まず病院の前景写真です。
この病院の医師数及び経営状態がどう変化したかは、県立三島病院を守る会「県立三島病院」民間委譲の核心にあります。
年度 | 常勤医師数 | 稼動病床数 | 総収益 (百万円) |
当期純損益 (百万円) |
累積純損失 (百万円) |
減価償却 +支払利息 (百万円) |
1999 | 21 | 200 | * | * | * | * |
2000 | 19 | 160 | * | * | * | * |
2001 | 20 | 160 | * | * | * | * |
2002 | 20 | 160 | * | * | * | * |
2003 | 20 | 160 | 3031 | 220 | 7228 | 457 |
2004 | 17 | 150 | 2671 | 425 | 8152 | 444 |
2005 | 16 | 150 | 2820 | 350 | 8502 | 432 |
2006 | 15 | 150 | 2598 | 324 | 8827 | 421 |
2007 | 13 | 150 | 2115 | 568 | 9395 | * |
2008 | 9 | 110 | * | * | * | * |
2009 | 9 | 110 | * | * | * | * |
地方公立病院の崩壊の一つの例と言えばそれまでですが、2003年まで20人いた常勤医が2009年には9人まで減っている事が確認できます。でどうなったかですが、総務省主導の公立病院改革の方針に従い民間委譲となっています。民間委譲の受け入れ先が公立学校共済組合です。愛媛の医療事情に詳しくないのですが、公立学校共済組合は四国中央病院(259床)を経営しており、その分院と言う形態になっています。
2010年4月から四国中央病院分院の三島医療センターになったのですが、現在の規模です。
〔 稼動病床数 〕 59床 〔4階病棟〕(一般55床 感染症4床)
〔 標榜診療科 〕 内科・循環器内科・呼吸器内科・整形外科・放射線科
医師数についてはセンター長のご挨拶が参考になりますが、
三島医療センターは入院病床59床のセンターとしてスタートしました。内科常勤医2名で、外来には県立中央病院と四国中央病院からそれぞれ2名の応援を得ています。整形外科は四国中央病院からの応援で月・水・金曜日の外来を行っています。また、県立中央病院からの応援で、四国中央病院での受け入れ体制が整うまでを目途に透析治療も行っています。入院は内科を中心に受け入れています。診療機器については、旧・三島病院の機器を引き継いでいますので、非常に恵まれた状態にあります。CTやMRIなどを始めとして、必要な検査はほとんど何時でも出来ます。このような環境の下で職員全員が研鑽をして患者さんに満足していただける質の高い医療を提供し続けることが、三島医療センターの目標です。
物は言いようで、内科常勤医2人ですが検査機器は200床規模の病院を受け継いでいますから「恵まれている」の言葉は嘘では無いでしょう。もう少し勤務医医師の詳細を確認すると、
診療科 | 常勤 | 非常勤 |
内科 | 2 | 3 |
整形外科 | 0 | 2 |
常勤の内科医はセンター長と副センター長で、1978年及び1974年の医師免許取得です。お写真で見させてもらう限り、かなりのベテランの医師である事だけは確認できます。検査機器は恵まれていても、この陣容ではさしての高度医療は無理なのは誰でもわかります。では高度医療は無理としても救急医療はどうなのかになります。センター長のお言葉です。
また、救急医療に対応することも大切ですから、救急にも出来るだけ積極的に対応することにしています。
規模が小さくなった状況では出来ることに限りがあります。時間外の救急に対応出来ないなど、地域の中で三島医療センターは求められているものに十分には応えられていないということは感じています。しかし、三島医療センターは己の身の丈を判断しつつ全力を尽くしていきたいと思っています。
正直なところ、この規模で救急医療は無理があると思います。「身の丈」を判断しつつは良い言葉だと思いますが、少なくとも県立病院時代のような救急対応は無理な事ぐらいはすぐにわかります。県立病院時代末期の常勤医9人でも無理がありましたが、センターになってからは、ベテラン内科医2人にさらにやせ細っていますから、出来ることの範囲は狭まって当然です。
この三島医療センターの救急問題は、民間委譲に伴うお決まりの騒動の中で一つの焦点になっています。宇摩圏域医療再生協議会での経緯と言うのが県立三島病院を守る会がまとめていますから、チト長いですが引用します。
年 | 月日 | 事柄 |
2009 | 8/7 | 県立三島病院の民間移譲方針決定 「県立三島病院は民間に移譲し、地域医療再生基金を有効に活用することにより、民間病院主体の「中核病院の形成」を図る」 |
8/17 | 第一回宇摩圏域医療再生協議会 | |
9/1 | 民間移譲先を公募 「地域医療確保の提案書」提出を求める三島病院が担ってきた二次救急医療の確保を「絶対条件」とした | |
9/27 | 移譲先事業者(優先交渉権者)四国中央病院に決定 | |
