記事がマスコミ情報しかないので、その点は容赦して欲しいのですが、とりあえず11/27付産経より、
脳出血の7歳女児死亡で4500万賠償 医師、看護師の連携不足
愛知県の一宮市立市民病院で2010年、脳出血で入院した市内の女児=当時(7)=が、医師や看護師間の連携不足で適切な治療を受けられず死亡したとして、市は27日までに、4500万円の損害賠償を支払うことで、遺族と合意した。
病院によると、女児は同年9月、頭痛を訴えて救急搬送され、脳神経外科に入院。部分的にけいれんがあったため、主治医が看護師に投薬を指示した。入院翌日の夜から女児はけいれんが全身に広がったが、看護師は医師を呼ばずに投薬を続け、人工呼吸などの適切な措置をしなかった。女児は入院3日目の早朝に死亡した。
病院は「脳神経外科は小児の対応がまれで、子供にけいれんが起きた場合、急変する可能性があるのを主治医が把握せず、対処できなかった」と説明。「脳神経科と小児科とが連携を組む態勢を取っておくべきだった」と述べた。
7歳女児の御冥福を謹んでお祈りします。この記事で判り難い点を挙げておくと、
- 脳出血の部位・程度
- 痙攣に対して行った治療内容
- 病状の変化に対して医師が何故呼ばれなかったか
ここについては殆んど不明です。そこでかすかな傍証を考えて見ます。産経は死因についてははっきりした事を書いてはいませんが、11/26付中日新聞には、
入院3日目の早朝に女児は出血で脳が腫れ、死亡した
脳浮腫の進行みたいな印象ですが、11/27付タブには、
脳ヘルニアで死亡した
気になるのは脳出血の程度です。これもタブですが、
市は、全身けいれんを抑える点滴や人工呼吸器を使うなどの措置を施せば助かった可能性があったとしている。
ここから考えると手術適応はなかったと見れそうです。呼吸抑制を考慮した抗痙攣療法を行えば救命の可能性があったの解釈が可能です。各紙とも手術のタイミングの遅れとは書いていません。また入院後の治療についても、看護師に指示したきりであり、看護師も病状の変化に対して指示だけの治療を続けた点からも、入院時及び翌日の判断では、脳出血はあるものの自然吸収を待つだけの判断であったのじゃないかと推測されます。
もっとシビアな脳出血があったのなら、もう少し病状の変化に敏感になるはずです。手術適応の是非が主治医なりの念頭に常にあるはずですから、ここまでの対応は余ほど杜撰でなければ起こりにくいと思われます。それと脳出血の機転も不明です。記事には死亡女児の主訴として「頭痛」しかなく、外傷性のものであるのか、その他のものであるのかは不明です。
辛うじて確認できるのは、
- 部分性(部位は不明)から全身性に広がる痙攣を起した
- 手術適用はなかった。
- 少なくとも入院時及び入院1日目の見通しは比較的軽症
- 外傷性かどうかは不明
産経記事には「投薬」のみしか書かれていないのですが、中日はもう少しだけ具体的に、
主治医の指示で看護師が交代でけいれんを抑える薬を数時間おきに投与した
数時間おきか・・・セルシンぐらいかと思ったのですが、タブには、
主治医は座薬の投与を看護師に指示。看護師は座薬を投与し、けいれんを抑えていた。
数時間おきに小児に投与できる抗痙攣剤の座薬か・・・私が思いつくのはダイアップぐらいですが、ダイアップを数時間おきに使うかと言われると「う〜ん」てなところです。他にも何かあるのかなぁ? ダイアップを数時間おきに使うぐらいなら他の選択枝を考慮しても良さそうな気がしないでもありません。ここもダイアップと特定出来ないのでこの辺にしておきます。
女児は搬送時には痙攣はあったと見ます。激しい頭痛と痙攣があったからこそCTなりを撮影し脳出血を診断できたと考えています。また脳出血であるのが判ったからこそ、小児科でなく脳外科に入院となったとも考えます。最初は部分的となっていますが、これが全身性に変わっているのですが、ここの時間経過はタブになりますが、
