ツイッターでの引用は難しいだろうなぁ

だいぶ前に新聞協会の引用条件をお勉強した事がありましたが、今日は復習も兼ねてのものです。お手軽に行きたいのでwikipediaを基本的なソースにします。まず「引用以外の合法な無断利用」があります。えらい表現ですが、引用どころか転載しても構わない条件とすれば良いでしょうか。

  • 一般に周知させることを目的とした転載を禁止する旨の表示がない「行政機関等の名義の下に公表された広報資料等」は、出所を明示すれば、行政機関に無断で説明の材料として新聞や雑誌などの刊行物に転載して構わない。
  • 学術的な性質を有するものでない、政治上、経済上、社会上の時事問題に関する、転載・放送・有線放送を禁止する旨の表示がない、新聞又は雑誌に掲載して発行された論説等も、出所を明示すれば、新聞社等に無断で他の新聞等への転載、放送・有線放送・放送対象地域を限定した「入力」による送信可能化による放送の同時再送信をして構わない。
  • 公開して行われた政治上の演説・陳述又は裁判手続きにおける公開の陳述も、同一の著作者のもののみを編集せずに、出所を明示すれば、著作者に無断で転載等して構わない

ここで無断転載できるものとして、

  • 行政機関等の名義の下に公表された広報資料等
  • 学術的な性質を有するものでない、政治上、経済上、社会上の時事問題に関する、転載・放送・有線放送を禁止する旨の表示がない、新聞又は雑誌に掲載して発行された論説等
  • 公開して行われた政治上の演説・陳述又は裁判手続きにおける公開の陳述
この3つは「無断転載禁」でなく「出所を明示すれば」ば無断転載OKとなっています。ただし新聞・雑誌・テレビ等はまず「無断転載禁」となっていますし、前にお勉強した通り、記事の著作権は可能な限り拡大しようとされているので事実上、無断転載は無理だと思ったほうが良いでしょう。なお無断転載が可能なケースについては文化庁著作物が自由に使える場合wikipedia以外のものについても解説されています。

ただ文化庁のルールにも判り難いところがあって、

時事の事件の報道のための利用(第41条)

 著作物に関する時事の事件を報道するために,その著作物を利用する場合,又は事件の過程において著作物が見られ,若しくは聞かれる場合にはその著作物を利用できる。同様の目的であれば,翻訳もできる。

こう書いてれば報道記事も無断で利用できそうなものですが、

時事問題に関する論説の転載等(第39条)

 新聞,雑誌に掲載された時事問題に関する論説は,利用を禁ずる旨の表示がない限り,他の新聞,雑誌に掲載したり,放送したりすることができる。同様の目的であれば,翻訳もできる。

ここは捻らずに原則41条、ただし39条の条件をクリアしたときと解釈するのが無難なように思います。それと著作権ですが、原則は無断転載禁と書いてなければ転載OKかと言えばそうでなく、逆に「無断転載可」となっていない限り転載不可と解釈します。新聞記事などは、原則として無断転載可であるために、断りとして「無断転載禁」と表示されていると考えたら宜しいかと思います。



さて引用ですが、これは無断転載禁であっても使えます。もう少し言えば無断転載禁については著作者は権利を行使できますが、「無断引用禁」は出来なかったはずです。公開された著作物はすべからく引用は可能と解釈して良いと思います。例外があるか無いかについては存じませんが、引用については、

引用(第32条

  1. 公正な慣行に合致すること,引用の目的上,正当な範囲内で行われることを条件とし,自分の著作物に他人の著作物を引用して利用することができる。同様の目的であれば,翻訳もできる。
  2. 国等が行政のPRのために発行した資料等は,説明の材料として新聞,雑誌等に転載することができる。ただし,転載を禁ずる旨の表示がされている場合はこの例外規定は適用されない。

ここももう少し具体的には、

引用における注意事項
 他人の著作物を自分の著作物の中に取り込む場合,すなわち引用を行う場合,一般的には,以下の事項に注意しなければなりません。

  1. 他人の著作物を引用する必然性があること。
  2. かぎ括弧をつけるなど,自分の著作物と引用部分とが区別されていること。
  3. 自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること(自分の著作物が主体)。
  4. 出所の明示がなされていること。(第48条)(参照:最判昭和55年3月28日 「パロディー事件」)

引用部分の区別とか、出所の明示は引用を少しでも念頭に置かれる方ならされているかと思います。ちょっと注意と思ったのは48条2項で、

前項の出所の明示に当たつては、これに伴い著作者名が明らかになる場合及び当該著作物が無名のものである場合を除き、当該著作物につき表示されている著作者名を示さなければならない。

