愛知の高校の節電対策

こういう話題に適切な5/30付タブ(Yaohoo !版)より、

<節電>「県立校は冷房止めよ」 知事指示に愛知県教委困惑

 夏場の節電を陣頭指揮する大村秀章・愛知県知事が県立学校での冷房の停止を指示したことに対し、県教委が困惑している。県立高校に設置されたエアコンのほとんどは、公費ではなくPTAの寄付金などで設置され、電気代もPTAなどが負担しているのが実態。「知事の気持ちは分かるが、強権発動は難しい」(幹部)というわけだ。

 大村知事は、中部電力浜岡原発の全面停止によって電力需要がピークになる時間帯の節電を呼び掛けたのを受けて対策を指示。24日の部長会議で「こんなに細かいことまで、という部分も含めて(対策を)積み上げたい」と述べた。その際、「照明がなくてもノートは取れる、と思わんわけでもない」と自らの学生時代をふり返り、「学校は(冷房などを)全部切ったれ」とはっぱをかけた。

 だが、実際はそう簡単ではない。県教委によると、県立高149校のうち、県の支出で教室に冷房が設置されているのは2校のみ。90校では県の財源不足にしびれを切らし、各校のPTAが寄付金を集めて07年から順次冷房を設置している。

 県が冷房を設置した2校は、騒音や排ガスで窓が事実上開けられない。特別支援学校にも冷房があるが、体温調節ができない生徒もおり、いずれも冷房の停止は難しいという。

 県教委の幹部の一人は「こちらはあくまで各校ごとに協力をお願いする立場。知事は現場の実態がまだお分かりになっていないのかもしれない」と話す。【三木幸治】

夏季の節電対策を知事が陣頭指揮を取って行われている御様子です。方針の基本は、

    「こんなに細かいことまで、という部分も含めて(対策を)積み上げたい」
それでもって打ち出された細かい対策が、
    県立学校での冷房の停止を指示
タブを信じればになりますが、「一律」の「指示」はもう発せられた御様子です。知事の方針を弁護しておくと、
    県立高149校のうち、県の支出で教室に冷房が設置されているのは2校のみ。90校では県の財源不足にしびれを切らし、各校のPTAが寄付金を集めて07年から順次冷房を設置
愛知の県立高のうち57校は今でも冷房なしで授業が続けられている訳であり、57校が可能なら、他も電力不足と言う緊急事態ですから協力するべきだは筋としては通ります。ただ高校と言っても設置された場所によって環境は変わります。ある事が必要な高校と、なんとか耐える事が出来る高校についての調査や考慮はどれぐらい為されているかです。記事にある例なら、
    県が冷房を設置した2校は、騒音や排ガスで窓が事実上開けられない
夏場に窓さえ開けられない環境は素直にチト厳しそうに思いますが、県が設置している2校は一番指示が強力に及ぶところですから、とりあえずどうするのだろうです。その辺についての知事のお考えはタブらしい表現で記事になっています。
    「照明がなくてもノートは取れる、と思わんわけでもない」と自らの学生時代をふり返り、「学校は(冷房などを)全部切ったれ」とはっぱをかけた。
実はこの記事の知事発言も良くわからないところがあるのですが、今どきの高校は昼間でも照明をつけるのでしょうか。私も高校時代ははるか昔になってしまったので記憶が曖昧ですが、よほど天気の悪い日以外は照明はつけなかったように思います。それと照明が必要なぐらい暗い状態でノートを取ると、視力に悪影響を与えます。

今どきの高校の照明事情を確認する術がないのですが、編集の都合か、話は照明から冷房にいきなり展開します。かなり唐突な印象を受けるのですが、「一律」で高校の冷房を切る話に結論されている様に読めます。もう少し、この間に知事のお言葉・お考えがあったはずだと私は考えています。たとえば愛知県のHPにある知事からのメッセージには、

 電力需要は、夏の平日の昼間にピークとなります。今夏は、特に月曜日から水曜日の昼間時間帯(午後1時から4時)の電力供給が、極めて厳しい状況になると予想されております。

 私としましては、過度な節電は返って経済の回復を妨げてしまう懸念がありますので、電力消費量がピークとなる時期に合わせたスマートな節電を呼びかけてまいります。その一方で、この地域の強みであるものづくりの技術を生かし、次世代産業の礎となる省エネ技術や新エネルギーの創出を進めていきたいと考えております。県民の皆様には、こうした趣旨をご理解いただき、ご支援とご協力をいただきますようよろしくお願いを申し上げます。

