県議の質問

昨日のタブロイド屋記事ですが、URLだけ示しておきます。

記事の中に今野隆吉県議の発言があり引用しておきます。

元透析患者で生体腎移植を受けた経験がある今野隆吉県議(自民)が「患者の多くは移植の選択肢を医師から知らされず、透析しかないと思わされている」と指摘。

昨日は情報も無く、サラリと触れただけだったのですが、NATROM氏が議事録を見つけ出されていました。平成22年 10月 保健福祉委員会(第328回)-10月07日−01号から該当部分を私も引用してみます。透析関係はどうも2ヶ所あるようで、

 本会議での答弁に、かなりがっかりしているのね。まず、最初の各医療機関ごとの死亡件数については把握できていない。これは、透析患者というのは、月700円、2カ月に1度1,400円ずつ会費を払っている。全国腎臓病患者友の会、県腎友会、そして病院単位の腎友会支部がある。この機関紙には、全部死亡件数が入っている。だから、答弁というのは余りにも怠慢でないのかと思うのです。腎臓病の透析に対して甘過ぎるのでないか。それがまず1点。この答弁は、全くでたらめです。

 次に、腎の移植が推進されるようにパンフレットの配布ということですが、どういうパンフレットをつくっているのか、あとで配っていただけますか。私も、自衛隊の記念式典にも行っているのだけれども、そこでこういったようなものを見たことがない。カードは見たことがある。だけれども、腎移植がすばらしいものであるというそういうパンフレットというものは一度も見たことがないのに、ここでの答弁では「配布している」というような答弁をしている。部長、これおかしいのではないかと思うのです。

 それから、移植の推進キャンペーン実施などをして県民に広く啓発を行っているということですが、これもないです。私自身がこういうことを受けたこともないし、もう病院は「今野さん、あなたは5年と命がもたないのだから透析しなさい」と言うのです。移植の話は、一度も説明を受けたことがない。だから、私は、したらいかがですかと。県でそういう指導をすべきです。県民の健康を守る、生命を守る、これが行政の仕事です。そういうものが全くでたらめな答弁でしたね。

ここは今野県議の経験談を語られているようです。今野県議は腎移植を受けられています。それも生体腎移植を受けられています。生体腎移植と言う事は、親族から腎臓の提供を受けられる幸運があったわけです。それはそれで大変良かった事ですが、今野県議の不満は自らが腎臓病になられた時に、透析は勧められたが、移植については勧められた記憶がないとしています。

だからもっと腎移植を勧めるべきではないかの主張と解釈できます。それも県が移植推進キャンペインを勧めるべきだとしています。透析か移植の選択については昨日のコメ欄でも「必ずしも移植が善、透析が悪の問題ではない」との指摘がありましたが、今野県議の考えは「移植 >> 透析」の位置付けになっているようです。

これについては、個人的な経験・経過が良好であるところに基いていると考えられますが、これだけ腎移植について研究されておられるのに、提供される腎臓の数が登録された希望者1万3000人に対し、生体腎移植(300件)を合わせて年間1000件程度であることについて、どう考えておられるのだろうに興味が湧きます。そちらについては、もう1ヵ所の方に説明されているようです。

 移植についてみんな知らないのです。幾らかかるのかな、手術代幾ら、もう400万円も500万円もかかるんでしょうというようなイメージが入ってしまっている。また、それを透析病院はそのように言うのです。だから、移植の説明書の中に、手術代はこのぐらいだけれども、自己負担は1万円で済むのですよというようなことを書いてあげるとか、もう少し、具体性がないパンフレットでは意味がないのです。

 私たちと一緒に入院した人が、退職金をもらうのを待って移植しに来た人が、現にいるのです。学校の先生をやめてから来ているのです。だから、透析というのは延命治療で、死ぬのを待っているようなものです。その間に水は飲めない、果物や野菜は食えないのです。透析やっているから安心だと思ってみんないると思うのです。腎不全患者は、透析で延命しているだけです。必ず死んでしまうのです。延命しているだけが透析なのです。移植というのは、完全治療で治るのです。このように元気にみんなと一緒になって行動できるのです。そうしたら、一にも二にも移植を勧めるのが行政の仕事でなければならない。そこにドナーがいないということで、最終やむなし透析になるのです。

