大停電への懸念

電力会社からの電気の供給は水の流れに喩えるとわかりやすいとされます。上流(発電所)から下流の末端(使用者)に滔々と水が流れる様に電気が流れているイメージです。流す電気の量は当然ですが末端の消費量を常に上回る必要があります。上流の発電量が末端の消費量を下回ると、電気が足りなくなるので停電が生じます。

ここらあたりはあんまり詳しくないのですが、供給量が需要量を下回るとまず電圧が不安定になるそうで、続いて広い地域の停電が発生する事になるそうです。水であれば末端からジワジワと水圧不足による断水になりそうですが、電気の場合はそうならずにある時点でドカンと止まってしまうそうです。

私の子供の頃はまだ停電がしばしばあった時代なのでイメージだけはできるのですが、電灯がチカチカし始めたら、ストンと停電になってしまう感じです。夜なら真っ暗になりますが、当時の人間は慣れていましたから、おもむろにローソクがお出ましになりました。

大停電で有名なのは1965年のニューヨーク大停電があり、2003年にも北アメリカ大停電が起こっています。アメリカと日本が同じかどうかの技術的な差は私にもわかりませんが、少なくとも日本で起こらないとは思えません。去年の春に計画停電が行なわれたのは、供給量の不足による大停電を懸念したものだったはずです。


今の日本が供給量の不足による大停電が起こる可能性がある状態にあるのは、誰もが知っていると思います。大停電を避けるために供給側は供給電力の増加、需要側は節電対策を取っていますが、それでも安定した状態になっていないのは御存知の通りです。

供給側は休止中であった火力発電所を再起動させたり、ガスタービンの増設による供給増に努めていますが、原発問題からの供給減少を埋めるにはまだまだ遠いのが現状です。節電対策は粘り強く続けられているとは言え、これもまた限界があるのと、結局のところ何とか保っていると節電意識はだんだん緩むものです。

ここまで大きな破綻なく保ったのは事実ですが、供給量に余裕が無い状態はさほど改善されていません。日によっては、どこか1ヶ所の発電所トラブルがあれば、綱から転げ落ちる地域も現実にあります。

どう見ても電力供給量に余裕が乏しいので、なんらかの供給側のトラブル、需要側の思わぬ消費などの要因が重なれば、いつでもこの日本で大停電が起こる危険性が高い状態にあるとして良いかと考えています。


誤解ないように言っておきますが、私だって大停電が起こって欲しいわけではありません。可能な限り回避して欲しいと祈っていますが、危険性だけは認識しておかなければならないと思っています。

大停電は時に予告無しで突然に起こるとされます。そうなった時にまずうちの診療所ではどうだろうです。幸か不幸か小児科診療所ですから、懐中電灯があれば、その時に診療所に居合わせた患者ぐらいはなんとかなると思います。これも診察と処方箋レベル程度のものですが、懸念されるのは調剤薬局になります。

自動分包機はともかく、秤が動くだろうかの懸念です。小児のクスリはほぼすべて計量しないと調剤できません。電池式ないし、併用方式なら停電時でもまだ対応可能ですが、そうでなければ上皿天秤が必要な世界になります。あるのかな?今度聞いておく事にします。


うちの診療所の事はともかくですが、大停電がもし起こってしまったらどうなるんだろうです。直接の社会的混乱とか社会的損失は今日は置いておきます。関心があるのは大停電後の世論の反応です。停電が起こって「困った」「迷惑した」は共通の感情になるとは思います。ここまでは同じとして次に何を考えるかです。これはあくまでも想像の世界になりますが、

  1. どんな理由があろうと単純に電力会社を攻撃
  2. 自分以外の「無駄な電気」を使っている人間を攻撃
  3. わざと停電させた原発再開の呼び水だとの陰謀論
とりあえずはこれぐらいが思い浮かびます。これ以外に当然の様に起こってくると予想されるのは、
    次の大停電を防止せよ
当たり前の反応で実際に経験したらそうなりますし、幸いにも大停電地域にいなくても経験したいものではありません。ここで考えて欲しいのは、大停電防止は起こった後ではなく、起こる前に予防する方がベターと言うよりベストです。綱渡り状態でもなんとか保っているから「大丈夫」ではなく、綱渡り状態だから、そういう状態を脱するように早急に対策をすべきと言う事です。

早急の対策は言われなくとも関係者は常に考えているはずです。早急の対策で有効性があり即効性があるのが原発稼動です。しかし原発稼動はここで書くだけでも火を吹く議論を呼びかねないものです。当面の停電危機の回避のためであり、大筋として脱原発の基本は変わらない提案としても、袋叩きにされかねないところがあり、現時点では禁じ手に近い状態になっている面があります。

原発稼動が禁じ手となると現実的には早急な対策は事実上無い事になります。そうなれば、早急以外の対策が効果を現すまで、綱から落ちない事を祈るぐらいしか手が無い事になります。個人で出来る範囲として、もうちょっと診療所の停電対策を真剣に考えておくべきかもしれません。ランタンでも買い足そうかな・・・。