氷姫の恋:あとがき

 今回の主人公はユッキー。これまでさんざん苦しい時のユッキー頼みをしてきたので、ユッキーを主人公にしたくて書いたものです。ユッキーの経歴らしきものは、これまでの作品で書き散らしており、書き散らし過ぎて、書くのはある程度ラクでしたが、これまでの作品との時間やエピソードの整合性が大変だったぐらいです。

 そのためにストーリー構成として、過去にユッキーが関わったエピソードの補足が中心となりました。ただ生身のユッキーは『天使と女神』で早々と亡くなってしまってるため、エピソードもまた『天使と女神』時代のものが中心となり、ここのところチョイ役の山本が久しぶりに活躍する展開となっています。

 とにかく過去作品での登場シーンが多いので、ストーリーで捻ることは殆ど出来ていません。幼少期、中高期もそうですが、医学部を目指した理由も既に決まっています。さらに山本とのラブも一途のくせにツンデレ愛を貫くのも決まっています。出来るのはユッキー側からの心理描写ぐらいでしょうか。

 今回の作品のオリジナル・エピソード部分は医学部進学から、若くして病院部長になる過程ぐらいだったかもしれません。ただなんですが、この部分でこれまで書き散らしていた設定上の無理を解消しないといけない訳で、そういう意味では苦心したところです。

 医学部進学から山本に再会するまでにユッキーがやらなければならないことは、エレギオンの女神の話を知り、自分が首座の女神であることも知り、記憶の封印が解け、三座の女神をミサキに移し、さらにシオリに主女神を移さないといけません。さらに医師として異常に優秀である必要もあります。そりゃ、若くして大病院の部長職として『氷の女帝』として君臨させないといけないからです。

 ある意味、一番困ったのがユッキーを何科の医師にするかでした。これもエピソードは決まっていて、交通事故で瀕死の状態で担ぎ込まれた山本を獅子奮迅の活躍で助けなければなりません。そうなると救命救急医になってもらわざるを得ないってところです。

 これも北米型ERでは、これも既定事項のリハビリ時代の主治医まで延々と続けるのは無理があり、捻くりだしたのが完結型ERです。これだってリアリティからすると無理があるのですが、目を瞑らせて頂いています。

 それとユッキーを救命救急医にしたために、医療シーンの描写が甘々になっています。本当に医師としてお恥ずかしい限りですが、ERの世界はほぼ知らないのです。近づいたこともないですからね。山本の状態だって、内臓の多重損傷からショックが頻発みたいなものを想定しようとしたのですが、とても書ききれず情緒的な描写でお茶を濁しているのはそのためです。

 それでも高校時代の描写は楽しかったです。ユッキーの高校時代はコチコチの氷姫であったのが、人としての温かい心を取り戻す時期にしようと決めていたのですが、個人的には満足しています。いつもながら人が良すぎる善人ばかりが登場しますが、どうしても陰湿な人間関係を描くのが苦手なもので、その点はご容赦下さい。

 さてなんですが、これで一昨年の夏に始めた『小説家になろう』計画も十作目になりました。連作になったのは御愛嬌ですが、さすがにこの連作を続けるのも苦しくなってきています。腹案はあるのですが、その路線に進むかどうかは考慮中です。