新聞の1面トップ下広告のムック

だいぶ前に一度取り上げた事がありますが、新聞一面下の広告のムックです。新聞で1面と言えば最重要記事が列挙されるところで、新聞の顔とも言うべきところで良いかと思います。うちは今でも地元紙を購読していますが、まずは絶対に読むところです。当然ですが1面の広告も新聞で一番目にする機会が多いところになると思います。そこのムックをほんの少しだけ。


料金

参考にしたのは2013年4月付読売新聞広告料金表です。新聞の広告料金も細かい分類がたくさんあるのですが、都合により

  1. 全国版
  2. 朝刊
こういう条件で比較します。1面トップ下の広告も定価と契約があり、契約とは、

契約は6か月に6回以上の出稿に適用します

この6回以上は「6回以上」がセットではなく「6回以上」広告を出せば割引料金が料金が適用されるぐらいの理解で宜しいようです。、

広告規格 形態 料金
3段 × 1/8 定価 146万0000円
契約 102万2000円
3段 × 1/6 定価 194万7000円
契約 136万3000円


新聞と言うのは、現在の基本は15段構成になっているらしいです。1面で言えばおそらく11段が記事で、その下に1段のコラムがあり、さらにその下に3段の広告スペースがあるぐらいの感じでよろしそうです。「1/8」とか「1/6」は横3段を6分割するか、8分割するかの意味でその分割された広告料金になります。もちろん作成費は別で新聞社が受け取るショバ代です。仮にこの1面トップ下を全段借りると
  • 定価(単発)で1168万円
  • 契約で817万円
千円以下は切り捨てています。

さてこの1面トップ下が他の紙面の記事と較べてどうかです。これもどうやらなんですが1面トップ下の記事の形態は記事下広告というものになりそうです。この記事下広告が複雑でして、契約とは書いてあるのですが6ヶ月単位で使用するスペースを段単位で買い取るようです。ここもたくさん段数を買うほど割安になる仕組みになっています。たとえば週刊誌などは毎週広告を出します。神戸新聞では2面と3面の下5段を使っています。6ヶ月を仮に25週間、つまり25回分の広告を打つと、

    5(段)× 25(回)= 125
125段分の広告スペースを雑誌社は新聞社から買う事になります。この場合の料金は1段当たり250万7000円となっていますから、
  • 広告1回(5段)あたり1253万円
  • 6ヶ月で3億1337万円
こんな感じになります。これを1面トップ下と比較すると、定価(単発)ベースで考えると3段の記事下広告代に近くなると考えられます。3段の記事下広告では1段につき362万1000円で、これが3段ですから1086万3000円になります。1面トップ下広告との料金比較をもう少しやると、1面トップ下の契約は6ヶ月で6回以上の広告ですのでこれを6回と考えると18段です。表にしておくと、

形態 1面トップ下 そのた記事下広告
定価(単発) 1168万円 1086万円
契約(6回) 817万円 958万円


へぇ〜、かなり意外でしたが1面トップ下の広告料は、その他紙面の記事下広告に較べて必ずしも高いとは言えないようです。単発で出せば1割弱ほど高めですが、契約で6ヶ月で6回なら逆に割安の感じになっています。一番注目される1面記事の下ですからさぞ高かろうと思っていたのですが、必ずしもそうとは言えないようです。一つ勉強になりました。


広告内容

料金がさして変わらないのであれば、スポンサーとしては1面トップ下に広告を出したいはずです。広告でコスト・パフォーマンスは非常に重視されますから、どうせ出すなら一番目立って、一番効果的なところに新聞であっても広告を出そうとするのが自然です。ところが皆さまよく御存知の通り、まずは名の通った一流商品の広告を目にする事は少ないかと存じます。

一流どころか一流半の商品でさえ、そうは目にする事はないと思っています。たとえばある日の神戸新聞1面トップ下の広告です。

  • 交通事故における過失相殺率/入管法判例分析
  • おうち薬膳
  • 日本成長戦略 40歳定年制/無限の力 ビジネス呼吸法
  • ミトコンドリア革命/どうすればがんは消えるのか?
  • 汚れた腸が病気を作る/納豆は効く
  • 社長!「経理」がわからないと、あなたの会社潰れますよ!
  • 日本の七十二候を楽しむ
  • 人間革命
よく言えば実用書、教養書、趣味書ですが、そうとうキワモノの出版物の広告も多分に混じっている気がします。正直なところ新聞の顔の下に並ぶ広告とすれば面白すぎると言うところでしょうか。理由は全く存じませんが、想像する限りでは1面トップ下は広告効果が強すぎるので、新聞社の判断として企業臭が濃い広告は避けたためではないかとも考えられます。そのため出版物の広告が中心となっているぐらいです。その辺りはまだ想像できるのですが、広告対象は玉石混交とすれば、玉が多い感じがして言いすぎみたいな印象があります。

例として挙げた出版物も興味深く、広告によってモトが取れそうなものもあれば、たとえば「交通事故における過失相殺率/入管法判例分析」なんてどれだけ顧客がいるのだろうと言うところです。必要な人は確実におられますが、マーケットとしてはどう考えても狭そうな感じです。余計な心配ですが、広告費を回収できるほど売れるんだろうかと言うところです。

そのためか料金設定は実に微妙な感じがします。スペースとしては一等地なんですが、そこに慣例として出せる商品範囲が狭そうで、スペースとしての価値とスポンサーの懐具合との兼ね合いで割安ぐらいになっている感じです。まあ、公表されている料金だって昨今の新聞広告事情ですから、定価販売に本当になっているかどうかは企業秘密と言うところでしょうか。


広告掲載基準

これは読宣姫路の新聞広告の注意点からですが、

新聞広告というメディアは高い信頼度があるからこそ、その社会性、公共性があります。そのためメディアの中では最も厳しい審査基準があることでも知られます。

これが21項目ほどあるので全部は紹介し切れませんが、気になったところだけピックアップしてみます。

  1. 内容が不明確なもの
  2. 虚偽または誤認されるおそれがあるもの。
    誤認される恐れがあるものとは次のようなものをいう。


    1. 編集記事とまぎらわしい体裁・表現で、広告であることが不明確なもの。
    2. 統計、文献、専門用語などを引用して、実際のものより優位または有利であるような表現のもの。
    3. 社会的に認められていない許認可、保証、賞または資格などを使用して権威づけようとするもの。
    4. 取り引きなどに関し、表示すべき事項を明記しないで、実際の条件よりも優位または有利であるような表現のもの。


  3. 比較または優位性を表現する場合、その条件の明示、および確実な事実の裏付けがないもの。

こうはあってもかなり許容範囲は広いようで、たとえば

細胞小器官ミトコンドリアが、健康と病気のカギを握っていた。ミトコンドリアが不調になると活性酸素が大量発生。ミトコンドリアの機能を改善できればすべては変わる。難病治療に変革を起こす。

この程度は問題ないようです。もう一つ掲載基準ですが、

  1. 社会秩序を乱す次のような表現のもの。
    1. 暴力、とばく、麻薬、売春などの行為を肯定、美化したもの。
    2. 醜悪、残虐、猟奇的で不快感を与えるおそれがあるもの。
    3. 性に関する表現で、露骨、わいせつなもの。
    4. その他風紀を乱したり、犯罪を誘発するおそれがあるもの

これは1面トップ下ではありませんが、週刊誌の広告記事程度は余裕でクリアぐらいの理解で宜しいようです。それはともかく、そういう「厳しい」掲載基準が存在している事は勉強になりました。なんと言っても

    メディアの中では最も厳しい審査基準があることでも知られます
だそうです。