1/22付読売新聞より、
新聞「欠かせない」56%…メディア世論調査
公益財団法人「新聞通信調査会」は22日、メディアに関する全国世論調査の結果を公表した。
情報源としての重要性に関する質問(複数回答)では、新聞を「欠かせない」とする人は56・0%と最も高く、民放テレビが50・0%、NHKテレビが47・6%と続いた。インターネットは、34・1%だった。
情報の信頼度に関する質問では、「全面的に信頼している」を100点とする回答方式で、NHKテレビが73・5点、新聞72・0点、民放テレビ65・3点。これにラジオが続き、インターネットは5位の58・0点。
調査は今回で3回目。18歳以上の男女5000人を対象に面接し、69・2%が回答した。
この記事について調べてみます。
初めて聞いた組織なんですがホームページもあるので調べられます。新聞通信調査会の源流は戦前の同盟通信社に始まるようです。
年 | 事柄 |
1926 | 国際通信社と東方通信社が合併し、日本新聞聯合社発足。のちに新聞聯合社と改称。 |
1936 | 1月、新聞聯合社を母体として、わが国を代表する近代的通信社・社団法人同盟通信社を設立。 |
6月、準戦時下の通信統合で日本電報通信社(現在の電通)の報道部門を吸収合併し、同時に「同盟」の広告部門を「電通」に移管した。 |
これも初めて知ったのですが、同盟通信社が戦前の産業統制により出来たぐらいは知っていましたが、その時に広告部門を日本電報通信社に移管し、その日本電報通信社が今の「電通」になったとは勉強になります。電通が広告界の巨人であるのは有名ですが、その社名の由来が日本電報通信社の略称だったわけです。広告会社にしては妙な名前であった理由がやっと判明しました。
1945年に同盟通信は解体されるのですが、解体されてどうなったかです。
同盟通信が共同通信と時事通信になったのは有名ですが、新聞通信調査会は同盟通信の通信社史刊行会が母体となって設立されたのが確認されます。いつ新聞通信調査会になったかですが、
年 | 事柄 |
1960 | 財団法人通信社史刊行会を 財団法人新聞通信調査会と改称。わが国新聞通信事業の発展に寄与することを目的とし、ジャーナリズム及びマスコミュニケーションの調査研究、これに関する図書・資料の刊行、講演会・研究会等の事業を軸として活動。 |
1960年と言えば、今から半世紀前の事に成ります。なかなか由緒ある組織ですが、気のせいか同盟通信解体のときの余剰人員の受け皿組織に見えなくもありませんが、これは私の憶測であって何の根拠もございません。それと活動として新聞協会と重複する部分が少なくないように感じてしまうのですが、おそらく通信社側の調査組織として別の存在理由があるんだと推測します。
この調査がいつから始まったかですが、新聞通信調査会には
平成20年12月 「メディアに関する全国世論調査」を開始
今年で3回目の調査になります。2010年分はまだ公開されていないようですが、以前のものはあります。
2010年の調査のうち読売記事で公表されているのは、- 情報源としての重要性に関する質問
- 情報の信頼度に関する質問
質問 | メディア | 2008 | 2009 | 2010 |
情報源としての重要性に関する質問のうち「情報源として欠かせない」とするもの | 新聞 | 59.3% | 57.8% | 56.0% |
NHK | 記録なし | 47.7% | 47.6% | |
民放 | 54.6% | 50.4% | 50.0% | |
ラジオ | 16.2% | 12.1% | − | |
雑誌 | 8.3% | 7.6% | − | |
ネット | 29.1% | 29.0% | 34.1% | |
情報の信頼度に関する質問 | 新聞 | 72.0点 | 70.9点 | 72.0点 |
NHK | 74.0点 | 73.5点 | 73.5点 | |
民放 | 65.4点 | 63.6点 | 65.3点 | |
ラジオ | 63.6点 | 61.6点 | − | |
雑誌 | 48.2点 | 46.4点 | − | |
ネット | 58.0点 | 58.2点 | 58.0点 |
あくまでも調査の前提が公平正確である事を前提としてですが、信頼度に関しては見事に横這いの結果になっています。調査の公平正確性については新聞協会の調査の時にも話題になりましたが、たとえ偏向があったとしても、偏向しているなりに安定しているとの解釈も成り立つの意見もありました。もっともな意見で、そういう目で見ても横這いです。