入院2日目の午後11時ごろから全身けいれんが起き、座薬では収まらず、翌日の午前5時35分に脳ヘルニアで死亡した。
入院1日目が何時の入院なのか不明ですが、2日目の23時ですから、最低でも1日単位で痙攣の増悪が見られているわけです。これも「たぶん」ですが、入院時は座薬の投与で痙攣はほぼコントロールされていたと考えます。それと入院2日目にも1日目に引き続いてCTなどの検査は行われた可能性はあると考えます。ただ、ここら辺は入院1日目の入院時刻により変わる部分もあるので、なんとも言えないぐらいにしておきます。
でもって2日目の23時から始まったとされる全身性の痙攣ですが、これも当初は座薬の追加投与により収まったと見たいところです。もし2日目の23時より座薬投与により収まらない痙攣となっていたのなら、
- 3日目の5時35分までの6時間半に渡り全身性痙攣を経過観察していた
- 看護師の勤務シフトとして、準夜勤から深夜勤の2組のチームが全身性痙攣を経過観察しながら医師への報告の必要性を感じなかった
これは推測ですが、女児の死亡の1時間前ぐらいにはさすがに呼んでいたんじゃないかです。ただこの点についてはマスコミ情報では不明です。
これもあくまでもマスコミ情報によりますが、最後まで小児科医は呼ばれなかったようです。そもそも入院時にしろ、手術適応の無い軽度の脳出血であれば小児科入院の選択もあったはずです。ここも入院診療科の選択は病院の慣行とか、診療科の力関係があったりするので一概には言えません。脳外科入院はまあ良いとして、小児科が協力しなかった原因として小児科医不足はどうだろうの意見が某所にありました。
これについては2010年当時は不明ですが、現在の小児科は名簿上に常勤医11人、研修医(専攻医)2人、非常勤医5人がおられます。NICUもあるようなので十分とは言えないかもしれませんが、少なくとも開店休業状態の小児科医不足は起こっていないと見て良さそうです。つまり脳外科が助力を求めれば協力できる頭数はいるです。
そうなると、後は脳外科と小児科の関係になるのですが、これはこの病院での勤務経験がないのでわかりません。ここもなんですが、経過的には入院2日目の23時までは痙攣のコントロールはそれなりであったと見えない事もありませんから、脳外科側にしてもあえて小児科の協力を要請する必要性が無かったはあるかもしれません。またその後も土壇場まで看護師が医師を呼ばなかったわけですから、深夜と言う時間帯もあって小児科への協力要請をする間もなかった可能性もあります。
問題は脳外科病棟看護師と脳外科医の関係になるかもしれません。これは変な言い方ですが病棟内力関係が、
-
医師 < 看護師
-
看護師:「すぐ来てください」
医師:「何があったんだ?」
看護師:「○○さんが変なんです」
医師:「どう変なんだ?」
看護師:「とにかく変なんです! ガシャン」
-
医師 > 看護師
ただいくらそういう関係であっても、少しでも骨のある看護師がいればそれでも医師を呼び出します。まあ、人間関係は難しいですから「ありえるかもしれない」ぐらいの憶測です。マスコミ情報に限定されるので、不確かな面は多々あるのですが、情報から推測の翼を広げると、今回の事件の経緯として、
- 入院時に脳出血があったので脳外科医単独での主治医体制を取った
- 死亡女児の脳出血は比較的軽度で手術適応は乏しく、自然吸収で回復できる判断が行なわれた
- 入院時から痙攣はあったが、出血部位・程度からして一過性のものでありコントロールはさして難しくないだろうの判断もあった
- 重症度の判断がその程度の意識は看護スタッフにもあった
それでもマスコミ情報を読む限り医療サイドに問題があるとしても良さそうと私は見ます。ここもあくまでもマスコミ情報しかありませんから、そこの点だけは保留とさせて頂きます。