著作者名は明示しておく必要があります。私もしばしば忘れたり飛ばしたりする事がありますから注意する事にします。ネットで引用するときには、ググって引っかかったページが大きなページの一部で著作者名がわかりにくいケースが少なくないんですが、出来るだけ調べる様にします。

引用するに当たってもっとも難関なのは、引用部分と著作物の主従関係です。wikipediaには、

ただし知財高裁平成22年10月13日(鑑定証書カラーコピー事件)判決においては主従関係は要件とされていない。

こういうのもあるそうですが、この判決ひとつで主従関係がフリーになったとするのは危険でしょうから、やはり主従関係の条件も満たしておいた方が無難です。主従関係には質と量の2つの条件がありますが、とりあえず量を満たすのが目的になります。質の評価はそれこそ訴訟物じゃないかと思ったりしています。

そこについてですが、一番良く引用されやすい新聞記事を例にするのが参考になると思います。新聞協会のネットワーク上の著作権についてより、

引用には、報道、批評、研究その他の目的に照らして、対象となった著作物を引用する必然性があり、引用の範囲にも合理性や必然性があることが必要で、必要最低限の範囲を超えて引用することは認められません。また、通常は質的にも量的にも、引用先が「主」、引用部分が「従」という主従の関係にあるという条件を満たしていなければいけないとされています。つまり、まず自らの創作性をもった著作物があることが前提条件であり、そこに補強材料として原典を引用してきている、という質的な問題の主従関係と、分量としても引用部分の方が地の文より少ないという関係にないといけません。

これを読めばわかるように、量の必要条件は、

    分量としても引用部分の方が地の文より少ないという関係にないといけません
引用部分より多いことが量の主従関係を満たす条件として良さそうです。



ここまでのお話は常識的な部分が多いのですが、ブログであれば引用条件を守るのはやろうと思えば可能です。私も出来る限りの範囲で引用条件を守ろうと努力しています。問題はこれがツイッターでも可能かです。正直なところ非常に難しいと思います。理由は言うまでもなく字数制限があるからです。140文字で出所を明らかにし、量の主従関係を成立させるのは容易ではありません。

もちろん不可能ではなく、引用部分を短くすればOKなんですが、まとめ形式となると、誰かが角を立てればすぐに問題になります。ツイッターのまとめは引用と言うより転載に近くなりますし、まとめの冒頭に紹介文章を書いてもとても引用条件を満たす量にはまずなりません。もちろん転載・引用された著作者が文句を言わなければ問題ないのですが、まとめは好意的なものばかりとは言えませんから、問題化すればまず沈没で良いかと思います。


著作権は著作者に与えられた権利であり、それなりに日本でも保護されています。こんな場末のブログであっても、メジャー・マスコミでさえ無断で転載できないのが著作権です。引用のルールも、これを守る限りいかなる公表文書であっても引用できるのもまた著作権です。著作権法に違反する引用・転載であれば、どんなに趣旨が正しかろうが、著作者がその権利を主張すれば従わなければならないのも著作権としても良いかと思います。

もう一つポイントは、著作権は著作者が権利を主張しなければ転載も引用も自由にできます。つまり著作者の腹一つで、転載を許す時もあれば、許さない時があっても構わないわけです。そんなに著作権に詳しいわけではありませんが、私はそう理解しています。


リンクの知識のアップデート

ついでですから、リンクはどうなるかだけ知識として追加しておきます。これは社団法人日本著作権情報センター無断でリンクを張ることは著作権侵害となるでしょうか。からですが、

リンクを張ることは、単に別のホームページに行けること、そしてそのホームページの中にある情報にたどり着けることを指示するに止まり、その情報をみずから複製したり送信したりするわけではないので、著作権侵害とはならないというべきでしょう。

「リンクを張る際には当方に申し出てください」とか、「リンクを張るには当方の許諾が必要です」などの文言が付されている場合がありますが、このような文言は道義的にはともかく、法律的には意味のないものと考えて差し支えありません。

こうはなっているのですが、経済産業省電子商取引及び情報財取引等に関する準則ではやや微妙な色彩になり、「他人のホームページにリンクを張る場合の法律上の問題点」として原則論は、

インターネット上において、会員等に限定することなく、無償で公開した情報を第三者が利用することは、著作権等の権利の侵害にならない限り、原則、自由である

こうする一方で、

  1. 不法行為に基づく責任
  2. 不正競争防止法に基づく責任
  3. 商標法に基づく責任
  4. 著作権法に基づく責任が発生する
この4つの責任が生じる可能性を指摘しています。このため4つの設問をモデルとしてあげ、その解釈を示しています。少し長いですが表にしてまとめておきます。