もう一つの「情報源として欠かせない」の方は横這いとは言い切れないような気がします。この「欠かせない」を単純化して「ネットメディア vs 既製メディア」として見ると、既製メディアは3年間ですべてジリ貧傾向を示しており、ネットメディアは増加していると見る事は可能かと考えます。もっとも変動した数%を大きいと見るか、誤差の範囲と見るかは微妙なところです。
私はネットサイドの人間ですから、あえて言えば、信頼度は変わらないのに「欠かせない情報源」としての地位は地盤沈下を続けていると見えない事もありません。もう一つですが、かつてはどうであったのだろうの疑問は出てきます。2008年より前の信頼度とか「欠かせない情報源」としての地位です。ネットメディアの成長とともに、かなりの地盤沈下があったとするのが妥当でしょう。
既製メディアサイドとしては、この程度の地盤沈下で踏み止まってくれるのか、それとも更なる地盤沈下が続くのかが焦点になるように思われます。
ちょっと付け加えておけば、信頼度調査のネットの数値は「こんなもの」と思う面があります。既製メディアは基本姿勢として、正確な情報を商売している地位にいます。一方でネットメディアは報道機関顔負けの精度の高い情報を発信するところもあれば、一方で思いつきの与太話をネタとして発信するところも多数あります。玉石混交のネットメディアと情報が商売の既製メディアを信頼度の比較にする方がおかしいところです。
既製メディアにすればダブルスコア以上で勝って当たり前の勝負であり、負ければ職業として破滅するとしても良いかと思います。そんな信頼度の優越性を強調する読売記事は「いとをかし」です。
後は拾い読みです。断りをしていない限り2009年デーからです。
★その1
「信頼している新聞の記事は?」と言う項目があります。
- 平均点が高かったのは、「天気予報」「食品・インフルエンザなど安全性」でともに6.9点となっている。
- 年代別に見ると、「天気予報」は年代が上がるにつれ信頼感は高まり、60代以上では7点を超えている
なかなか興味深くて新聞で一番信頼されている記事は天気予報だそうです。もっとも点数のバラツキは小さいですけどね。もう一つの「安全性」とは何かですが、食品なら「これが健康に効く」の類でしょうか。たしかにその手の記事の影響は大きく、シロインゲンマメで騒動を起したり、特定の食品が突然スーパーの売り場から消えてなくなる事が今でもあります。
インフルエンザについては去年散々、振り回されましたから影響力についてはもう書くほどもないでしょう。ワクチンや薬品の安全性についても壮大な影響力を今でも持っているのは実感します。
★その2
次に目がついたのは新聞不況の大きな原因である広告です。質問項目はズバリ「新聞広告は役立つ?」です。
- ・新聞広告が生活に「非常に役立っている」は3.4%、「まあ役立っている」は43.1%であり、両者を合わせた『役立つ』とする人は46.5%となっている。一方、『役立たない』とする人は、53.0%であり、新聞広告に対する評価は厳しいといえる。
- 年代別に見ると、新聞広告が『役立つ』とする人は40代で52.2%と唯一、『役立たない』を上回っている。18〜19歳では『役立つ』と『役立たない』が拮抗し、その他の年代では『役立たない』の方が多くなっている。
なかなか厳しい評価が新聞広告について下されています。ちょっと気になったので、新聞協会の新聞広告にについての調査結果の評価を紹介しておきます。
新聞広告は「情報が信頼できる」「企業の姿勢や考え方が伝わってくる」などでスコアが高くなっており、理性的な訴求に向いていることが分かります。さらに「注意して見ることが多い」「必要な情報を改めて確認できる」「商品やサービスの内容を詳しく知る」など、確認・理解を促進するための広告媒体としても、十分に役割が認知されており、「役に立つ広告が多い」という評価を得ています。
さてどっちが正しいかは、商売ですから広告収入がどうなっているかがシンプルに示すと考えられれます。
★その3
さてさて2009年調査のトピックスとして政治に関する調査項目が行われています。まずは「新聞の政治に対する態度についてどう思う?」ですが、
- 新聞と政治の関係についての意見の肯定層を比較したところ、「新聞は政治や社会の不正を追及している」(41.5%)が最も多く、次いで「ある新聞が政権に対して批判的な記事を載せると、他の新聞もそれに追随する傾向がある」(39.7%)、「新聞は政治に対して客観的な視点で報道している」「新聞は、国民の声を政治に反映させるのに役立っている」(各36.4%)が多い。
