日本新聞協会の2010年度の財務データがやっと出ました。新聞協会HPには1999年からしかありませんが、個人的に1997年からデータを残していますから示してみます。
電通データは集計法の変更があり、2000年からのデータを比較し難いので、集計法がそろっている2005年データからを表にして見ます。
広告収入が減ったがために、新聞業界の売り上げ構成もおもしろい事になっています。新聞業界の収入は「販売収入」「広告収入」「その他収入」に3分類されているのですが、このうち販売収入と販売収入が占める割合をグラフにしてみます。
広告収入もそうですし、販売収入ももちろんそうなんですが、新聞協会データは「売上高」です。売上高に対する収益は公表されていません。売上高が減少していく中で、売り上げに対する収益が確保されているかどうかは興味があります。平たく言えば売り上げの質です。売り上げの質の見方は簡単には2通りあって、
- 損益分岐点的な見方
- 貧すれば鈍する的な見方
視点を少し変えてみます。新聞業界が斜陽産業であるのは新聞協会の公式データだけで誰でもわかります。これだけ売上高が減少すれば苦しくないはずはないという事です。いかなる業界にも盛衰はあり、衰えが見られるときにはその業界全体の地殻変動が見られるはずです。わかりやすい現象としては倒産であるとか、サバイバルのための合従連衡です。
10年間でこれだけ売上高が減少すれば何か反応が起こっても不思議無さそうですが、殆んど聞こえてきません。幾ら情報の支配者であっても、さすがに倒産とか大手の合併みたいな話はニュースになるかと思ってはいますが、個人的には存じません。新聞業界の経営苦境は風の噂ぐらいにはありますが、無事2010年度決算も乗り切っただけではなく、決算を受けてのリアクションも必要なかったのか、業界構造的に動くに動けないのかぐらいに考えています。
個人的には2011年度の新聞協会データが果たして公表されるかどうかに非常に興味があるのですが、これは来年のお楽しみにさせて頂きます。
売上高が減り、収益も減れば、経費節減がまず行われます。経費節約といえば人件費節約が思い浮かびますが、これも新聞協会に出ていました。データを見る上の注意なんですが、2010年11月1日現在の新聞協会加盟社数です。
新聞 | 通信 | 放送 | 計 |
106 | 4 | 23 | 133 |
新聞協会の財務データが加盟106社すべてかと言うとそうではなく、2010年で94社です。従業員数の調査も2種に分かれており、
- 全数調査
- 回答社調査
年度 | 記者数回答 | 従業員総数 | カバー率 | |
全数調査 | 回答社調査 | |||
2000 | 80 | 59117 | 56208 | 0.95 |
2001 | 78 | 57860 | 54565 | 0.94 |
2002 | 76 | 57105 | 54015 | 0.95 |
2003 | 81 | 55806 | 53488 | 0.96 |
2004 | 80 | 54436 | 51863 | 0.95 |
2005 | 71 | 52683 | 49523 | 0.94 |
2006 | 77 | 52262 | 49668 | 0.95 |
2007 | 80 | 50911 | 48069 | 0.94 |
2008 | 90 | 50042 | 48331 | 0.97 |
2009 | 91 | 49075 | 47599 | 0.97 |
2010 | 95 | 47295 | 46433 | 0.98 |
2011 | 97 | 45964 | 45318 | 0.99 |
2011-2010 | * | -13153 | -10890 | * |
全数調査でも回答社調査でも約2割のリストラを行っている事になります。財務状況は上記した通りですから、厳しいものだと思ったのですが、部門別の従業員の推移をみると面白いことに気が付きました。2000年時点と2011年度の従業員数を単純に比較してみます。
年度 | 従業員総数 | 編集部門 | 製作・印刷・発送部門 | 営業部門 | 出版・事業・電子メディア部門 | 統括・管理部門 | その他 | |
総数 | うち記者 | |||||||
2000 | 56208 | 23587 | 19434 | 11802 | 7772 | 3790 | 3691 | 5296 |
2011 | 45318 | 22891 | 20305 | 4462 | 7008 | 2804 | 3725 | 4428 |
増減 | -10890 | -696 | +871 | -7340 | -764 | -986 | +34 | -868 |
見ればお判りのようにダントツで大きく減少しているのは「製作・印刷・発送部門」です。続いて「出版・事業・電子メディア部門」「営業部門」「その他」ですが、従業員数減少の8割近くが「製作・印刷・発送部門」であるのが確認できます。この「製作・印刷・発送部門」が経営が厳しくなってから従業員数が減少したかですが、