日大光が丘病院問題・協会が本音を表明

12/7付東京新聞より、

342床日大撤退の光が丘病院 「4月移行時は50床に」

 日本大学医学部付属練馬光が丘病院(東京都練馬区)の運営を来年四月から引き継ぐ公益社団法人地域医療振興協会」の吉新(よしあら)通康理事長が、本紙の取材に、新規オープンの際には入院患者数を大幅に減らし、稼働病床数を縮小する考えを示した。患者の行き先などをめぐり混乱が生じる恐れも出てきた。

 病院は十七科、三百四十二床。区の医療の中核を担い、特に小児救急は区内の約三分の一の患者を受け入れ、隣接区や埼玉県西南部からの搬送も多い。

 日大は三月末の撤退と同時に医師を全員、病院から引き揚げる方針。区は、協会が現在と同じ病床数、診療科目、医療水準を提供できると患者や住民らに説明してきた。

 これに対し、吉新理事長は「病床が埋まった状態で主治医も看護師もいなくなったら事故が起きる。医療安全上、あり得ない」と話した。三百四十二床の許可は取るが、実際の稼働は「五分の一、十分の一だろう。最初五十床ぐらいで、月ごとに増やしていくだろう」と見通した。

 救急も、最初から今のレベルで受け入れるのは「無理かもしれない」として「周辺のいろんな病院にお願いして可能な限りやるしかない」と述べた。

 患者を減らすには、高度医療が必要な患者は同じ日大の板橋病院(板橋区)で引き取るなど日大の協力が必要だが、区と協会、日大の三者で開いている引き継ぎ協議では、具体的な検討はほとんど進んでいない。

実情としては理解できます。現在の光が丘病院は100人近い医師によって支えられています。この水準を維持して引き継ぐには、やはり100人近い医師をかき集める必要が出てきます。半年ほどでそんな芸当が出来る組織は日本にはないと思います。練馬区が「そうする」と力説しても「できるのか」の疑問は最初からあったとしても良いでしょう。そういう当然の事が表面に出てきたと言う事でしょう。

    吉新理事長は「病床が埋まった状態で主治医も看護師もいなくなったら事故が起きる。医療安全上、あり得ない」と話した。三百四十二床の許可は取るが、実際の稼働は「五分の一、十分の一だろう。最初五十床ぐらいで、月ごとに増やしていくだろう」と見通した。
たぶん地域医療振興協会練馬区に対する立ち位置としては、急遽日大が撤退したので「病院維持」だけは請け負うの立場だったと見て良さそうです。もちろん4月に現行水準になるように「前向きの姿勢で努力する」ぐらいは約束したとは思いますが、あくまでも希望的観測であり、できない時は「いたしかたない」ぐらいの合意はあったと考えられます。無い袖は振れない、嫌なら病院ごと消滅するぐらいです。

この時期に出てきたのは、協会が前向きの姿勢で努力した時間を示すためと見ます。協会が後継になった時点で表明すれば、後継問題自体が進まないので、努力目標が「やはり無理」と確認できる時間として必要であったとするのが妥当でしょう。この先はボールが協会から練馬区に投げられたので、練馬区が住民を納得させる作業に移行すると見ます。区の説明担当者は大変かと思います。

それにしても協会はどれほどの医師数に目途をつけたのだろうと思います。現在でも練馬区と協会の間に覚書が取り交わされているそうですが、練馬区議の池尻成二氏が区議会医療高齢者等特別委員会での覚書に関する練馬区側の答弁を紹介しています。医師数のところだけ引用しておくと、

■医師数について■

 法的、医療法上の医師数というのは、病床の回転率それから外来数といったものによって数字は若干異なってまいりますけれども、概ね、病床利用率が90%、現実今光が丘病院は82〜3%、80切ることもございますけれども、90%。それから外来の診療者数を一日約800人、現在光が丘病院で約800には至っておりませんけれども、高め高めで設定しますと、41〜2人というところが法定で定められている医師数でございますが、当然のことながら、病院の機能を高度に維持していくということにおきましては、少なくともこの倍程度以上は必要になるということで、それが目標と掲げております。

現行の342床を維持するために必要な医療法上の医師数は40人ぐらいと見て良さそうです。これは外来数との兼ね合いもあって計算が単純ではないのですが、35人程度いれば医療法的には342床を維持できると考えても良いかもしれません。もちろん医療法の医師数では高度医療を行うには足りないのは周知の事ですから、35人なり、40人なりが居ただけでは現行水準の維持は不可能です。

必然的に現在より機能水準を落とす事にならざるを得ないのですが、50床とは大胆な提案です。意図としては現在の入院患者をとりあえず全部追い出すと受け取っても差し支えないと思われます。全部追い出した上で、集めた医師数・医療水準に見合った水準の新光が丘病院を再構築したいぐらいの意図としても良さそうです。

そうなると4月時点で協会が目途をつけている医師数は10〜20人程度の可能性も出てきます。協会とて50床の病院のままにしてきたいとは思っていないでしょうし、来年度中に100〜200床ぐらいまで機能回復する意図はあるとは思います。もっとも50床程度の維持なら、10人未満でも可能ですから、4月の時点で確実に目途が立っているのは、まだ「5〜6人」と言う事も十分考えられます。現在は二桁に向かって鋭意努力中でも不思議無いと思います。


日大光が丘病院問題の最大の謎は、なぜに練馬区があれほど日大運営を嫌がったかに尽きるかと思います。日大側が嫌がっていたのは経営負担と、それに対する練馬区の協力姿勢の乏しさだったぐらいに理解していますが、練馬区にとって光が丘病院とはなんだったんだろうです。日大の撤退意図に対して別の落としどころは沢山あったはずです。

とりあえず協会が練馬区にボールを投げたので、新たな展開が始まりそうです。予測としては「たとえ当初は50床になっても、出来るだけ早期に現行水準に戻る様に努力する。無いよりマシと思ってくれ。」で住民に理解を求めていくんでしょうねぇ。練馬区の説明担当者の胃に穴が開かない様に祈っておきます。