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「コトリ、怪しいと思わない」
「そうね、まずセリム一世は、セリム二世と変わらんぐらい英雄やったで良い気がする」
「でしょう、それでもってセリム二世は間違いなく武神」
「さらに新王も平穏に即位している」
「そうなると」
「ま、まさか」
「そう考えて覚悟しておいた方が良いと思うわ」
さらにいえば、アングマールの王子にでも生まれればアレやけど、タダの平民に生まれようものなら、伸し上がるだけで人の寿命の半分どころか、もっと使っちゃうことになるのよ。ごく簡単に言えばエレギオンは当分は安泰ってところ。ハムノン高原の北部にアングマール軍は侵入してるけど、これだって女神の戦術が使えれば排除は可能ってところ。その気ならアングマールごと滅ぼすのも可能なはずやんか。
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「コトリたちと同じタイプって滅多にいないはずなのよ」
「でも他に絶対いないとも言えない」
「じゃあ、セリム二世がアングマールに急きょ帰国したのは」
「寿命を悟って、自分の子に宿主を移すためかも」
この辺がどうなっているのかわかんないけど、エレギオンでは女神の記憶が継承されるのは国民の常識になってるけど、アングマールも同じかどうかの情報はないのよね。
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「ところで次のアングマール王はセリム三世なの」
「違うみたいだよ。ゲランだったっけ」
「じゃあ、違う可能性は少しは残るかもね」
「でも油断しない方が良いと思うわ」
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「アングマール王の服喪期間ってどれぐらいかなぁ?」
「通常なら両三年やけど、戦時やから短いかもしれへん」
「猶予期間ってところね」
「でも短いよね」
「無いよりマシやん」
早く反攻したいのはヤマヤマだけど、この時はアングマール王の世襲時期を狙って動くには程遠い状態としか言いようがなかったわ。この時のエレギオンの戦力ではクラナリスぐらいは奪還できたかもしれないけど、ズダン要塞までは到底無理としか言いようがなかったの。以前とは逆でズダン要塞を突破しないとアングマールには攻め込めなくなってるのよね。