電力消費時のピークに合わせた「スマートな節電」を呼びかけておられます。さらに節電の時間帯のターゲットも明瞭に把握されており、

    今夏は、特に月曜日から水曜日の昼間時間帯(午後1時から4時)の電力供給が、極めて厳しい状況
この時間帯以外なら「過度の節電」になりかねないと言う事です。それでもって節電をとくに奨励する期間ですが、愛知県庁の今夏の省エネ・節電アクションプラン(第1弾)には、まず知事のメッセージにあわせるように、

〜「ピークカット」に重点を置いて、電力を賢く使う「スマート・ユース」で今夏を確実に乗り越える〜

もう少し具体的には、

愛知県庁の本庁舎・西庁舎・自治センターでは、普段からの省エネ・節電の取組(「愛知県庁の環境保全のための行動計画」など)に加え、電力使用が増える時期に照準を合わせて、「7月〜9月 月・火・水曜日 13時〜16時」(取組集中期間)において、取組を強化する。

ちゃんと知事からのメッセージにあわせて、

  1. 期間は7〜9月
  2. 曜日は月・火・水
  3. 時間帯は13時〜16時
こう明記しています。高校の冷房問題を考慮するのであれば、この基本方針に合わせて取り組むべきかと私は思います。知事のお言葉として「こんなに細かいことまで」があるのですから、細かいところまで考えての「スマートな節電」を私なりに考えてみます。


前提条件は県の方針・知事のお言葉として明示されています。要するに7〜9月の月・火・水の午後の冷房を止めれば目的は果たせます。他の時間帯は支障が無いと、この場合させて頂きます。もう一つの前提は冷房が設置されているぐらいですから、夏の暑さは授業を行うのに耐え難い状態であるとします。もちろん耐えられる高校は冷房を止めて授業を行えば良いことになります。

そうなれば節電対策として、

  1. 7〜9月の月・火・水の午後の授業を中止する
  2. 中止した授業をどこかで補う
もう一つ条件として、ある種の非常事態ですから、ある程度の負担は節電のためにやむを得ないです。対策の重点は「快適な授業時間の確保」とすれば宜しいかと思います。では現実的にどれぐらいの授業コマ数が影響を受けるかです。これは仮定になりますが、
  1. 夏休みは7/21〜8/31とする
  2. 授業コマ数は午前4コマ、午後2コマとする
対象期間をカレンダーで確認すると、
  1. 7月は7日間計14コマ(7/20は終業式で授業はないのものとする)
  2. 9月は11日間22コマ
計36コマをその他の曜日の授業で補う事になります。案として考えられるのは、
  1. 土曜授業を行う(7〜9月の土曜日は計7日)


    • フルで授業を行えば6日間で補える
    • 半日授業であれば10月にさらに2日間の授業が必要


  2. 火・水(祝日の関係あり)の授業をすべて土日に置き換える。この場合は5日間計10コマの不足が生じるので土曜授業を3日間行う。


  3. 夏休み削減案。夏休み冒頭部と末尾部に分ければ授業との連続性が確保しやすいと思います。
夏休み削減案ですが、リストにするには話が細かいので補足しておきます。ここにはさらなる前提が必要で、終業式、始業式には授業がない(通常スケジュールでは)とします。まず夏休みの冒頭部ですが、
  1. 7/20は元は終業式であり、水曜日だから4コマ確保
  2. 7/21、7/22は木・金だから6コマづつ計12コマ
  3. 7/25は2コマ授業の後、終業式にする
これで計18コマ確保できます。末尾部は
  1. 8/26に始業式
  2. 8/29〜8/31は月・火・水のため4コマづつ計12コマ
  3. 9/1は元は始業式だったので6コマ
これで計18コマ、冒頭部とあわせて計36コマ確保できます。


3つ挙げた案の中で一番支障が少ないのは夏休み削減案です。土日を活用するとクラブ活動に支障が生じやすく、これはこれで困る高校生はおられるかと思うからです。私が考えたぐらいの事は、知事だって十分「細かく」考慮されたはずですが、そうやって「細かく」考えた末の結論として

    「学校は(冷房などを)全部切ったれ」
本当にこうなられたのでしょうか。もっとも、あれこれ「細かい」節電対策を考えましたが、高校生以外に影響や被害が少なく簡便な節電対策は「冷房無しの夏の授業」です。「全部切ったれ」とぶち上げておいて、後の折衝で例外を認める計算と読めない事もありません。そうしたって冷房のない高校からは苦情はでませんし、さらにこの機会に「そもそも高校生に冷房は贅沢だ」の声が出れば、
    90校では県の財源不足にしびれを切らし
この高校への冷房設置の動きを財政的観点から抑制できます。風の噂に聞く愛知の教育風土は、そういう結論に容易に傾きやすいともされますが、真相はどういうものかはちょっとだけ興味があります。どうしても県外の人間としては「あの知事だから」で思考停止に陥りそうなので、少しだけ粘ってみました。