新聞協会調査の素朴な検算

昨日のお話のオマケ編なんですが、ちょっと気になった事がありました。世帯構成の表を再掲しますが、

* 一世代家族 二世代家族 三世代以上 単身 その他 無回答
新聞協会調査 16.3 53.9 23.0 5.3 1.4 0.2
厚労省データ 21.5 37.5 9.1 25.3 6.6 *


これが実数として成立可能かどうかです。新聞協会調査の調査数6000は厚労省データに副って分布し、調査回収数3683は新聞協会調査結果に副う事になります。そうなれば、

分類 厚労省データ 新聞協会調査 回答率
分布 n=6000 分布 n=3683
一世代 21.5% 1290 16.3% 600 46.5%
二世代 37.5% 2250 53.9% 1985 88.2%
三世代 9.1% 546 23.0% 847 155.1%
単身 25.3% 1518 5.3% 195 12.8%
その他 6.6% 396 1.4% 52 13.1%


世帯構成により調査の回答率に差があるのですが、どうしても目を引くのは三世代家族の回答率の異常な高さです。異常と言うより不可能な回答率になっています。新聞協会がそこまでのデータ操作を行なっているとは思えませんから、何らかの理由を考えないといけません。

まずは調査年度の違いです。新聞協会調査は平成21年度データであり、厚労省データは平成18年度データです。3年の差はありますが、たった3年でこれほど差は開かないと考えるのが妥当です。三世代家族の比率は2000年度でも厚労省データでは10.6%ですから、3年間の変化は多くとも1%以内と考えるのが妥当です。

次に考えたいのは昨日しろうず様から頂いたコメントですが、

同居していても生計が別なら世帯は別ですので、同居親族数だけで世帯平均人員数と比較されるのは適当ではないと思います。

なかなか鋭い指摘です。新聞協会と厚労省データでは三世代家族の定義が異なっている可能性はあります。厚労省データの三世代家族の定義は、

三世代世帯とは、世帯主を中心とした直系三世代以上の世帯をいう。

同居していても世帯主が異なれば三世代家族にならないと考えられます。つまりサザエさん型の家族構成であれば、外から見れば三世代家族ですが、厚労省の定義では、

    波平世帯・・・・・波平、舟、カツオ、ワカメ
    フグ田世帯・・・マスオ、サザエ、タラ
この2つの二世代家族がある事になります。これが新聞協会調査では同じ定義を用いず、単純に同じ家に同居していると定義している可能性です。世の中にサザエさん型家族がどれほどいるかなんて判りませんが、どう考えても統計を左右するほどの数とは思いにくいところがあります。

仮にサザエさん型の家族が多いとすればどうなるかですが、厚労省データのうち、二世代家族が合体して三世代家族としてカウントされる事になります。三世代家族が成立するには孫まで存在する必要がありますから、一世代家族の合併では三世代は成立しにくくなります。あえて成立するとすれば、三世代がすべて世帯主であれば可能ですが、これはさすがに統計上の誤差の範囲としても良いかと考えます。

新聞協会調査の三世代家族が単純同居であるならば、データ上で大きく動くのは一世代(祖父母所帯)と二世代(子ないし娘所帯)になるはずです。新聞協会調査では一世代は確かに減っていますが、二世代は減るどころかかなり増えています。二世代の比率が大幅に増えながら、さらに三世代がさらに増えるという調査結果が出ています。

これが成立するには・・・難しいですね。三世代家族の増加数は301家族です。三世代家族の回答率が100%としても、サザエさん型家族が301家族存在する必要があります。二世代家族が100%の回答率であったとしても、新聞協会調査と厚労省データの二世代家族の差は265家族しかありませんから、少々数が足りません。


昨日からこの算数を考えているのですが、どこかにピットホールはあるのでしょうか。結局のところ解答と言うか、合理的に説明できる方法が見つからなかったのですが、判られた方は是非コメント下さい。