子供の不慮の事故の統計

Bugsy様の

未成年の自殺率が増えたような報道も目にしますが 実際には相変わらず圧倒的に不慮の事故によるものが多いのではないでしょうかね。

これに反応しただけのお話です。可能な限り人口動態調査から掘り起こしてみました。今日も昨日に引き続いて

  1. 子供とは19歳以下の未成年者を指す
  2. 発生率は年齢階級人口に対する10万人対
まずは長期推移です。1950年から2010年までの動きです。
かつては0-4歳児の不慮の事故の発生率が非常に高かったのが確認できますし、1970−1990年にかけて15-19歳の不慮の事故が多かったのも良くわかります。長期推移のグラフではかえって最近の動きがわかりにくいので、1990年からの20年間のグラフを提示します。
全人口では、ほぼ30人程度で安定しています。1995年度が高いのはやはり阪神大震災の影響でしょうか。一方で子供の不慮の事故はほぼ一貫して減少しています。1990年度から5年毎の数値の変動を表にします。

年度 全年齢 0-4 5-9 10-14 15-19
1990 26.17 16.55 7.03 3.77 25.01
1995 36.46 16.12 8.09 4.98 20.83
2000 31.43 8.96 4.04 2.55 14.15
2005 31.59 7.39 3.90 2.50 9.43
2010 32.23 5.02 2.25 2.06 7.03
2010/1990 1.24 0.30 0.32 0.55 0.28

20年間で0-4歳、5-9歳、15-19歳は1/3に減少。10-14歳も半減です。ついでですから実数も示しておくと、
年度 全年齢 0-4 5-9 10-14 15-19
1990 32122 1071 523 320 2493
1995 45323 959 525 370 1769
2000 39484 525 242 166 1052
2005 39863 410 230 150 615
2010 40732 264 125 121 424

こんなものです。ではでは年齢階級別の総死亡数に対する割合はどうなっているかです。
表も提示しておきます。
年度 0-4

(%)
5-9

(%)
10-14

(%)
15-19

(%)
1990 13.42 37.98 25.76 57.27
1995 13.62 42.51 31.25 52.62
2000 9.96 32.79 22.31 43.89
2005 10.00 35.11 25.42 34.13
2010 7.81 26.04 21.88 29.82
2010/1990 0.58 0.68 0.85 0.52

年齢階級で差はあるとは言え、0-4歳で4割減少、5-9歳で3割減少、10-14歳で1割5分減少、15-19歳でほぼ半減です。どこまで減らせば合格点はキリがないにしろ、ここ20年間の間でも不慮の事故の発生数、発生率、また死亡数に対する割合も確実に低下していると考えられます。
不慮の事故と自殺
元のBugsy様のコメントの趣旨は、子供の自殺と不慮の事故の発生率の差ですから、これにちゃんと回答を書いておかないといけません。とりあえず発生率のグラフを示しておきます。
1980年時点(1995年時点でも!)では圧倒的な差がありますが、2010年時点では相当縮まっています。2010年時点では子供の不慮の事故の発生率は4.11人、自殺が2.26人です。あえて破線のグラフを付け加えたのはさすがに0-4歳の自殺者は存在しないため、5-19歳を母数とすれば、2.94人(警察庁統計なら3.16人)になります。これは両者の死因の発生率としては近いと感じます。 では子供の死因に占める割合はどうかです。これは1980年時点と2010年時点を較べてみます。
不慮の事故と自殺の合計の割合は1980年時点も、2010年時点もほぼ変わりはありませんが、比率がかなり変わっているのが確認できるかと思います。とくに自殺の占める割合が増加しており、1980年時点では2.6%であったものが、8.8%に増え、不慮の事故の半分以上になっています。これは子供の自殺対策が、不慮の事故対策に較べても軽視出来ない事を示していると見ます。 もう一つデータを示しておきます。
年度 子供の死亡数 自殺 不慮の事故 子供人口 子供の死亡率
(10万人対)
1980 24741 654 5737 35540652 69.6
1985 18486 538 4837 34838500 53.1
1990 14955 428 4407 32370067 46.2
1995 12821 489 3623 28359365 45.2
2000 9148 547 1985 25765069 35.5
2005 7149 556 1405 23961223 29.8
2010 5837 514 934 22717343 25.7

子供人口も減っているのですが、子供の死亡率自体が低下しているのが判って頂けるでしょうか。それもかなりの速度で改善しています。10年前からでも3割弱程度減少していますし、30年前からになると6割以上も減少しています。実数で見ても15年前と較べて半減以下の6000人を切っています。一方で不慮の事故も1000人を切る状態になっており、これ以上の子供の死亡率の改善を考えるのなら、自殺対策は軽視できないと思います。 あえてBugsy様への回答とさせて頂くなら、未成年者の自殺の実数は大きく変わりはありませんが、自殺以外の死因による死亡が大幅に減少し、相対的に自殺対策の重要性が大きくなったです。これは子供人口の減少及び子供の死亡率の低下を考えると、急増中とも言えます。他の死因が低下を示す中で増えているのはやはり対策の必要性が求められるです。 ただデータだけで言うと、2010年時点で自殺が514人、不慮の事故が934人ですから、ここからどれほど減らせるかは容易ではなさそうは言えます。ですから不慮の事故に対策のさらなる重点を置いても、どれほどの効果が期待できるかはかなり未知数ではないかと私は考えます。