奈良大淀病院事件訴訟が確定みたいです

原告側が控訴を断念したの報道が流れています。今朝の段階でざっと調べたところでは伝えているのは1社のようですが、伝えている報道機関からして正しいとかえって信じて良さそうです。この事件が大々的に報道されてから3年5ヶ月、訴訟になってから2年10ヶ月を費やしましたが、ようやく一段落するようです。被告・原告の関係者には様々な思いもあるとは思いますが、訴訟は終結と言う事です。

この訴訟の特徴は様々なものがありますが、当初からマスコミが大きく加担したのは挙げて良いかと思います。センセーショナルな第一報までの経緯も訴訟の証言で明らかにされており、

高崎氏

     記事が載ったのが10月16日か17日かどっちか忘れましたが、その3日前に実香と二人で住んでいた家に新聞記者が突然やって来たんです。「高崎晋輔さんおられますか?」って。新聞記者なんて、僕もその時はびっくりして「いません」って言ったんです。その後父に電話して相談したら、「とりあえず名刺だけ貰っとけ」と言われて、追いかけてとりあえず名刺を貰いました。その後家族みんなで相談して、で父が(ここ1フレーズ聞き漏らし)聞きに行って、で、話だけ聞くことにしました。僕と父と、実香の両親と記者の5人で話をして、その翌日に記事が載りました。
被告側弁護士(金)
     では、結果的に私たちとの話し合いの約束は反故になったのですね?
高崎氏
     ……そうなります。

ちなみに原告と病院側の話し合いは、

  • 2006年9月21日・・・・第1回話し合い
  • 2006年10月10日・・・第2回話し合い
第2回では国循のカルテを取り寄せて第3回の話し合いをする事で合意していましたが、法廷証言にある通り原告側が結果的に反故にしています。なぜ反故になったかは第2回の話し合いの4日後に新聞記者が原告宅を訪問し、2006年10月17日に大々的なスクープとして報道したからなのは説明も不要でしょう。

もう一つ場外戦として話題になったのがカルテ流出疑惑です。カルテの行方については、

被告側弁護士(金)

    カルテはいつもらいましたか?
高崎氏
    9月21日に事務長からいただきました。
被告側弁護士(金)
    もらったカルテというのは、本件で証拠として出ているものに間違いないですか?
高崎氏
    はい。

これが法廷の証言なんですが、当時の記録を確認すると、

日付
カルテの動向
報道記事
2006.9.21遺族がカルテ開示を請求10/18付産経奈良版
2006.10.17病院記者会見10/17付毎日新聞
2006.10.18警察にカルテを任意提出10/19付産経関西


記者会見の翌日にはカルテの原本は警察に任意提出されていますが、一方で報道では、報道各社がカルテのコピーを所有している事は明らかです。明らかな上に全国に向かって報道しています。これに関して、2007.4.30付け日刊スポーツ記事の一部から引用しますが、

遺族側は「報道陣に公開したのは、出産のために入院した昨年8月7〜8日の『看護記録』だけ。カルテなど公開してない。さらされた情報には、遺族も知らない通院中のカルテの内容が含まれ、病院関係者しか知り得ない情報だ」としている。

さらにまた2007.4.28に遺族もシンポジストとした出席したシンポジウムがあり、この録音記録である日々のたわごと・期間限定特別ブログ核心部分、そのいちに原告側弁護士のカルテについての発言があります。

『患者さんの家族はカルテを入手してマスコミに公表してるらしいから、俺たちも公表して良いだろう』ということを書いてあるんですが、あのー、高崎さんの話でまぁ、あったかもわかりませんが、患者さんたちが入手したカルテはほんの一部なんです。全部を入手したのはごくごく最近、なんですよね。

あの大騒ぎは一体なんだったんだろうと今でも思っています。




さてと原告と新聞記者が記者会見前にどういう話し合いをされたかは余人ではわかりません。わかる事は報道と記者会見を行なう事に同意した事です。あれだけセンセーショナルな報道が為されたら、妥協点・納得点を探り合う話し合いの前提が崩壊せざるを得ないのですが、そこまで原告側が理解していたかどうかは不明です。

わかるのは記者会見後の動きです。これも法廷証言からですが、

高崎氏

    で、ある報道の方からある産科医を紹介され、その方から石川先生を紹介されました。で、(石川先生に相談したところ)正式に3回目の話し合いをしたほうが良いといわれて申し込んだのですが、個人攻撃になると言って断られました。
原告側弁護士
    それはいつですか?
高崎氏
    11月下旬です。

訴訟が終了していますから、細々した事に突っ込むのはもう良いと思いますが、とにかく報道はこの事件に大きく加担している事だけはわかります。私がシミジミ思うのは加担した成果が非常に乏しくなっている事です。訴訟は法廷内で争われますが、法廷外の世論は見えない影響を裁判官の心証に及ぼすとされます。

そりゃ、裁判官だって新聞も読めば、テレビも見ます。見た結果が深層心理にまったく影響を及ぼさないとは誰も言えないかと思います。報道であっても直接法廷内に影響を及ぼすのは無理ですが、世論形成と言う部分において大きな役割を果たす事は可能です。ではでは、報道機関が働いた成果はどうだったでしょうか。

個人的には動くたびにボロがこぼれた様に感じています。大々的に動くたびにボロがこぼれて、原告擁護の世論が形成されるというよりも、むしろ逆効果になったように思っています。動き方が非常に雑で、雑な部分を猛烈に突っ込まれて炎上を繰り返すパターンです。これは報道側の意識が「この程度で世論誘導は楽勝」と信じきっていたためと思われてなりません。

いや、これまではこの程度の雑な動きで必要にして十分だったのかもしれません。必要にして十分であったはずの報道の加担が大失敗に終わったのが、この事件に関する報道のすべてと言えば言いすぎでしょうか。今朝はそんな事を漠然と思っています。