 今は逆なんです。透析、透析ですから。だから、透析というのはもうかる医療です。1カ月1人から50万円の売り上げが上がるから、年間で600万円も売り上げがある。10人いたら6000万円です。100人いたら6億円。だから、27億円も一つのクリニックで利益が出てくるのです。10億円、20億円というのは当たり前なのです。こんなことをやっていたら、もう産科とか小児科だとか救急医療、医者はもうやるのがばからしくなる。だから、どんどん減っていく。そうすると、私のところに相談に来るのは、「透析の病院に申請を今度したいのですけれども」と。「ばか言え」と、私はその人に言ってあげるのです。「そんなに、銭もうけがしたいのか」と。「赤ひげの医者になりなさい」と言ってあげるの。

 透析をやったら、5年以内で亡くなっているのが大半です。生存率10年というのは40%ぐらい。移植すれば80%の人が生存しているのです。だから、確かに、行政側が、薬メーカーやらいろいろなところから圧力がかかる。私が、透析ゼロを勧めただけでも、インシュリンメーカーから圧力がかかってきている。私一人で、今それのはねのけをやっている。行政がそれをやらなくてはいけないのです。

 だから、宮城県内でシャント手術をやっている病院は何カ所あるのですか。透析するために、シャント手術しないと透析できません。県内に何カ所ありますか。シャント手術する病院というのは何カ所もございません。後で調べればわかります。

 透析患者1人を紹介する、ベルトコンベアーに乗せてやるのです。そうすると、透析のクリニックが口を開けて待っているわけだ。そうして、紹介したところに50万円のリベートが入るのです。こんなばかな話はないのです。1割の人は亡くなっていくのだから、ベッドを埋めなくてはいけない。これが実態なんです。それを透析クリニックは、みんなでスクラムを組んで頑張っているわけ。「そんなことないさ、今野さん」と言われますが、私は裏表を全部見てきているわけだ。10年間、糖尿病でインシュリンを打ってやってきている。そして、去年、透析に入って、透析をやったら、「もうこれではだめだ」と。今度は移植しようと思ったら、「移植をやろうとしたって、糖尿病では移植はできません」と、その病院から言われているのです。「移植はできませんよ」とまで言われている。だから、もう少し調査をしっかりやって、これでは本会議の答弁にはならない。私はがっかりしてしまった。今まで何度も行政側に言って説明して、内容を報告したりしてやってきているのに調べようとしていない。どうですか、部長。

まず今野県議は移植費用について明言されています。

    移植の説明書の中に、手術代はこのぐらいだけれども、自己負担は1万円で済むのですよというようなことを書いてあげる
申し訳ありません。自己負担1万円で腎移植は出来るのでしょうか。ここについては知見が無いので、御存知の方は情報下さい。個人的には高額医療制度があるとは言え、もう少しかかりそうと思いますが、今野県議は経験者ですから1万円の自己負担で腎移植は可能なのかもしれません。費用はこのぐらいにして、透析と移植の比較を次に力説されています。
    腎不全患者は、透析で延命しているだけです。必ず死んでしまうのです。延命しているだけが透析なのです。移植というのは、完全治療で治るのです。このように元気にみんなと一緒になって行動できるのです。
おそらく拒絶反応のコントロールが余程うまく行っていると思われますが、思い入れがあるとは言え、チト表現が過激です。透析患者がまるで生ける屍であり、移植患者こそが完全健康体みたいな表現は如何なものかと思わないこともありません。私は小児科医であり、さらに腎不全に関しては経験はさほどありませんが、透析患者をここまで言わなくても良いとは思います。

もっとも今野県議のお考えは「移植 >> 透析」ですから、あえて強めの表現で物事を例えたぐらいに理解しておきます。ここでのとりあえずの結論も相当強めの表現になっています。

    一にも二にも移植を勧めるのが行政の仕事でなければならない。そこにドナーがいないということで、最終やむなし透析になるのです。
ここも微妙なところで、現実の医療として透析と移植がチョイス出来るほどの状態になっていないと考えられます。なんと言っても献腎登録1万3000人に対し、献体腎700件の世界ですからね。素直に考えて「最終やむなし透析」と言うより、希望しても「移植腎が現れるまで透析」が殆んどになるような気がしないでもありません。

昨日の私の予測では、腎移植問題について不足している移植腎の確保についての提案を今野県議が行っていると推測しましたが、私の予想は大きく外れました。腎移植のモロ推進です。ここは誤解して欲しくないのですが、腎移植を推進される事自体は問題としておりません。今野県議の姿勢はやや過激ですが、豊富に移植腎を確保できるのであれば、患者への選べるチョイスとして提供できる状態がより望ましいからです。

