ある有識者記事への感想

2/3付NEWSポストセブン(Yahoo !版)より、

これを読んでの感想です。内容自体についてはssd様の大前が言うなの本文及びコメントで必要にして十分かと思います。二番煎じをやる気も起こりません。その程度の底の浅い思い付きレベルと言う事です。


今日は視点を変えての感想にします。文筆業で食べて行くと言うのは、大変な事だと思っています。あえて喩えればプロスポーツの世界に似ていると思います。サッカーあたりを念頭に置いてもらうと判りやすいですが、食っていくためには能力はもちろんの事、能力を評価するランク付を獲得しないといけません。ランクが直接ギャラに反映する部分になるからです。

ランクも一度獲得しても、能力が落ちるとシビアに査定されます。シビアである理由は、高ランク者のギャラがベラボウであるからです。ベラボウなギャラに相応しい能力がなくなればドライに切り捨てられます。一方で高ランクを獲得すればベラボウなギャラが約束されているので、ランクアップを狙うものの突き上げは強烈で激しい切磋琢磨が生まれる世界でもあります。

文筆業もランクアップに鎬が削られると見ています。この場合のランクはやや狭く取って、本の印税ではなく、コラムなどの原稿料ぐらいに今日はします。高ランクである者は高い原稿料(ギャラ)を取り、ランクが低いと薄謝程度になるぐらいの感じです。ここまではプロスポーツと類似の競争原理が働きますが、文筆業の場合はもう一つ評価基準があるように思います。

それはブランド評価です。トップランクに登りつめると同時にブランド評価も出来上がる感じでしょうか。ブランド評価とランク評価がどう違うかですが、

ランク評価 能力の評価
ブランド評価 客寄せ評価


ブランド評価はプロスポーツでもあります。しかしあくまでも評価の基準はランク評価です。ランク評価にブランド評価が加わるとギャラアップ(その他CMとかの出演料も含めて)につながりますが、いくらブランド評価が高くともランク評価が下がればチームに居場所さえなくなります。ランク評価が下がった時点でのブランド評価の使い道は、言い方は悪いですが現役時代ではドサ回りの客寄せ材料としての評価になります。

ここでランク評価ですが、プロスポーツの場合、どんなに稀代の名選手であっても年齢には勝てません。身体能力は年齢と共に低下するのは誰であっても避けられないのは誰でも知る事実です。身体能力の衰えも、ある程度の期間は経験と技量でカバーしますが、カバーしきれなくなった時にランクは冷酷に下がります。

文筆業の場合はプロスポーツほどクリアカットにランク評価ができないところがあります。文筆業も年齢による影響は必ずありますが、「老いて益々盛ん」の大器晩成型の人物も少なからずいますし、年齢を重ねて新境地を切り開くなんて事も無いとは言えません。長編小説は無理となってもコラムや随想程度なら衰えを見せないなんてケースだってあります。

それより何よりプロスポーツでは参考意見と言うか、付加価値的な位置にあるブランド評価が非常に重いというのも大きいと思います。文筆業ではブランド評価がランク評価と混然と言うか、ランク評価を登りつめてブランド評価が確立すると、ギャラ評価はブランド評価優先になっていると感じています。


そうなるのはプロスポーツと出版業のビジネスモデルの差も大きいと思っています。プロスポーツでは根本原理に勝つ事があります。勝つ事が観客を呼び、これが収益となりギャラに反映されます。これに対し出版業なら出版物が売れることが収益となりギャラに反映されます。どこが一番違うかと言えば、文筆業には直接の対戦相手がおらず、目に見える能力の優劣が簡単には付け難いです。

出版業が高額なギャラを払い原稿を依頼するのは、その内容ももちろんでしょうが、ブランド評価の高い人の文章が存在すると言う点も注目します。購買者があの人の意見を読みたいと思わせる効果です。まったく同じ内容であっても、ランクの低い無名の人物であれば読む気さえ起こらないになるです。ブランドは信用であり信仰にもなりますから、少々出来の悪い文章であっても満足してしまうです。

ですから文章自体のランク評価が落ちても、ブランド評価(客寄せ効果)があるうちは仕事にも困らないという現象がしばしば発生します。


ほいじゃ、文筆業ではブランド評価が高ければランク評価が下がってもいつまでも安泰かと言えばそうとも言えなさそうです。これも良く知らない世界なのですが、ギャラ評価は一度あがるとまず下がらないそうです。ギャラ評価が下がらないのならますます安泰じゃないかと言われそうですが、ブランド評価とは客寄せ効果であり、ブランド評価が下がると今度は仕事が来なくなると言う事です。

チイと話が煩雑になったので整理しておくと、文筆業では、

  1. 能力を磨いてランク評価を上げていく(同時にギャラ評価も上がる)
  2. トップランクに達するとブランド評価が確立する(ブランド評価がギャラ評価になる)
  3. ランク評価が落ちてもブランド評価が保たれているうちはそれなりに安泰(ギャラ評価はそのまま)
  4. 最終的にブランド評価が落ちれば高額ギャラが必要なところからの仕事が無くなる(ギャラに対する見返りが期待できなくなる)
ここでブランド評価が落ちた時に仕事がなくってきてもドサ回りと言う手は残ります。文章を掲載する出版物にも超一流から三流まで格があります。真のトップランカーなら超一流からせいぜい一流までの仕事で食べていけます。ランク評価が落ちて、ブランド評価のみになっても一流クラスでまだ食えます。さすがに超一流ランクはランク評価が下がると難しくなるんじゃないかと思っています。

ブランド評価が落ちてくると一流にも相手にされなくなりますが、一流半や二流であればまだまだビッグネームです。まだまだ客寄せブランドに利用価値を認められると言う事です。一流半や二流がダメなら三流もあります。

そうそうギャラ評価は変わらないとしましたが、これも微妙で、超一流なり一流のギャラ評価が出来あがれば、超一流や一流が原稿を依頼する限りギャラ評価は変わらないとされます。しかし一流半から二流、さらに三流となれば格に応じたギャラ評価に下がるとした方が良さそうな気がします。一流半や二流の相場より高くとも、超一流や一流より安くなり、そこに「お徳感」が生まれるというわけです。


話をもう一度まとめると、今をときめく有名ライターもいくつかに分けられそうに思います。簡単な分類表を作ってみますが、

分類 ランク評価 ブランド評価 ギャラ評価 寸評
新進気鋭 伸び盛り
バリバリ 旬の盛り
大御所 中〜低 一流にしがみつく状態
黄昏 名前だけで仕事が無くなる
ドサ 中〜低 昔の名前の切り売り状態


通常は大御所から黄昏状態あたりでプライドがありますから引っ込む者は多いと思っています。引き際はそれぞれの美学があるのでそれは置いとくとして、カネを出して読む方は大御所以下のものは価値が乏しくなります。大御所でもランク評価が中程度であればまだしもなんですが、低となれば、
    字が並んでいるだけの代物
こうなってしまっては遠からず大御所からも滑り落ちて黄昏、それも飛び越えてドサに落ち込むのも時間の問題のように思います。もっともプロスポーツでも限界と思われたプレイヤーが稀に奇跡の復活を遂げる事があります。文筆業ならプロスポーツより復活の可能性は高いとも思っています。せいぜい精進されるように期待しておきます。