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「次座の女神様、宜しいですか」
「いいわよ」
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「夜分に恐れ入ります。アングマール軍の情報が入ったもので」
「どんなの?」
「テベスから生き延びた者に聞いた結果なのですが・・・」
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「まずアングマールはファランクスでなかったと見て良さそうです」
「えっ、ファランクスじゃないって! まさか密集隊形を取らなかったとか」
「いえ密集隊形ですし、重装歩兵が主力だったみたいですが、ファランクスではないと判断します」
「どういうこと」
「合戦の流れはアングマールの散兵部隊が投槍を投じるところから始まったようです」
「常套戦術ね」
「その後に我が軍が接近したのですが散兵部隊は退いたようです」
「そうなるよね。左右に別れたぐらいかな」
「いえ、左右じゃなくて後列の重装歩兵の戦列に吸い込まれたとなっています」
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「ファランクスとファランクスの間に吸い込まれたとかではないの」
「どうもそんな感じではなく、戦列の間に吸い込まれたとなっています」
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「では重装歩兵の戦列はスカスカだったとか」
「いえ、きちんと我が軍のファランクスを受け止めています」
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「縦深は聞いた?」
「それが深くないようです。たぶん四~五列程度かと」
「武器は?」
「剣が主体の様です」
「それだったらファランクスで押し潰せるやん」
「それが・・・」
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「私たちも信じられないですが、この横三列が自在に入れ替わって出てくるようなのです」
「入れ替わるって・・・」
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「それとこれもどうしているのかわかりませんが、戦列がかなり自在に動きます」
「自在って?」
「ファランクスでは考えられないのですが、戦列が曲がったり、伸びたりするみたいなのです。テベスでも気が付いたら包囲されていたとなっています」
明日は慎重にやらないと。リメラに使った奇策はやめた方が良さそうだわ。自在に動く戦列相手じゃ、超縦深ファランクスをやっても左右からの攻撃で潰されちゃいそうだもの。それでも前方攻撃だけならファランクスの方が強力と見て良いはず。とにかく相手に自在に動く戦列にさせないようにするのがポイントと見た。
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「リュース、イッサ」
「はっ、次座の女神様」
「明日は私の本営にいてもらうわ」
「それは・・・」
「未知の戦術相手だから、臨機応変がいるはずなのよ。そういう時に必要だからね」
「かしこまりました」