 道新 130万4773円 朝日 116万5722円
3 東京 130万890円 山陽 116万円
4 愛媛 129万8210円 高知 113万6786円
5 日経 122万4345円 愛媛 112万8982円
6 共同 120万6000円 道新 112万5773円
7 高知 120万1262円 共同 111万8000円
8 山陽 119万円 日経 93万3575円
9 読売 111万5629円 沖縄 72万4005円
10 毎日 72万8302円 琉球 68万5757円
11 沖縄 72万7538円 時事 62万5467円
12 琉球 69万6211円 読売 60万4116円
13 時事 66万7675円 毎日 45万39円


賞与の額と月給がどれほど連動しているか不明ですが、少なくとも賞与額では東京新聞が業界No.1になっている事が確認できます。目減りした結果の1位とは言えNo.1には変わりまりませんから、No.1に相応しい仕事をしてくれるように祈るばかりです。