そこまで考えると話は移植腎の確保数のアップに話が展開するはずと予測したのですが、話は違う方向に展開します。

    透析というのはもうかる医療です。1カ月1人から50万円の売り上げが上がるから、年間で600万円も売り上げがある。10人いたら6000万円です。100人いたら6億円。だから、27億円も一つのクリニックで利益が出てくるのです。10億円、20億円というのは当たり前なのです。
透析医療が異常に儲かる商売であるとします。ここに書かれている数字について私は実感できませんから、御存知の方は情報下さい。私が知っているのは、既存施設ならともかく、新規で透析治療に手を出す時代は終わったです。
    透析をやったら、5年以内で亡くなっているのが大半です。生存率10年というのは40%ぐらい。移植すれば80%の人が生存しているのです。だから、確かに、行政側が、薬メーカーやらいろいろなところから圧力がかかる。私が、透析ゼロを勧めただけでも、インシュリンメーカーから圧力がかかってきている。私一人で、今それのはねのけをやっている。行政がそれをやらなくてはいけないのです。
ここもどうかと思うところです。そんなに目くじらを立てる個所ではないかもしれませんが、腎移植を行えるのは比較的条件の整った患者であると考えます。一方で透析患者はそれこそピンキリですが、基礎疾患などで移植の適用が危ぶまれている方が少なからず含まれている気がしないでもありません。もっともそんな細かいところまでの分析は県議会ですから期待しても仕方がないでしょう。

インシュリンメーカーの話も興味深いのですが、スキップして先に進めます。

    透析患者1人を紹介する、ベルトコンベアーに乗せてやるのです。そうすると、透析のクリニックが口を開けて待っているわけだ。そうして、紹介したところに50万円のリベートが入るのです。こんなばかな話はないのです。1割の人は亡くなっていくのだから、ベッドを埋めなくてはいけない。これが実態なんです。それを透析クリニックは、みんなでスクラムを組んで頑張っているわけ。「そんなことないさ、今野さん」と言われますが、私は裏表を全部見てきているわけだ。
透析患者を紹介したら50万円のリベートが入る話が出ています。今野県議は自分で「見た」と力説されているので、そんな透析クリニックがあるのかもしれません。ちょっと信じ難いところですが、泌尿器科や腎臓内科の実情については知る由もないので、ここはこれぐらいにしておきます。それより次の個所が興味深いところです。
    今度は移植しようと思ったら、「移植をやろうとしたって、糖尿病では移植はできません」と、その病院から言われているのです。「移植はできませんよ」とまで言われている。
今野県議は糖尿病が基礎疾患としてあったようです。糖尿病があると移植のリスクがかなり高くなると聞いた事がありますが、それを押しきって移植に踏み切られ成功したようです。これを一般化してしまうのは危険なように思いますが、成功体験に基いていますから、そこまで言わせたのでしょう。


今野県議が糖尿病を押しきって親族からの生体腎移植に成功されたのは素晴らしい事だと思います。チト強引なところもありますが、自分の成功体験をもっと広めたいと提案する事自体は広い意味で間違ってはいないと思います。ただなんですが、肝心要の移植腎がどこから調達するかについては、ついに具体的な提案はないようです。

あえて言えば、今野県議にならっての生体腎移植の推進と言う事になるのでしょうか。普通に考えて、県が腎移植キャンペインを行い、腎移植希望者が増えたからといって、献体腎がそれに応じて増える理由が乏しいところがあります。常識的に「需要 >> 供給」です。献体腎で賄えないなら生体腎でやはり補う発想でしょうか。今野県議は自分の成功体験を非常に重視して発言されていますから、それぐらいしか思い浮かびません。


その辺について、もう少し情報がないかと探していたら、平成22年  2月 定例会(第326回)-03月04日−08号に透析関連の質問がありました。

 さて、医療費を増加させている原因の一つに、透析による医療を初め、高額医療費の問題があります。県内の透析患者の数は、平成二十一年三月現在で四千六百四十九人で、透析を行うことができる医療機関は五十三施設あります。ベッド数は千六百七十八床であります。透析医療費は、個人負担のほか、国、県及び市町村がそれぞれ負担しておりますが、県の負担額は幾らか、お伺いいたします。

 透析医療は、延命医療であります。治療・回復医療ではありません。透析歴十年で生存率は三七%と言われております。つまり六三%の人は亡くなっているのであります。本県の過去五年の年度別死亡者数はどうなっているのか。また、透析歴が五年、十年、十五年、二十年の患者数はそれぞれ何人いるのか。また、慢性腎不全について人工透析の導入を必要とする導入基準を作成すべきと思うが、県としての見解をお聞かせください。

