子供の溺水統計

子供の不慮の事故の統計を出すと必ず溺水の話が出てくるので、今日はこれをまとめてみます。季節的にも宜しいかと存じます。統計物は「もうあきた」の声も聞こえそうですが、よろしくお付き合いお願いします。


子供溺水全体

今日も子供とは19歳以下の未成年を指します。ソース元は例の如く例の通り人口動態統計で、掘り起こせたのは1997年から2010年までの14年間の推移です。まずは実数です。

これにあえて年齢階級人口での10万人対の発生率をグラフで示します。
実数と発生率の1997年と2010年を表で示します。

実数 発生率
1997 2010 1997 2010
子供総数 350 151 1.29 0.66
0歳 25 6 2.10 0.58
1-4歳 121 32 2.57 0.76
5-9歳 81 34 1.31 0.61
10-14歳 45 34 0.63 0.58
15-19歳 78 45 0.98 0.75

14年間で溺水が半減しているだけではなく、かつては0歳児や幼児(1-4歳児)に「とくに多い」と言う傾向があったのが、ほぼフラットになったと見させて頂いて良いかと思います。14-19歳と1-4歳の溺水発生率が同じと言うのは、かなり凄いと感じます。これが14年間の子供全体の溺水の推移です。
風呂での溺水
溺水といえば日本の風呂が必ず指摘されますが、これがどうなっているかです。以後の統計は実数でのみ語らせて頂きます。風呂での溺水の分類は2つあって、
    W65   浴槽内での溺死及び溺水
    W66   浴槽への転落による溺死及び溺水
まず2つ合わせたものです。
14年間で激減しているとして良いかと思います。これも1997年と2010年の表を示しておくと。
年度 1997 2010
0歳 23 5
1-4歳 72 15
5-9歳 95 20
10-14歳 7 7
15-19歳 9 10
合計 206 57

10-19歳は変わりはありませんが、9歳以下の改善が著しい事が確認できます。2010年で合計57人ですが、これ以上の改善の余地がどの程度あるのかと言うところです。もう一つグラフを示しておきたいと思います。かつて、日本の風呂構造の特徴で転落によるものが多いとされていました。これがどうなっているかです。
1997年には23人、1998年には25人いましたが、2010年のはついにゼロです。
プールでの溺水
グラフで示します。
これも本当に少なくなっています。最近でのプール事故で覚えているのは、排水口の蓋が外れていて巻き込まれたのとか、飛び込んで頭部を強打したものがあったはずですが、それでも3人程度です。道理でプールの溺水があれば必ず報道されるはずです。おそらく全件報道されているような気がします。
自然水域内での溺水
自然水域とは海、川、湖と池あたりになるとして良いと考えています。グラフで示します。
これはさすがに今でも少なくありませんが、
年度 1997 2010
0歳 0 0
1-4歳 16 7
5-9歳 48 17
10-14歳 30 20
15-19歳 49 31
合計 143 75
それでも14年間で半減です。とくに14歳以下は44人しかいませんから、どこまで減らせるかになりそうです。ついでに自然水域の溺水のうち「自然の水域への転落による溺死及び溺水」のグラフも示しておきます。
そいでもって自然水域への溺水を転落と転落以外でグラフにしてみると、
これは大雑把過ぎるかもしれませんが、自然水域での溺水の減少数は転落による溺水の減少数に近いところがあります。あくまでも統計上のお話ですが、転落対策の強化は、今までの子供の溺水者の減少には有効であったと考えられます。一方でこれ以上の成果を得るのは難しそうに感じます。
その他の明示された溺死及び溺水
そういう項目があるのでグラフにしています。
案外多いのですが、具体的には用水路への転落とかでしょうか。表を示しておきます。
年度 1997 2010
0歳 1 0
1-4歳 21 9
5-9歳 11 7
10-14歳 4 1
15-19歳 8 2
合計 45 19

9歳以下に多いですが、それでも半減以下になっています。
感想
感想の前にその他(詳細不明の溺死及び溺水)の表だけ示しておきます。
年度 1997 2010
0歳 1 1
1-4歳 10 1
5-9歳 6 0
10-14歳 0 3
15-19歳 9 4
合計 26 9

子供の不慮の事故による死亡は傷ましく、可能な限り少なくしたいと思うのは誰しもだと思っています。日本では昔から不慮の事故が多いとされ、その中でも溺水は非常に多いとされてきました。かつての医学生(今はどうだろう?)もそうやって覚えてきました。ただ実際の統計上はここまで減っています。そりゃ、ゼロにするのが理想ではありますが、ここからどれほど減らせるかの問題になっています。 こんな表を2010年度データから作ってみました。
年齢 総数 風呂 プール 自然水域 自然水域以外 その他
0歳 6 5 0 0 0 1
1-4歳 32 15 0 7 9 1
5-9歳 34 20 0 17 7 0
10-14歳 34 7 3 20 1 3
15-19歳 45 10 0 31 2 4
合計 151 57 0 75 19 9

2010年度で151人ですが、ここから100人を切るようにするのはかなり大変な作業と思えます。たとえば溺水の原因の中で一番多いのは自然水域での溺水で、ちょうど半分を占めますが、その中でも15-19歳が約4割(つうても31人)です。とは言うものの自然水域への溺水のうち転落によるものは殆んどありません(15-19歳で2人)から、「海や川には一切近づくな」を高校生とか、ましてや高校非在籍者に規制するのは難しそうに思えます。 もっとも少子化の進行は著しいですから、実数だけなら母数の自然減による達成は20年とか30年先にあるかもしれませんが、それはそれで・・・寂しいなぁ。