今日は喜んで釣られます

3/19付Risfax記事より、

毎日新聞 日薬連・評議員に医療報道への「理解」求める文書

 毎日新聞社が自社の医療報道に理解を求める朝比奈豊社長名の文書を、日本製薬団体連合会評議員に配布した。

 複数の関係者によると、数年前の医療報道で一部医師から強い批判の声があがり、現場MRへの忠告、あるいはネットへの書き込み、電子メールの送付などで、同社への広告出稿をけん制する動きが活発化。製薬企業のほとんどが出稿を停止し、いまだ半数以上、停止状態が続いているという。

 文書によると同社は06年8月、奈良県で意識不明になった妊婦を転送する病院が見つからず、大阪府内の病院で死亡した事故を、産科救急の不備、周産期医療の現状と課題などを交えて報じたところ、一部医師の間で「毎日新聞の報道が医療を崩壊させた」との批判が起きた。

 複数の関係者によるとこれを皮切りに、同社に広告出稿する製薬企業にも、批判の矛先が向くようになり、10社程度あった製薬企業の毎日新聞への広告のほとんどが出稿を停止。いまも数社を除いて出稿停止が続いている。

 背景には、現場MRに対する直接の忠告、2チャンネルなどネットの書き込み、電子メールの送付などで、広告出稿をけん制する動きがあったという。

 毎日新聞社は今回の文書で、「医療態勢が崩壊していた現実を報道したのであって、報道が崩壊させたわけではない」と説明する一方、「医療報道をさらに充実させ、毎日新聞の医療に向けた姿勢をより鮮明にするよう心掛けてきた」と強調。奈良県の医療事故報道に対する批判を「謙虚に受け止め、医療報道を深化」させた結果、「低医療費政策」と「医師数抑制策」の問題点を強く訴える報道で、成果を出したと訴えている。

 文書配布は日薬連の木村政之理事長に毎日新聞社の役員らが要請、木村理事長が竹中登一会長に相談したうえ、認められた。「広告出稿の障害をできるだけ取り除きたいという思いがある」(毎日新聞関係者)という。

見事な釣りですが、今日は喜んで釣られます。

企業が広告をなぜ行うかです。すべては自社の製品なりサービスを顧客に売るためです。たとえイメージ広告であっても、目的は自社のイメージ・アップによる売り上げを図るためです。すべては自社の利益向上のために行われます。広告のターゲットは自社製品を買う可能性のある顧客です。いかに効率よく顧客に自社の広告をアピールするかに腐心するわけです。広告とは当たり前の話ですが、

    自社製品を買ってくれる可能性のある顧客へのアピール
これに尽きるわけです。広告には媒体を用いる手法が一番ポピュラーです。一般的には多くの人にアピールできる媒体が良いとは思われますが、多ければ良いと言うものではありません。たとえば育児雑誌に墓地や仏壇の広告はあまり出されません。なぜなら広告を出してもアピールできる対象が数の割に効率が悪いからです。求人雑誌の広告に優雅な豪華流行とか、セレブ向きの高級商品の広告もあまり出さないでしょう。

また媒体の色も重視されます。購読者が多くとも宗教色の強い新聞や、共産主義色の強い新聞にはやはり配慮が払われます。媒体が発信する対象者だけではなく、媒体自身も広告を行う時には厳しい評価の対象になると言う事です。それぐらい広告を行うときには注意が払われます。大企業であっても大規模広告を行うときには少なからぬ費用が必要であり、この不況下であればより厳格に広告効果を熟慮して行われるのは当然以前の話です。


今回は製薬メーカーの話ですから、そこに例えを傾けます。医療用医薬品を販売する製薬メーカーならターゲットになる顧客層は医師になります。医療現場では医師が数ある類似品の中から使用する薬剤を選択します。医師に対しいかに効果的に自社のアピールを行えるかが広告戦略のすべてです。大衆薬の比重の大きい製薬メーカーもありますが、それでも医療用医薬品部門があればあえて医師の不興を買うような広告は行いません。これもまた当たり前の話です。

ここで媒体自身の評価が問われるときに重要なのは、その媒体が広告のターゲットにする顧客層にどう思われているかは大きな要素です。広告の内容の評価以前に顧客がその媒体を嫌悪していたら、広告を出すと言う行為自体で広告主への反感が生じます。例えが悪いですが、阪神OBが日本テレビや読売新聞の専属評論家になれば、それだけでタイガースとは縁を切ったと見なされるようなものです。そういう行為は顧客に「喧嘩を売る」行為と同じであり、そんな冒険は常識的には避けます。



