困った人々

医療ネタを書くと切実なワクチン問題に執着してしまうので、なんとか別のネタを混ぜて気分転換を図っています。政治ネタは扱いが難しいのですが、これも気分転換の一環ですからご了承下さい。今回の政治ネタはさらに扱いに慎重を要する天皇問題にも絡んでくるのですが、あらかじめお断りしておきますが天皇制の是非みたいなテーマにするつもりはありませんので、ご了承下さい。

発端はこれも世間を騒がせていますが、中国副主席の来日問題になります。どうもなんですがこの副主席が天皇との会見を望んだらしいとの事です。よく知らないのですが、この副主席は次期主席の候補にも挙げられている有力者らしく、現在の主席が副主席時代に天皇と会見されているそうなので、バランスと言うか、面子上と言うか、自らの格付けに是非となったと噂されています。

今日は手抜きで伝聞情報が中心なんですが、伏線として小沢幹事長の訪中があるとも言われています。これは副主席の直前のことなので、その時にでも念押しされたんじゃないかと想像しています。まあ、それぐらいは別にあったからと言って、とやかく言うほどの問題では本来はなかったはずです。スンナリ会見できればです。


ここで浮上した問題は今上陛下の健康問題です。今上陛下は1933年のお生まれですから、今年で72歳77歳になられます。御高齢に加えて2002年から前立腺癌の治療が続けられています。そのためスケジュール調整が行なわれており、これも有名になった「1ヶ月ルール」が出てきます。天皇会見は1ヶ月以上前に必ず申し込んでもらい、急な会見は御遠慮頂くという方針です。

どういう理由か私は存じないのですが、副主席の会見申し込みは1ヶ月ルールに抵触することが問題として浮上する事になります。


これも報道が伝えるとおり、宮内庁1ヶ月ルールを盾に天皇会見に応じられない旨をまず伝えています。ところが内閣サイドが「どうしても」と押し返し、業務命令に近いぐらいの強制力で会見を実現させています。宮内庁内閣官房支配下であるらしく、官房長官の命令には最終的には逆らえない関係にあるとの事です。

その後、宮内庁長官の異例の会見があったり、ゴリ押しの黒幕とされた小沢幹事長の怒りの会見があったりしますが、世論的には今回の天皇会見の経緯の評判はあまり宜しいものになっていません。小沢発言もなかなか興味深いのですが、関心のある方はお調べ下さい。個人的にはそこまで言ってしまうとかえって火に油の感じもしますが、それは今日はあえて深く触れません。

どうも評判が悪いと察した民主党首脳部は、これを沈静させる方針を採ることにしたようです。沈静方法もいろいろあるかと思いますが、民主党が採った方針は責任転嫁のようです。もっとも民主党が党としてそう動こうとしたのか、現在の内閣の特徴である閣僚個人のスタンド・プレーかは微妙なところなのですが、とにかく動いています。

ここからは天漢日乗様の集めた情報におんぶに抱っこなんですが、参考にさせて頂いた情報は、

まず1ヶ月ルールで興味深い情報を掘りこされています。12/14付共同通信(nikkannsports.com版)からですが、

1カ月ルールとは…95年文書で定められる

 ◆1カ月ルール 外国要人が天皇陛下との会見を希望する場合に、1カ月前までの正式申請を求める日本政府の慣例。公務多忙な陛下の日程調整を円滑に行うのが目的で、1995年に文書で定められた。特に2004年以降は、前年に陛下が前立腺がんの摘出手術を受けられたこともあり、厳格に守るよう徹底してきたとされる。鳩山由紀夫首相は11日、ルールの厳格な適用に関し「1カ月を数日間切ればしゃくし定規で駄目だということが、果たして国際的な親善の意味で正しいことなのか」と疑問を呈した。(共同)

1995年は陛下に大腸ポリープがみつかり摘除された年かと記憶しています。それがキッカケかどうかはわかりませんが、1ヶ月ルールは1995年に作られ、1995年に「外交文書」で公式に定められたものである事がわかります。当時の内閣は自社さ連立政権で、新党さきがけの当時の幹事長が鳩山由紀夫氏です。陛下は1995年より14歳高齢化されている上に、2002年に前立腺癌が見つかり現在も治療中です。当然ですが現在の方が陛下の健康状態は宜しくないのは誰が考えてもわかります。

1ヶ月ルールのおさらいはこれぐらいにして、民主党の対応です。天漢日乗様が掘り起こされたのは、天皇会見の後に行なわれた前原国土交通大臣のコメントです。元はANNニュースのようですが、

「今回の面会は、官邸に元総理大臣から要請があったものだ」と述べ、そもそも自民党側からの要望で実現したという見方を示しました。

天漢日乗様ものけぞっておられましたが、私ものけぞりました。天漢日乗様が撮られたニュース画像を提示しておきます。間違い無くそう言っています。

そうなれば「元総理大臣」とは誰かが興味が湧きます。これについての12/15付産経記事は、

 実は、政府は11月30日、正式に中国側に「会見は無理」と通告した。「1カ月ルール」と、75歳と高齢の陛下のご健康が万全とまではいえないことが理由だった。

 ところが、駐日大使館を中心とする中国側の巻き返しが始まる。政府・民主党だけでなく、野党・自民党中曽根康弘元首相ら中国とパイプの太い政治家らにも「なりふり構わず」(外交筋)働きかけた。