 なぜ、腎移植を奨励しない理由は何なのか。また、病気腎の修復腎移植を奨励すべきだと思うが、いかがでしょうか、お伺いいたします。

 心臓を守る理由で特定利尿剤を大量投与するため、腎機能が低化し、患者が増加しているのでありますが、刑法上問題はないのか、県警本部長にお伺いいたします。

 また、医療監視をしっかりやるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

 透析医療機関で多額の収入を得ている医療機関があり、これでは、透析医療はもうかる医療だと、安易に透析病院を開設助長する懸念があります。県医療審議会では慎重に審議されたのか、疑問を感じます。審議内容に問題はなかったのか、お伺いいたします。

 治療、投薬などを含めてインフォームド・コンセントの充実強化が望まれておりますが、指導状況はどうなのか、お伺いいたします。

 また、セカンドオピニオン等を活用して、透析防止を図る委員会を設置すべきと思いますが、どうでしょうか。

10月の質問と似た内容なのですが、とりあえず透析施設は儲け過ぎであると指摘しています。つまり透析施設は自らが儲けるために腎移植を故意に抑制しているのでないかの論旨が展開されています。その上で、

    慢性腎不全について人工透析の導入を必要とする導入基準を作成すべきと思うが、県としての見解をお聞かせください。
なかなか凄い質問で、透析適用基準を作り、それに適合しないものは透析を中止せよと主張しておられます。透析を中止すれば患者は死亡しますが、ココロは腎移植に向わせろであると考えられます。順番が前後しますが、透析医療に非常に深い恨みを抱いているようで、
    透析防止を図る委員会を設置すべきと思いますが、どうでしょうか。
参ったなってところですが、ここも凄いところで、
    心臓を守る理由で特定利尿剤を大量投与するため、腎機能が低化し、患者が増加しているのでありますが、刑法上問題はないのか、県警本部長にお伺いいたします。

     また、医療監視をしっかりやるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
特定利尿剤とはなんじゃらホイの声がネットに多かったですが、どうも発言の趣旨は、「特定利尿剤」投与が腎不全を量産してるので「業務上過失致傷」に該当するんじゃないかみたいです。この「特定利尿剤」の投与は「医療監視」に務めなければならないと強調しています。こんな質問をされた県警本部長が可哀そうな気がしますが、答弁を引用しておきます。

◎警察本部長(竹内直人君)

 大綱一点目、宮城県医療費適正化計画についての御質問のうち、特定利尿剤の大量投与により腎臓機能が低下する患者が増加しているが、刑法上問題はないかとのお尋ねにお答えいたします。

 一般論で申し上げれば、医学的見地から広く行われている医療行為につきましては、犯罪に該当する可能性は低いと思われますが、仮に刑事事件として取り上げるべきものがあれば、警察といたしましては、法と証拠に基づき厳正に対処してまいる所存であります。

模範的な答弁かと思われます。今野県議の腎移植原理主義者みたいな発言はよく判りましたが、ここではそれを執拗に紹介するのが目的でなく、今野県議が推進する腎移植のための移植腎の供給元です。唯一それらしいところは、

    腎移植を奨励しない理由は何なのか。また、病気腎の修復腎移植を奨励すべきだと思うが、いかがでしょうか
二つの答弁だけで今野県議の主張をまとめるのは乱暴かもしれませんが、
  1. 透析医療は下らず、腎不全患者は可能な限り腎移植を行うべきである
  2. 透析医療機関は、その儲け故に、患者に腎移植を勧めていない
  3. 腎移植推進のために、透析治療に制限を設けるべきである
  4. 移植腎の供給源として家族提供の生体腎もあるし、病腎移植も積極的に取り入れるべきだ
全部が間違いでないのは予めお断りしておきます。ただ2つの発言を読む限り、今野県議の質問の真の目標が腎移植推進かどうかは少々疑わしいところがあります。腎移植推進もウソではありませんが、それより透析医療叩きが主目的のように感じてしまいます。発言の透析医療への批判が、分量的にも、具体性でも、痛烈さでも強くて大きいと感じます。


もっともなんですが、この程度の質問は県議ですからあっても良いと思います。ただそれをわざわざトピックとして取り上げたセンスは失笑を禁じ得ません。取り上げて何をマスコミとして伝えたかったが問われるところではないかと考えます。もっとも取り上げた報道機関が報道機関ですから、ネタとして締まらないところです。