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「さて、晩御飯食べに食堂車行こうか」
「今日もですか」
「当然よ、これも仕事だからね」
内容的にもそんなものですが、ロシア人には割高感があるようで、乗客の多くは持ちこみで自炊している人が多いようです。シベリア鉄道と言っても、オリエント・エクスプレスみたいな豪華観光列車ではなく、庶民の移動手段でもあるので、食堂車は割と、いやかなり空いています。でも食堂車に着くと既にパンパンの満席状態、
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「待ってました」
こんな感じでヤンヤの大喝采が起ります。コトリ副社長はあちこちの客車に遊びに行かれ、そこでシコタマのウォッカとあれこれ食べ物を奢ってもらっていますが、
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「ちゃんと返礼しとかんと」
そういって食堂車を貸切にして次から次に招待、無料食堂車状態ですから、そりゃ満席になります。さらに、
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「いくよユッキー」
「まかせとき」
食堂車の通路でお二人が、
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『♪ストップ 星屑で髪を飾り
ノン・ストップ 優しい瞳を
待つわ プールサイド
ズキズキ 切なくふるえる胸』
これを完璧な振り付きで。もちろんウインクだけではなく、延々とメドレーで。
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「ミサキちゃん」
「は~い」
ウインクやピンク・レディなどの二人組ならイイのですが、三人以上になるとミサキも駆り出されます。
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「今日はパフュームのお披露目よ」
パフュームとなるとそれなりに練習が必要で、ミサキも朝から二時間ばかりみっちりと。ほかにもモーニング娘からAKB・・・シベリア鉄道の旅はミサキにとって振付を覚える旅にもなっています。これも盛り上がると見物客も次々に参加して来るもので大変です、
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「ハラショー」
「ハラショー」
遊んでいるようにしか見えなくもないのですが、
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「宣伝、宣伝」
そうなんです、いつのまにか停車駅に手配し準備させていたエレギオン・グループの試供品を配りまくっています。いわゆる知名度を上げるって奴ですが、ようやるわってところです。もちろん、
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「エレギオンを宜しく」
これも随所に付け加えています。食堂車への対策もバッチリで、スタッフには十分すぎるほどの心づけ。客室乗務員にも同様に。ですから、ミサキたち三人組が何をしても大歓迎で、むしろ心待ちにしている感じです。
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「ミサキちゃん、広告費で落としといてね」
はいはい、落とさせて頂きます。そんなシベリア鉄道の旅も明日は終点のウラジオストクです。食堂車でのショーも終ってから、
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「コトリ、今回のバカンス、おもしろかったんじゃない」
「そやな、時差ボケにあんまり苦しまんで済んだし」
コトリ副社長は時差には本当に弱くて、ロンドンとウィーンの時差一時間でも、
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「なんとなく調子悪い」
ワルシャワとモスクワの二時間となると、
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「だから時差って嫌い」
どんだけ敏感なんじゃと感心させられるぐらいです。
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「コトリ、次は四人で行きたいね」
「そやな、いっそシオリちゃん連れて五女神で旅行したら面白いんちゃう」
「それって二千年ぶりじゃない」
「そやな、日本に来た時は三人寝取ったし」
加納さんにも女神の秘密教えたもんね。
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「ユッキー、どこ行こうか」
「長いのは難しいね」
「シオリちゃんとこもそうやろから、二泊とか三泊、せいぜい一週間ぐらいやろな」
そうそう、欧州視察にシベリア鉄道は許しませんからね。往復で二週間は論外。
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「ミサキちゃん、どっかの福引で、五人で三泊四日ぐらいの温泉ツアーが景品になってるところさがしといて。わたしかコトリが行って、絶対当ててくる」
そりゃ、お二人が女神の力を使えばそう出来るでしょうが、よくそんなケチ臭いことを、
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「加納さんの接待にして交際費で落とします。福引の景品ではあまりにも失礼です」
どんだけの大会社のトップやと思てるねん。世間体ってものがあるでしょうが、
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「ところでミサキちゃん、マルコが恋しいんちゃう」
「もちろんです」
「お、言うね。帰ったら燃える?」
「当然です。灰になるまで燃え尽きます」
早く会いたい。あの冥界から脱出できたのは、やはりマルコのおかげ。マルコがいなかったら、ミサキはどこかで屈していてもおかしくありません。
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「お二人も、早く相手を見つけ下さい。今のままじゃ『欲しい欲しい詐欺』ですよ」
「ありゃ、一本取られた」
「ホントだわ」