今日は中毒死の統計

またもやBugsy様のコメントからで申し訳ないと思っているのですが、不慮の事故に関して、

ところが20歳をこえると中毒死が増加しています。この中毒ってなんでしょうか。

これに対し、とおりすがり様から、

急性アル中ではないのかしら(笑)…笑いごとでもないですが。

言われて見ればそんな気もしないでもありませんが、私も「なんだろう?」の興味が湧いたのでちょっとムックしてみます。とりあえず中毒死とは不慮の事故のうち、

    有害物質による不慮の中毒及び有害物質への曝露
これであるのは確実です。でもってこの項目の小分類はICD10に準拠していますから、

    X40オピオイド系鎮痛薬,解熱薬及び抗リウマチ薬による不慮の中毒及び曝露
    X41 抗てんかん薬,鎮静・催眠薬,パーキンソン病治療薬及び向精神薬による不慮の中毒及び曝露,他に分類されないもの
    X42 麻薬及び精神変容薬[幻覚発現薬]による不慮の中毒及び曝露,他に分類されないもの
    X43 自律神経系に作用するその他の薬物による不慮の中毒及び曝露
    X44 その他及び詳細不明の薬物,薬剤及び生物学的製剤による不慮の中毒及び曝露
    X45 アルコールによる不慮の中毒及び曝露
    X46 有機溶剤及びハロゲン化炭化水素類及びこれらの蒸気による不慮の中毒及び曝露
    X47 その他のガス及び蒸気による不慮の中毒及び曝露
    X48 農薬による不慮の中毒及び曝露
    X49 その他及び詳細不明の化学物質及び有害物質による不慮の中毒及び曝露

ちゃんと急性アルコール中毒も入っています。分類として面白かったのはサリン中毒は農薬中毒に分類されるようです。まず中毒全般の年齢分布(以下ソースは2010年度人口動態統計)ですが、

10歳の後半から立ち上がり始め、40代の前半をピークにして以後漸減していくようです。では原因になりますが、これがどうしてもグラフにならなかった(項目名長すぎ!)ので表で示します。

有害物質による不慮の中毒及び有害物質への曝露 人数
オピオイド系鎮痛薬,解熱薬及び抗リウマチ薬による不慮の中毒及び曝露 7 0.8%
てんかん薬,鎮静・催眠薬,パーキンソン病治療薬及び向精神薬による不慮の中毒及び曝露,他に分類されないもの 191 22.2%
麻薬及び精神変容薬[幻覚発現薬]による不慮の中毒及び曝露,他に分類されないもの 1 0.1%
自律神経系に作用するその他の薬物による不慮の中毒及び曝露 1 0.1%
その他及び詳細不明の薬物,薬剤及び生物学的製剤による不慮の中毒及び曝露 122 14.2%
アルコールによる不慮の中毒及び曝露 77 8.9%
有機溶剤及びハロゲン化炭化水素類及びこれらの蒸気による不慮の中毒及び曝露 13 1.5%
その他のガス及び蒸気による不慮の中毒及び曝露 326 37.8%
農薬による不慮の中毒及び曝露 105 12.2%
その他及び詳細不明の化学物質及び有害物質による不慮の中毒及び曝露 19 2.2%
合計 862

どうもアルコール中毒は1番ではなく「その他のガス及び蒸気」が全体の37.8%を占めています。次に多いのが「抗てんかん薬,鎮静・催眠薬,パーキンソン病治療薬及び向精神薬」の22.2%で、「その他及び詳細不明の薬物,薬剤及び生物学的製剤」と「農薬」までが年間死者100人を越えています。アルコールはその次の5番目ぐらいの位置付けです。 ここまで来たら上位5つの年齢分布もグラフにして見ます。上位から順に行きます。
グラフだけを見るとどれも同じような人数に見えてしまいますが、Y軸のスケールが違いますので御注意下さい。それと本来何か論評が必要なんですが、これは小児科の範疇からズレている部分が多く、何か付け加えたい方がおられれば歓迎します。と言うのも小児科は全体で23人しかおらず、グラフにもしにくいぐらいで、表にしておきます。
有害物質による不慮の中毒及び有害物質への曝露 0-4歳 5-9歳 10-14歳 15-19歳 合計
オピオイド系鎮痛薬,解熱薬及び抗リウマチ薬による不慮の中毒及び曝露 0 0 0 0 0
てんかん薬,鎮静・催眠薬,パーキンソン病治療薬及び向精神薬による不慮の中毒及び曝露,他に分類されないもの 0 0 0 1 1
麻薬及び精神変容薬[幻覚発現薬]による不慮の中毒及び曝露,他に分類されないもの 0 0 0 0 0
自律神経系に作用するその他の薬物による不慮の中毒及び曝露 0 0 0 0 0
その他及び詳細不明の薬物,薬剤及び生物学的製剤による不慮の中毒及び曝露 0 0 0 5 5
アルコールによる不慮の中毒及び曝露 0 0 0 4 4
有機溶剤及びハロゲン化炭化水素類及びこれらの蒸気による不慮の中毒及び曝露 0 0 0 1 1
その他のガス及び蒸気による不慮の中毒及び曝露 2 1 2 7 12
農薬による不慮の中毒及び曝露 0 0 0 0 0
その他及び詳細不明の化学物質及び有害物質による不慮の中毒及び曝露 0 0 0 0 0
合計 2 1 2 18 23

これもなんとも言いがたいのですが、15-19歳のアルコール中毒は、例の新歓コンパの「一気飲み」がどれほど含まれているのだろうかと言うところです。また「その他及び詳細不明の薬物,薬剤及び生物学的製剤による不慮の中毒及び曝露」は麻薬かとも思いましたが、麻薬は別に項目があるので、なんだろうと言うところです。 それと「有機溶剤及びハロゲン化炭化水素類及びこれらの蒸気による不慮の中毒及び曝露」はシンナーも含まれると思っていますが、死亡者としては統計上は1人なんだと感じています。そもそも子供でも全体でも一番多い「その他のガス及び蒸気による不慮の中毒及び曝露」とは具体的に何を指すか良くわからないところです。CO中毒ぐらいと思っているのですが、御存知の方は宜しくお願いします。 データ収集だけでまとめがありませんが、そんな日もあると言うところで御了解お願いします。