これも震災被害だろうなぁ

まず4/24付朝日新聞についている表を引用します。裏づけはググっても無理でしたので信用するとして、少しデータを付け加えて紹介しておきます。

診療圏 病床復旧率 総病床数 復旧病床
久慈 100% 746 746
宮古 95% 1425 1354
釜石 56% 1050 588
気仙 90% 1255 1130
気仙沼 82% 745 611
石巻 74% 2039 1509
仙台 88% 16726 14323
相双 14% 2723 381
いわき 79% 5305 4191
78.7% 31564 24832


病床はすべての病床数を含めたもので、医療圏ごとの検証もしたかったのですが、到底無理で辛うじて判明した釜石医療圏のみ紹介しておきます。

病院名 一般 療養 精神 合計
県立釜石病院 272 0 0 272
国立病院機構 180 0 0 180
県立大槌病院 119 0 0 119
せいてつ記念病院 119 0 0 119
釜石のぞみ病院 52 102 0 154
釜石厚生病院 0 0 204 204
合計 742 102 204 1048
休止病床 359 102 0 461
復旧病床 383 0 204 587


このままで良いわけがないので朝日記事より、

厚生労働省は今年度の補正予算案で、病院を復旧させる費用や仮設診療所の設置の補助金を盛り込んだ。 担当者は「今後は通院や入院の機能をどう回復していくかが課題だ。地域医療の再建はまちづくりの全体構想と併せて、地元の取り組みに応じた支援を考えていく」と話している。

病院の建物の復旧費用の補助金補正予算で組み込むようです。さて問題は建物の復旧や再建も重要ですが、働く医療者も必要です。箱が出来ても医師がいない悲劇は被災地でなくとも起こっています。とくに今回の被災地は震災前から医師不足が深刻とされている地域が多く、そういう地域で頑張ってくれている医師を食い止めるのも重要かと思います。

これは4/21付読売新聞からですが、

 東北大病院(宮城県仙台市青葉区)の里見進院長は20日、大震災の影響で県内の同大関連病院の医師66人が働く場を失っていると明らかにした。大半の医師は自力で再就職先を見つける意向だが、県内から医師が流出する恐れもある。同大は県内での再就職先あっせんなどの検討を始める。

 東北大の医局から多くの医師が派遣されている石巻市立病院が津波被害を受けて診療を休止するなど、石巻気仙沼市などの三陸沿岸を中心に主な病院が休診している。里見院長によると、関連病院だけで計723床が使えない状態になっている。石巻市雄勝病院の医師2人は死亡した。

東北大がどのぐらいの範囲に派遣病院を持っているかなんて知る由もありませんが、病院機能が低下した病院は、復旧まで医師を抱えておく余力も無くなっているようです。まあ、抱えておく気が、そもそもあったかなんて皮肉がコメ欄に来そうな気がしないでもありませんが、この記事の表現が正しければ医師は都合により辞職したのではなく、

    働く場を失っている
こりゃクビになったとした方が良さそうです。医師も食っていかなくてはなりませんから、元の病院に愛着があっても再就職先を探さなければなりません。東北最大の都市の仙台も大きな被害を受けていますから、再就職先は被災地外にならざるをえないでしょう。医師の方はその気になれば、全国どこでも再就職先に困りません。大都市から僻地まで選り取り見取りです。

それと気になるのは

    大半の医師は自力で再就職先を見つける意向
医師ならわかると思いますが、東北大の医局人事から外れると言う事です。つまりは東北大の医局人事から中堅どころが、かなり抜け落ちる可能性が十分にあると言う事です。いかに東北大でも少々厳しい数の様に感じます。これも後遺症が尾を引きそうな震災被害のように感じます。


最後に全然違う方向性の数字を示しておきます。都道府県には医療計画と言うのがあって、基準病床数と言うのが決定されます。本来はその地域に必要な病床数の目標を定めたものですが、現在は病床削減数の指標となっています。岩手のものがあったので紹介しておきます。時期がやや曖昧なのですが、2007年とそれを2008年に見直したもののようです。表にしてまとめておくと、

病床の種別 圏域 現病床数

(2007.9.30)
2007年案 2008年案
療養及び一般病床 盛岡保健医療圏 6425 5229 5723
岩手中部保健医療圏 2097 1635 1828
胆江保健医療圏 1537 1538 1743
両磐保健医療圏 1227 1175 1357
気仙保健医療圏 640 640 721
釜石保健医療圏 826 471 519
宮古保健医療圏 821 677 766
久慈保健医療圏 588 364 395
二戸保健医療圏 582 399 399
合計 14743 12128 13451
精神病床 県の区域 4796 4526 4497
感染症病床 県の区域 38 40 40
結核病床 県の区域 216 126 126


基準病床数がえらく上下していますが、2007年案では一般・療養病床を18.0%削減する計画であった事がわかります。2008年では8.8%削減に緩和されていますが、釜石医療圏の復旧率を2007年案で見ると81.3%、2008案でも73.8%になる事がわかります。岩手が2008年案の基準病床に削減すれば、病床減少数は1292床になります。

単純比較は出来ませんが、読売記事では東北大の関連病床が726床減少して66人の勤務医が職にあぶれたそうですから、今後の適正化・効率化を考えると無理に引き止める必要性は案外乏しかったのかもしれません。