7/14付神戸新聞より、
不適切な薬投与で入院女性死亡 医療法人に賠償命令
協立病院(川西市)に入院中の女性=当時(71)=が死亡したのは、主治医が不適切な薬剤を投与したためとして、女性の夫が病院を運営する医療法人に対し、慰謝料など約6600万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が14日、神戸地裁であり、角隆博裁判長は病院側の過失を認め、約2470万円の支払いを命じた。
判決によると、女性は2006年11月29日、別の病院から協立病院に転院。すぐに人工透析が始められたが、主治医は転院前の病院からの指示に従い、07年1月26日から透析患者には適さないとされる薬剤を投与した。その結果、女性は同月29日に意識障害を伴う重篤な低血糖に陥り、08年12月13日に肺炎で死亡した。
判決理由で角裁判長は「副作用の危険を冒してまで投与する必要があった事情は認められない」などと主治医の過失を認定。「別病院の医師による投与の指示に疑いがあれば、協議するなど適正な医療行為か判断するべき」とした。また、投与と死亡の因果関係については「意識障害で長期間横になっているなどしたため、肺炎を発症した可能性が極めて高い」と指摘した。
亡くなられた71歳女性の御冥福をお祈りします。先にお断りしておきますが、情報はこれだけしかありませんからあくまでも推理遊戯の範疇であり、正直なところ殆んど何もわからないに近いところがあります。それを前提として、過失と言うか注意責任義務として認められたのは、
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主治医が不適切な薬剤を投与したため
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肺炎で死亡
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不適切な薬とはなんぞや
これは病院の方針にもよりますが、主治医が透析に対し禁忌薬をチェックミスで投与し、その事により患者を死亡に至らしめたのであるなら訴訟まで争うかの疑問があります。賠償額なり、和解条件が折り合わなかったためやむなくかもしれませんが、和解を選ばず訴訟で判決まで争ったのは「必ずしも不適切と言えない」と主張した可能性を考えています。
投与経過も記事にあります。
別の病院から協立病院に転院。すぐに人工透析が始められたが、主治医は転院前の病院からの指示に従い、07年1月26日から透析患者には適さないとされる薬剤を投与した。
ここも非常に微妙な表現が用いられており、
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透析患者には適さないとされる薬剤
まあ基礎疾患は一つとは限りませんから、他にも高血圧、高脂血症、様々な神経症の類ぐらいの合併はあっても不思議ないかもしれません。言い出したら便秘とか、腰痛もあってもおかしくはありませんが、何種類かの薬剤を服用していたのだけは間違いありません。前医からの処方となっていますから、透析治療にあたり投与の是非を確認したはずです。
薬剤には特定の治療に関して絶対禁忌と相対禁忌があります。お世辞にも透析治療に詳しくありませんから、具体的に何かは私の手には余りますが、記事内容からして絶対禁忌の薬剤で無さそうであるぐらいは言えそうと思います。この手の訴訟で有名なペルジピンよりずっと下の位置付けの薬剤であると考えるのが妥当そうです。
そうなると訴訟の焦点がちょっと見えてきます。推測に推測を重ねている部分は御容赦頂きたいのですが、
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原告:添付文書に「好ましくない」と記載されている
被告:この状態で併用する事で通常は問題を起こす事はない
医療訴訟という専門訴訟分野が、司法過誤、弁護過誤の温床になっています。それでも裁判官の判決ではおかしな判決はかなり減っているかも知れません。現時点で未だに問題が疑われるのは、神戸地裁の角隆博裁判官、名古屋地裁の永野圧彦裁判官、仙台地裁の沼田寛裁判官あたりでしょうか。
峰村健司様は半端じゃない医療訴訟ウォッチャーですから、かなり信用の置ける情報と私は判断しています。もちろん「神戸地裁の角隆博裁判官」であっても常にトンデモ判断が下されるわけではないでしょうから、今回の判決が妥当なものであったのか、それともトンデモであるのかをこれ以上は確認は出来ません。
ただなんですが、もしチェックミスによる誤投与によるものであれば、もう少し表現が違うような気がします。たとえば
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透析治療には禁忌とされる○○を投与し患者死亡
そうそう訴訟先進国アメリカでは能書の記載に反する投与に対する医療訴訟はポピュラーと情報を頂いたことがあります(rijin様だったかな?)。そういう面では詳細がわかれば立派なJBMに値する訴訟かもしれません。いずれにしても基礎疾患と薬剤名が判明しないと「な〜んにもわからない」のが隔靴掻痒なところです。