今日はシノブ部長のお宅にお邪魔してます。カエサル問題をゆっくり相談したかったのです。まずマルコの立てた偽カエサル説にシノブ部長も基本的に賛成してくれました。
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「そうなると問題はコトリ先輩の恋をどうするかになるのよね。本物のカエサルより落ちる人物でも、今わかっている限りで言えば、かなりの人物よ。それであれば邪魔するのは良くないわ」
「そこなんですよね。ただ、『かなりに人物』かどうかも判断するには情報が乏しすぎる面があります。そもそも本当にアッバス財閥の有力者かどうかさえわからないじゃないですか」
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「それと偽であっても前に考えたことは起る可能性はある」
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「少し話を整理しましょ。とりあえずの要点はコトリ先輩にカエサルが偽物である可能性を伝えるかどうかよ」
「伝えるべきだと思います」
「でもコトリ先輩は信じないかもしれないわ。ここを下手にこじらせてしまうと、二度とコトリ先輩と話も出来なくなるかもしれないの」
「では、やはり」
「そうなんだけど、どうやってお出まし願うかが難しいのよね」
さらに複雑なのが加納志織さんの存在。加納さんに眠った主女神がおられるのですが、山本先生と御夫婦ですから、もし同席すれば眠ってもらわないといけませんし、加納さんを眠らせることが出来るのも首座の女神だけです。ここ何回か、加納さんの留守を狙って首座の女神を呼び出していますが、あんまり使うと、これも宜しくありません。
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「まだ問題があるのよね。山本先生とは何度か会ってるから知り合いではあるのだけど、友達って程の関係じゃないのよ。私でもその程度だし、ミサキちゃんとなるともっと関係は薄くなるの」
「コトリ部長がいてこその関係ですものね」
「舞子の決闘の後は、会う理由はあったけど、カエサル問題じゃ理由にならないのよ」
「たしかに」
「たとえばだけど、山本先生の家を訪問するのさえ、コトリ先輩抜きじゃ理由が立たないのよ」
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「ミサキちゃん、否定材料ばっかり並べて申し訳ないと思うけど、ここのところ、なんだかんだで首座の女神に何回か会ってるじゃない。お出ましになる時は山本先生の意識はなくなるのだけど、山本先生も意識が無くなる自覚はあるのよね。いつも誤魔化してるけど、それもそろそろ限界になってる気がしてるの」
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「でも会わないと本当に困った事態になります。会ったから解決するとは限りませんが、会わないと話が進みません」
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「なんにも思いつかないわ」
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「でもユッキーさんには会わないといけないわ」
「でも、どうやって」
「正面から行くしかないと思うの」
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「会いに行く名目は、嘘偽りなくコトリ部長について心配事があるにするわ。これなら山本先生に相談しても不自然さは少ないし、山本先生に相談する事でユッキーさんにも要件が伝わるじゃない」
「加納さんは?」
「いなければラッキー、おられたらユッキーさんになんとかしてもらう」
「首座の女神がそれでも、お出ましになられなかったら」
「一撃を喰らわせる」
「ちょっと、ちょっと待ってくださいよ、シノブ部長が一撃を放つと翌日まで意識を失われますし、当たったところは大変な事になります」
「それはユッキーさんも知っておられるから、撃つ前に出て来ざるを得なくなる」
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「ミサキちゃん、ここで頼みがあるの。行くのは今度の土曜か日曜で私が連絡を取るから、山本先生が納得しそうなコトリ先輩の心配事を考えておいてくれる」
「ミサキがですか」
「私はウソを考えるのは下手なの」
「ミサキも得意じゃ・・・」