ではでは、この新聞社と製薬会社がターゲットする医師との関係は如何でしょうか。この新聞社がここ数年堅持している編集方針、報道への姿勢はネット医師なら百も承知です。ネット医師の中にはこの新聞社の社名さえ口にするのが「汚らわしい」とする者さえ少なくありません。今や「タブロイド紙」が説明無しに通用するぐらいの存在です。こういう顧客が嫌悪している媒体を利用するのは、広告を行う上で愚の骨頂であるのは誰でもわかります。

この新聞社が医療をバッシングしようが、医師をバッシングしようが、それは報道の自由に基づく御勝手です。ただバッシングを執拗に繰り返せば、バッシング対象は速やかにその新聞社を敵視します。医師はその新聞社が購読者の対象者として計算するには微々たる数ですが、製薬メーカーの広告対象として考えれば非常に大きな割合になります。製薬メーカーによっては顧客のほぼすべてと言っても良いかもしれません。

顧客の大部分を敵に回している媒体に広告を出す行為は、カネをドブに捨てる程度のレベルではなく、企業の存亡に関わるレベルの愚行になります。そんな事は少しでも考えれば、誰でもわかることであり、少しでも物事を考える脳ミソが存在していれば、バッシング・キャンペインを行ったらには当然出てくる予想でできるデメリットのはずです。ところがこの新聞社はそんな事さえ予想もできないほどの報道機関であるようです。

バッシング・キャンペインの当然のデメリットである、

    10社程度あった製薬企業の毎日新聞への広告のほとんどが出稿を停止。いまも数社を除いて出稿停止が続いている
こんな事が起こるのがどうも「意外」のようです。製薬メーカーの顧客層を敵に回しても、製薬メーカーの広告が出てこないのが不思議でしようがないとの御認識です。実におめでたい感性の持ち主です。こういうタイプの人物は社会でも本当に嫌がられます。思いやりのひとかけらさえない、自己中心の極致みたいな敬遠すべき人物であると言うことです。


さらに笑止なのは、広告が出ない製薬メーカーに対し、製薬メーカーに対してのみ釈明を行っていることです。もうおかしくて涙が出そうです。言ったら悪いですが、製薬メーカーはこの新聞社とトラブルを起こしたわけではありません。この新聞社がトラブルを起こしたのは、広告主である製薬メーカーではなく、製薬メーカーの主要な顧客です。

広告を出稿してもらいたいのなら、理解を求めるのは広告主である製薬メーカーではなく、製薬メーカーの重要顧客である医師とのトラブル解消のはずです。この新聞社と医師とのトラブルを解消したら、広告を再び出稿してもらえるかもしれません。もちろんあくまでも「かも」です。新聞という媒体の広告力の低下は既に周知のことですから、トラブルを解消しても、これを機に永遠に縁を切りたいかもしれませんからね。この新聞社も落ち込みは激しいですし。

ただなんですが、これは広告主向けではありますが、

     毎日新聞社は今回の文書で、「医療態勢が崩壊していた現実を報道したのであって、報道が崩壊させたわけではない」と説明する一方、「医療報道をさらに充実させ、毎日新聞の医療に向けた姿勢をより鮮明にするよう心掛けてきた」と強調。奈良県の医療事故報道に対する批判を「謙虚に受け止め、医療報道を深化」させた結果、「低医療費政策」と「医師数抑制策」の問題点を強く訴える報道で、成果を出したと訴えている。
こんなブラックジョークで顧客とのトラブルの解消も本気で考えているのなら、オツムの内容を疑います。もっとも、
    「広告出稿の障害をできるだけ取り除きたいという思いがある」(毎日新聞関係者)という。
こんなギャグを飛ばしたいがための釣りであるなら素晴らしい出来映えです。今日ばかりは喜んで釣られましょう。今回の釣りの成果を一つだけ紹介しておきます。元もと保健所長様からのコメントです。

    ふ〜〜ん 2010/03/19 14:09 さん

    速攻でリ○ロをやめました。貴重な情報をありがとうございます。

蛇足ですが、

    いまも数社を除いて出稿停止が続いている。
この数社についても情報があり、ふ〜〜ん様からのコメントですが、

私もこの日本製薬団体連合会評議員に配布したチラシの裏書みたいな文書効果を注目しています。私だけでなくネット医師が総出で注目しています。もしこの文書でトチ狂った製薬メーカーが万が一にでも発生すれば、

    現場MRへの忠告
私もビジネスライクに対応させて頂きます。