週刊朝日の協賛広告募集問題

私がツイッターで拾った話が、日本肝胆膵外科学会HPにある

長くもないので引用してみると、

平成24年12月17日
一般社団法人日本肝胆膵外科学会
会員 各位
緊急のお知らせ

週刊朝日からの特別広告企画の案内について)
前略
本日、週刊朝日が2013 年2 月発売予定の「手術数でわかるいい病院2013全国」に掲載する広告企画の案内を、【取材協力:日本肝胆膵外科学会 理事長 宮崎勝】と表し、多くの病院施設に広告掲載を持ちかけ、広告料として100万円以上のお金を要求していることが判明いたしました。

本学会および宮崎個人は、週刊朝日の同企画に対し、一切の関わりを持っておりません。その旨ご承知いただき、ご注意くださいますようお願い申し上げます。

なお、本学会として、このような広告掲載企画を無断で各施設に案内している週刊朝日に対し、抗議文の送付ともに説明を求める予定です。事情が明らかになり次第、本学会会員の皆様に報告申し上げます。

今後とも本学会へのご支援・ご協力をお願い申し上げます。

草々

この件に関する報道として12/20付産経記事(Yahoo !版)があり、

日本肝胆膵外科学会週刊朝日に抗議 「無断で病院に多額の広告料要求」

 「週刊朝日」が日本肝胆膵(かんたんすい)外科学会(宮崎勝理事長)の名前を無断使用し、病院施設に多額の広告料を要求していたことが判明したとして、同学会が週刊朝日側に抗議文を送付していたことが20日、分かった。

 学会によると、週刊朝日は平成25年2月発売予定の「手術数でわかるいい病院2013」に掲載する広告企画で、「取材協力」として学会と理事長名を無断で表記。多くの病院に広告料として100万円以上を要求していたとされる。

 学会は約3500人の会員医師に対し、「学会と宮崎理事長個人は週刊朝日の企画に対し、一切関わりを持っていない」として注意を呼びかけている。

 抗議を受けた同誌発行元の朝日新聞出版によると、同社は15年から「週刊朝日ムック」として、「手術数でわかる−」をシリーズ化。広告掲載は12〜130万円だが、2013年版の広告募集は始めたばかりで、まだ申し込みはないという。

 同社は産経新聞の取材に、「広告会社によると、宮崎先生は取材に応じていただいたとのこと。『一切関わりをもっていない』とされていることには、いささか当惑している」と回答、「直接会って説明する」としている。

産経記事の信憑性ですが、同業他社のものですから逆に事実関係は案外正しいのではないかとしておきます。学会の注意と産経記事を合わせると、まず週刊朝日が、

    手術数でわかるいい病院2013
産経記事にもシリーズものとなっていますから2012版を探してみると、アマゾンにありました。表紙だけ引用しておきます。
お値段は690円となっています。表紙だけ見ていると本の印象を受けますが、どちらかと言うと雑誌の特集号に近い感じかもしれません。理由は産経記事より、
    同社は15年から「週刊朝日ムック」として、「手術数でわかる−」をシリーズ化。広告掲載は12〜130万円
これまでも広告掲載があった事が確認できます。さてなんですが、表面上の問題は日本肝胆膵外科学会の理事長名で広告募集がなされた事ですが、今日はあえてそれを置いておきます。やや角度を変えて考えて見ます。


とりあえず「日本の名医云々」とか「全国の良い病院云々」の類の書籍は良く販売されています。どういう基準で評価されているかは読んだ事はありませんから判りませんが、類書は多かったと存じます。まず販売する事は細かい点を置いといて売られているから「きっと」合法的なんだろうぐらいに判断しておきます。もっとも第二のトリが編集取材の主体をなしていたなんて話もありますから、信頼度もそんなものぐらいには考えています。

でもってこの本には広告が掲載されるのは間違いありません。広告は募集するとなっていますが、今どきの事で黙っていたら病院側から広告依頼が殺到なんて事はないと存じます。2013年版を作るに当たっても募集案内を出しています。そいでもってこの広告募集はどこに出したのでしょうか。まず2012年版で5926病院となっていますから、手術を行なう病院をあらかた網羅しているんじゃないかとは思います。

ただし性質としてランキング本ですから、何らかの形でランク付けは行っていると推測します。そうでなきゃ、延々たる数値の羅列の内容になります。そんなものじゃ、さすがに売れないでしょうから、様々な形でランク付けは行っているはずです。つうか、それがこの本の目玉かと思います。

そういう本に広告を出すとして、ランクが下位に位置している病院は広告など出そうとも思わないはずです。出すだけ逆効果でカネの無駄と言うところでしょうか。広告を出しても良いと思うのはやはり上位ランキングの病院になると考えます。本でも上位にランキングされ、その病院の広告があれば何らかの相乗効果が期待されるからです。


広告は当たり前ですが本の発売前に行なわれます。行われますがランキング等のデータは既に出版社側は知って広告募集を行っているとしても良いはずです。もっとあからさまに言えば、上位ランキングの病院を狙い撃ちして広告募集の営業を行っても不思議とは言えません。わざわざ下位の病院に募集に行くとは思えません。そうですねぇ、セールストークとして、

    おたくの病院は、うちの本でバッチリ上位になってはります。ほやから、ここでバーンと広告を入れてもろうたら効果は倍増でっせ♪
これぐらいの感じでしょうか。でもって、でもってなんですが、この手の広告商売は割りと多くあります。私も開業しているので実際に経験していますが、実に多種多様の広告の勧誘が存在します。そういう中で例として良さそうな物としては、時節柄もありますが正月の年賀広告なんてものもあります。一度ぐらいは見た覚えのある人も少なくないと思いますが、スタイルとして、
  1. 上部に「謹賀新年」とかの賀詞
  2. 下部にとにかく企業名がズラズラ
あれって広告下請け会社が広告スペースを買って、「企業名がズラズラ」のスポンサーをかき集めます。そいでもって1回出してしまうと次から「今年も是非宜しく」で毎年のように依頼と言うか泣き落としに来られます。うちも開業時に出来心で1件だけ違う類のものに広告を出したら、2年目に断るのに往生しました。以来、すべて門前払いです。


全国に幾多の病院があるとは言え、100万円以上もの広告費をポンと払えるところは自然に限定されます。ポリシーとしてそういう広告を余り出さないところもありますし、広告を出すにしてもそういうランキング本の類は好まないところもあると思います。そうなると広告を出してくれるところはスポンサーとして非常に大事になります。

どれぐらいスポンサーが大事かをごく簡単な算数で示してみます。出版業界にも疎いので、この手の本がどれだけ売れればヒットなのか感覚的に判り難いのですが、10万部も売れれば結構なものじゃないでしょうか。そうなれば単価が690円ですから売上高は6900万円です。一方で広告が1件120万円とすると10件集まれば売上高は1200万円です。あまくでも漠然とした推測ですが、売上高に対する利益となればたとえ販売売上高が1億円ぐらいになっても「販売 < 広告」になりそうな気がします。


さ〜て、この不況の中であえて広告のスポンサーになってくれる病院はどう扱われるのでしょう。あくまでも客観的かつ、冷静に評価されるでしょうか。なかなか興味深いお話でした。もちろんカー雑誌なんて、そういう商法を忠実に行っているわけですから、病院ランキング本でやったら犯罪的とは言いません。ジャンルが変わっても商法は変わらないと言ったところでしょうか。