新聞に「軽減税率を」だって

6/25付J-castより、

これよりお茶漬けサラサラで論評します。

 消費増税をめぐる攻防が国会内で激しさを増すなか、「新聞や出版物の税率引き上げは許さない」と、超党派の国会議員でつくる「活字文化議員連盟」が声明を発表した。

大手紙トップも意見表明し、「頭脳にとってのコメ」である新聞への軽減税率適用を主張した。

活字文化議員連盟と大手新聞のトップが表明し主張だそうです。具体的にはどんな人物かですが、

所属 人物
活字文化議員連盟 民主党山岡賢次副代表や自民党川崎二郎衆院議員ら
大手新聞トップ 秋山耿太郎・朝日新聞社長、白石興二郎読売新聞社


山岡賢次氏か・・・「なるほど!」と思わないでもありません。ちなみに秋山耿太郎・朝日新聞社長は新聞協会の会長でもあらせられるようです。でもかわいそうにタブや産経、日経社長は出席していなかったか、出席しても発言しなかったか、発言しても取り上げてもらえなかったようです。そいでもって大義名分ですが、

欧州では新聞や出版物を「民主主義のインフラ」とみなし、「知識課税は避ける」という理念と伝統があり「わが国も大いに参考にすべきものだ」と提言。

定番の「欧米では」パターンです。でも今回はアメリカは出さなかったようです。さらに古証文も出しているようです。

かつて売上税創設構想の際に、当時の中曽根康弘首相が「新聞は頭脳にとってのコメ」なので軽減税率の項目のひとつに加えて当然との話があったことを取り上げた。その際は実現しなかったが「新聞が日本の活字文化にとってコメであると改めて訴えていきたい」と強調している。

中曽根元首相が売上税導入話は、1986年6月の総選挙で「この顔が嘘いう顔にみえますか」と大型間接税導入を真っ向否定しておいて、1987年2月に売上税法案を提出、見事不成立になった時の話です。あの時も公約違反で強烈に中曽根元首相を糾弾していたかと記憶していますが、一方でこういう約束も取り付けていた訳で、なおかつ有効性もあると主張されています。

もう一つ、

新聞や書籍に対する消費税率引き上げについて「国民の活字離れを加速させ、これからの日本を支える人づくりはもちろん、地域づくりや国づくりにも悪影響を及ぼしかねない」と反対の意向を示した。

いろんな考え方があるのでしょうが、個人的にはネット時代になり活字回帰になっているように感じています。ネットと言っても情報の主体は活字(広義のです)であり、活字を読む時間はネット時代の前より確実に増えているかと考えています。そうでなければ現在のネットの隆盛はありえないからです。

ついでですから、

「インターネット社会で情報が氾濫している」現在、正確な情報と世論形成力、国民の浸透度などから「新聞の役割は重要」と発言

「正確な情報」と「世論形成力」ねぇ・・・これがネット時代になって新聞が一番厳しく問い詰められていると思うのですが、まさか反面教師として存在価値の評価でしょうか。


自称「社会の木鐸」が自分の産業の利益のために獅子奮迅されるのはもう否定しません。そういう存在に過ぎない事は既に常識だからです。「活字離れ」とか「地域づくりや国づくり」のためにが、そんなに新聞にとって重要であれば消費税分の値下げを行っては如何でしょうか。値下げは新聞普及のための最も現実的な手段です。

それにしても一番筋が悪いと感じるのは、白昼堂々、政治家と手を携えて自社利益の確保を訴える事に何の違和感も感じておられないところでしょうか。これを他の業界が行えば、どんな反応をするか見てみたいものです。そういう手法は「族議員」とか言って強烈な批判の対象にされていたように記憶しています。新聞族議員は、やはりいつものように例外みたいです。

それと朝日新聞社長も読売新聞社長も、それだけ自説が正義・正論に基づくものであれば、自前の「世論形成力」で「新聞・出版物は軽減税率にすべきだ」世論喚起を行うのが正道かと存じます。なぜかそれを積極的に行わず、コソコソと新聞族議員に働きかけるのは珍妙そのものです。そう言えば「新聞にも補助金を」なんて運動もありましたが、あれもどうなったのでしょう。あの時も世論形成はあんまり上手くいかなかった様に記憶しています。

そうそう「食料品 = 新聞」なんて価値観の人間が新聞社以外にどれほどいるのか、お得意の世論調査でも行えば良いのにと思います。ただ下手に「食料品 = 新聞」なんて話がマスコミの努力で盛り上がったりすれば、永遠に食料品への軽減税率が行われない悪寒がしてなりません。

ま、新聞の世論形成力の低下は著しいですから、そのうち

    新聞世論形成力保護法
これを新聞族議員に働きかけて成立でも図られるのでしょう。そうなったら管轄は文化庁かな? 一種の伝統芸能みたいなものですから。