- 一方、新聞と政治家の関わりに関する項目については評価が低い傾向にある。特に「新聞は政治家について知っていることをすべて報道している」は、肯定層が12.3%であるのに対し、否定層が43.3%と、評価が厳しい。
政治に関しては支持層が変われば、記事の評価がまったく変わるという問題があり、今なら小沢氏の検察審議会による起訴一つでも、論議を呼ぶところです。中立なんて立場を示す事がそもそも難しく、与党を批判すれば当然のように与党支持者から反発を食らう構造があります。ですから評価自体が難しいと思うのですが、調査の報告の仕方が珍妙だったので、その点について指摘しておきます。
報告の記載形式をよく読んで欲しいのですが、肯定意見の多かった点と否定意見が多かった点をまとめてあります。ここは質問の設定とも関連するのですが、調査する側が肯定して欲しい質問を設定した上での、肯定層、否定層の分類になっているはずです。そうしないと後の解釈がややこしくなります。そういう目で肯定層の多いところを見てみると、
- 「新聞は政治や社会の不正を追及している」(41.5%)
- 「ある新聞が政権に対して批判的な記事を載せると、他の新聞もそれに追随する傾向がある」(39.7%)
- 「新聞は政治に対して客観的な視点で報道している」「新聞は、国民の声を政治に反映させるのに役立っている」(各36.4%)
-
ある新聞が政権に対して批判的な記事を載せると、他の新聞もそれに追随する傾向がある
ここの解釈が実は案外難しいのですが、この質問は新聞を始めとする報道機関の付和雷同体質、金太郎飴体質に対するものですが、質問の設定として「肯定して欲しい」として作られたものであるなら、肯定されたら新聞への支持になるわけです。そうなれば、新聞サイドとして付和雷同体質は「好ましい」体質と判断している事になります。
そんなアホなと言われそうですが、他の列挙している項目を考えると、そう考えざるを得なくなります。さらに傍証としてこの質問項目にはサブタイトルがあります。
-
− 「政治家についてすべて報道している」には厳しい評価 −
「不正を追及」「批判記事に追随」に4割が肯定
私にはとてもそういう風に感じられませんが、新聞通信調査会では質問の設定時から「好ましい体質」と自負されていると考えざるを得ません。ここもまた考えようで、新聞通信調査会は通信社サイドの団体ですから、通信社が配信した批判記事を、各社が一斉に取り上げる状況を否定的にとらえてはならないの考えがあるのかもしれません。なかなか面白い質問設定と自己評価だと感じます。
★その4
最後に「新聞を読んでいる人は?」の項目を紹介します。これは朝刊の閲読頻度のグラフを引用しますが、
朝刊を読んでいる人は84.0%と8割を超え
たしかにそうなんですが、もうちょっとデータを細かく見直すと、
閲読頻度 | 比率 | |
毎日 | 64.1% | 77.4% |
週4〜5日 | 6.1% | |
週2〜3日 | 7.2% | |
週1日 | 3.4% | 22.2% |
それ以下 | 3.3% | |
読まない | 15.5% | |
無回答 | 0.5% | 0.5% |
こう受け取れない事もありません。ここは2008年データとの比較に興味が湧くのですが、残念ながら同じ設定の質問は無いようで、あるのは購読状況だけで、
自宅で新聞を月ぎめで購読している人は88.6%と全体の9割近くを占め
この項目は2009年にもあり、
自宅で月ぎめで購読している人は86.3%と8割を超えている
ここの2年間の推移を示しておくと
年代 | 2008 | 2009 | 増減 |
18〜19歳 | 90.9% | 94.4% | +3.5% |
20歳代 | 75.0% | 75.1% | +0.1% |
30歳代 | 79.9% | 71.3% | -8.6% |
40歳代 | 90.0% | 87.0% | -3.0% |
50歳代 | 94.6% | 91.8% | -2.8% |
60歳代 | 93.6% | 94.9% | +1.8% |
70歳代 | 92.9% | 90.9% | -2.0% |
全体 | 88.6% | 86.3% | -2.2% |
ごくごく素直に30歳代の落ち込みが大きいように思えます。以上、新聞通信調査会のレポートでした。