 「日本が一度断れば、中国が必死に動いてくることは分かっていたことだ。なのに、鳩山政権は中国側の動きに動揺してしまった」

 別の外交筋はこう解説する。中曽根氏ら自民党の政治家は「われわれが『ルール破りはダメです』と説明したら理解してくれたが、民主党側は、まるで中国の走狗(そうく)となった」という。

この記事からすると問題の構図は、

    1ヶ月ルールを理由に断る → 中国側の巻き返し工作 → その工作の中に中曽根元首相がいた
前原国土交通大臣の「元総理大臣」とは中曽根元首相の可能性が出てきますが、中国側の工作は自民党だけに行なわれたのではなく、当然民主党にも激しく行なわれたはずですから、前原責任転嫁発言とは少々ニュアンスが異なります。

えらい事を前原国土交通大臣を言い出しているのですが、これも民主のクセなのか、状況を見ての方針変換なのかは不明ですが、FNNから、

平野官房長官は、「(12月7日に中曽根元首相が官邸を訪れているが?)官邸に来られたかどうかも、それは承知しておりません」と述べた。

これはタブロイドらしいのですが、

岡田克也外相は「いろんな人のところにいろんなことを言ってきたと聞いているが、私のところには来ていない。事実かどうか承知していない」

どうもなんですが、前原発言は出たものの、余りの筋の悪さから周囲は「そんな事は知らん」とされつつある様な感じです。天皇会見問題の火消しを前原国土交通大臣が格好良くやろうしたら、実は消火剤ではなくてガソリンだった事がわかり、周囲が必死になって、消火に奔走していると見たらよいのでしょうか。



ここからは完全に私見なんですが、憲法の規定はどうあれ天皇の存在は日本では別格です。今上陛下も人間ですから感情もあり、思うところもあるとは考えていますが、それは一切出さずに無私としての理想像を見せて頂いています。これはそうするのが日本の象徴として求められる天皇の役割であり、国民もそういう天皇像を期待しているからだと考えています。

私如きに陛下の執務振りなど想像もつかないのですが、基本的に求められる職務に対し「No」どころか嫌悪の表情さえお示しにならないと考えています。それは陛下のお言葉一つ、御表情一つがどれだけの影響を与えるか熟知されているからだと思っています。今回の中国副主席との会見も、直接陛下に要請されれば、陛下の御返事は「喜んで」以外はないと推察します。それが象徴として求められる天皇の役割だからです。

そういう天皇の役割は、利用しようとすれば時の権力者はいくらでも付け込めます。「憲法の解釈ではこう考えられる」論はいくらでも出来るでしょうが、日本国民としての良識に照らして「それは慎まなければならない」のモラルが、不文律として、強く、強く求められるところだと考えています。「No」と言われない陛下の業務を、無私の行為に自然に見せる役割が輔弼の任に当たるものの最大の責務と考えています。

妙な言い方に聞こえるかもしれませんが、日本における天皇制の存在は主権者たる国民の支持の下に立脚していると考えています。天皇及び皇室の存在は主権者たる国民の支持が必要であり、天皇及び皇室の存在を真に願うのであれば、内閣は国民が期待する天皇像になるべく努力するのが当然とさえ考えています。

そんな事は憲法解釈論以前の問題であり、輔弼の任に当たるものには常識以前に備えられているはずだと無邪気に考えていましたが、必ずしもそうでない方々が輔弼の任に当たられている事に慄然とする思いです。


中国副主席との会見での失態がどんなものか為政者はわかっているのでしょうか。為政者のやらなければならない事は、1ヶ月ルールがあるなら、それに抵触しないように中国副主席の訪日を調整する事だと思います。それさえ出来ていれば何の角も立たずに、ごく自然に会見が行なわれたかと考えます。

外交日程の調整がどうしても無理なら、水面下で1ヶ月ルールの例外調整を行なうのが次善の対策です。1ヶ月ルールと言っても、一部関係者しか「いつ中国側が会見を申し込んだか」なんて知りようも無いわけですから、表沙汰にさえならなければ、普通に中国副主席が来日し、普通に天皇と会見した以上に波風が立ちません。

今回のケースが最悪なのは、政治的思惑がモロに表沙汰になり、現政権が陛下にゴリ押しして会見を実現させたと言う事を、日本中にアナウンスした事です。真相はどうであれ、そういう行為を表沙汰にし、さらにそれに為政者が釈明を重ねる事態そのものが超弩級の大失態になります。賓客との会見が国事行為になるかどうかの解釈論争まであるそうですが、ここでは国事行為と単純に受け取って、

    陛下に行なってもらった国事行為を、内閣が釈明を重ねなければならない事自体が最悪の大失態
憲法3条にある

天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。

内閣が負う責任は具体的には記されていませんが、どんな責任を負ってもらうかは国民が判断する事かと思っています。