10/1 | 第二回宇摩圏域医療再生協議会 三島病院の移譲に不満、委員から異論続出「民間移譲に納得しない病院代表は『あくまで今の三島病院を再建するのが先』との意見を崩さず『このまま医療崩壊推進協議会になるようなら、委員を辞退したい』と言い切った。」 |
|
10/5 | 第三回宇摩圏域医療再生協議会 地域医療再生基金22 事業案を採択(総事業費約95 億円の内、約22 億円分を国からの特例交付金を基金として、2009年度から5年間、地域医療再生事業に支出) (付帯意見書)地域医療再生計画案(事業提案書)の付帯意見として県に提出 1.三島病院での二次救急機能の維持に最大限の努力を求める 2.公募での中核病院を形成する将来計画(実施時期)を示すことを求める |
|
10/20 | 加戸知事は「知事陳情」(新居浜市)の席で、井原四国中央市長の要望に対し、「三島病院で救急を担う医師を確保するのは極めて高いハードル。要求自体が(医療再生の)構想を壊すことにならないか」と厳しい見方を示した。 | |
10/29 | 第四回(最終)宇摩圏域医療再生協議会 県の対応は「四国中央・石川2病院基盤強化、二次救急機能の存続に努力する」と説明 |
|
11/5 | 「宇摩圏域地域医療再生計画(案)」を添えて、県が国に交付金申請書提出 | |
2010 | 1月頃 | 「地域医療再生臨時特例交付金」厚生労働省交付決定の見込み |
2月頃 | 県立三島病院廃止条例提案・民間移譲正式契約締結 |
地元サイドが二次救急にかなり拘ったのが確認できます。そいでもってどうなったかです。愛媛県が作成した宇摩圏域*地域医療再生計画を参考にして見ます。色々書いてあるのですが「二次救急医療等を担う中核病院の形成」をつまみ食いしてみます。まず目的として、
このため、近年、医師不足の深刻化等により診療機能が大幅に低下し、維持・存続が困難な状況にある県立三島病院に残された医療資源(医療従事者、医療機器、病床等)を、圏域内の他の二次救急病院に分割移譲し、これら病院の医療機能を質・量ともに向上させることにより、二次救急医療の維持はもとより、高度・専門医療への対応や医師の定着化等が可能となる複数の中核病院を新たに形成する。
ここは県立三島病院を解体して他の二次救急病院への補充にするとなっています。これは現実にそうなっています。その次の取り組みの概要が興味深いのですが、
- 「公的医療機関等の再編に係る病床の特例制度」を活用し、県立三島病院(183床)の一般病床を、圏域内の二次救急輪番参加病院である四国中央病院(259床)と石川病院(153床)に振り分け、それぞれ一般病床の増床を行う。
- 四国中央病院は、県立三島病院の建物・施設等の譲渡を受け、同病院を新たに「三島医療センター」(仮称)として改修した上で、増床後の四国中央病院の分院として位置付け、両病院の一体的な運営に努めることにより、診療機能の強化や医師の集約化を図る。また、将来的には、本院を「三島医療センター」(仮称)の場所に移設・統合することにより、名実ともに350床規模の中核病院の形成を目指す。
- 石川病院は、増床により総病床数250床程度まで規模拡充を図ることにより、基幹型臨床研修病院の指定要件である、「年間患者受入数3,000人以上」を満たすことのできる中核病院として、地域医療に一層の貢献を行う
ちょっと複雑なプランのようで、
-
第一段階:県立三島を解体し、四国中央病院と石川病院を強化する
第二段階:四国中央病院を旧県立三島の跡地に新設・移転する
これなら民間委譲され、さらに機能を四国中央病院に集約したら、常勤医2人の三島医療センターは二次救急から外されても致しかたなさそうな気がします。ところがなんですが、三島医療センターはこの縮小された体制で二次救急を行っているようです。1/26付読売新聞より、
愛媛県四国中央市中之庄町の三島医療センターで昨年12月の夜間、2次救急当番だったにもかかわらず、救急隊の急患受け入れを要請する電話に出なかったことがわかった。
急患の70歳代女性は市内の別の病院に運ばれたが死亡。同センターは「警備員が警備員室から、事務員が詰めている事務当直室に電話の受信を切り替えないまま巡回に出たのが原因」とし、両室で電話を受けられるようシステムを変更したとしている。
同センターや同市消防本部によると、救急隊は12月7日午後6時3分から同5分まで計3回、心肺停止状態の女性を搬送するため、センターへ入電。しかし、電話に出ないため、14分かけて別の病院に搬送したという。
センターは2010年4月から、公立学校共済組合が運営。医師、事務員、警備員各1人と看護師2人の計5人態勢で夜勤を行っている。これまで両室で電話を受けるようにしていなかったことについて、センターは「治療中の場合、当直室に電話がかかってきても、多忙のために電話に出られない可能性が高いため」と説明している。
電話云々の話は今日は置いておきます。注目しておきたいのは、
-
昨年12月の夜間、2次救急当番
-
14分かけて別の病院に搬送
どこに搬送したかの話はともかく、常勤医2人体制でも二次救急を続行していたのは、やはり民間委譲に伴う協議会での約束の履行のためでしょうか。それぐらいしか理由が思い当たらないような気がします。なんとなく協議会への義理のために1年ぐらいは二次救急の「存続を努力」をさせて、その後「維持困難」ぐらいで「再編」するつもりの様に感じています。
集約化も政治が濃厚に絡みますから、大変な事だと痛感させられます。