設問 解釈
わいせつな画像等をアップしているアダルトサイト運営者が、当該サイトのメンバーであるなどとして、女性の主催する店舗や個人等のホームページのフロントページに、無断でリンクを張る場合 リンクという手段を用いてリンク先の名誉や信用を毀損する行為と解され、リンクを張られたサイトの運営者側は、民事上は不法行為責任として損害賠償を請求できる可能性がある。また、刑事上は名誉毀損罪、信用毀損罪等が成立する可能性があるとともに、態様によっては著作者の名誉声望を害するものとして著作者人格権の侵害(著作権法第113条第6項)となる可能性があるものと考えられる。
反社会的団体が、自己の団体の関連企業であるなどとして、善良な企業のホームページに無断でリンクを張る場合
自己のホームページを有名な大手企業の関連会社のページであるとの誤解を与えて利益を得ようと考えて、大手企業のホームページへ(「関連企業情報はこちら」等といった誤解を誘うような方法で)無断でリンクを張る場合、無関係の企業に対して、傘下の企業であるとか代理店であるとしてリンクを張る場合、無関係の個人が傘下の人物であるとしてリンクを張る場合等 リンク元のウェブページに、「関連企業情報はこちら」、「リンク先の企業は弊社傘下の代理店です。」、「この人は当社の関係者です。」等といった誤解を誘う表示とリンク先の企業を特定する名称等が表示されるものと考えられるが、これらの表示は、リンク先と関連会社であるとの誤解を与えて不正の利益を得、又はリンク先に損害を被らせる蓋然性の高い場合には、名誉権又は氏名権等の侵害、信用毀損を根拠として不法行為責任が問題となる可能性があると考えられる。また、リンクを張る際に、競争関係にあるリンク先の企業の営業上の信用を害する虚偽の事実を表示した場合には、不正競争行為に該当する可能性があると考えられる。
企業のホームページのロゴマークに、インラインリンクの態様でイメージリンクを張って、自らのホームページが当該企業と関連する企業であるかのように、その商品又は役務について使用する場合 リンク先のロゴマークなどにのみインラインリンクを張る場合であり、リンク先の「商品等表示」のみがリンク元において表示されることになる。このため、周知なロゴマークを、リンク先の企業の関連会社であるかのような営業主体の誤認混同を招くようなかたちで使用する場合や、自分の企業のロゴマークとして他人の著名なロゴマークなどを使用する場合には、不正競争行為に該当する可能性があると考えられる。

また、当該ロゴマークが他人の登録商標である場合、自らのホームページ上で、当該登録商標をその指定商品又は指定役務について使用すると、その使用態様によっては、商標権侵害となる場合がある。


正直なところ色んなリンクをする人がいるもんだと感心しますが、こういうケースは訴訟に持ち込まれたら「危ないぞ」ぐらいに考えます。それでも私の解釈的にはリンクは原則自由であるが、無制限の自由では必ずしもなく、あまりに捻った使い方をすれば、時に刑事及び民事の責任を問われる可能性があるぐらいに取りたいところです。

ところが経済産業省は原則自由の面よりも、責任問題を重く取っている様で小括として、

リンクの法的な意義については、必ずしも明確な理論が確立しているわけではなく、無断リンクを巡って、様々な紛争が生じている現状を考慮すると、「無断リンク厳禁」と明示されているウェブページにリンクを張る場合には、十分な注意が必要である。

なんとなく「なるべくやめときなはれ」みたいな姿勢に見えないこともありません。ざっと調べただけですが、リンクについては企業も官庁も制限したい方向性が強いようで「原則として許可を求める」みたいな断り書きをするとことが少なくないようです。しかし日本著作権情報センターも、電子商取引及び情報財取引等に関する準則でもリンク自体にはなんらの違法性はないとしています。

どうもなんですが「リンクの自由」については正面から取り締まるのは現実的には難しいようですが、官庁や企業サイドは非関税障壁みたいなものを空気として作り上げようとしている様には見えます。そういう動きに対して「リンクは自由」の原則を強く主張する論者の勢力も大きく、なかなかの論争になっているようにも感じます。

「リンクは自由」の原則は変わらないにしろ、これにテンコモリの但し書きをつけて実質として許可制にしたい規制派勢力と、そういう制限を極力小さいものにしたい反規制派勢力の争いと見ても良いかもしれません。

私の主観が強くなってしまうのですが、報道記事も原則は無断転載可ですが、自由に「無断転載禁」を無制限に行える権限がセットになり、事実上は無断転載禁みたいな方向にしたいのが規制派、それはネットと言うメディアを絞め殺す所業になると主張するのが反規制派ぐらいに思えるところです。

どうなっていくかは時々アップデートしておいた方が良いかもしれません。