第2回新型インフルエンザ総括会議

ソース元は4/13付m3.com医療維新です。読める人は読んで欲しいですし、読めない人は「きっと」どこかの医療ブログで引用されるでしょうからお探し下さい。チト長いのと取り上げたいポイントがずれるので全文引用はしません。

大雑把に記事を読んだ感想だけ書いておくと、それなりの意見は出た事は確認されます。m3記事は総括会議の発言の中で注目されると感じられた発言をピックアップしたと考えていますが、総括でどの意見を重視するかは誰にもわかりません。この手の会議で総括を書くのは事務局である厚生労働省医系技官であり、医系技官が総括会議の前に決めたストーリー以外の意見は「発言しただけ」で終わるからです。

個人的には

    広報・情報伝達において、幾つかの問題点の指摘もあり、主な意見は下記の通りである。

    1. ○○○○
    2. △△△△
    3. ××××


    これらを踏まえての広報・情報伝達体制の整備も必要と考えられる。

この程度で総括されるんじゃないかと考えています。


今日は枝葉末節に注目してみます。m3記事からですが、

 これに対し、丸井英二・順天堂大学医学部教授は、「厚労省新型インフルエンザ専門家会議の報告書でもスポークマンの設置を含め多くのことを提案したが、金のかかること、人の配置については全く実現されなかった。部門ごとにもかなりディスカッションを行い、議論は出尽くしたと言える。しかし、政府としてのアクションプランにまで結びつかない。その意味では、正直なところ、この会議にもどれほどの実効性があるのか」と苦言を呈し、対策の必要性を訴えていくことが必要だと主張した。

この丸井教授の発言の中でとくに注目したいのは、

    厚労省新型インフルエンザ専門家会議の報告書でもスポークマンの設置を含め多くのことを提案したが、金のかかること、人の配置については全く実現されなかった。
ここでよくわからないのは「厚労省新型インフルエンザ専門家会議」です。これはなんだろうと言う事です。政府の新型インフルエンザ対策本部専門家諮問委員会とまったく別の専門家会議なのか、同じものかです。調べてみるとまったく別のものであるのがわかります。第1回は平成18年4月24日に行なわれており、記録に残る最終回(第11回)は平成21年4月20日に開催されています。

何をしていた会議かといえばH5N1(鳥インフルエンザ)の対策を検討していた会議です。もう少し具体的に言うと今回の新型インフルエンザ(H1N1pnd)対策の初期に基本とされたガイドラインを作成した専門家会議と言う事になります。あくまでも因みにですが、政府の新型インフルエンザ対策本部専門家諮問委員は、

この5人ですが、このうち岡部氏、河岡氏、川名氏、田代氏の4人は新型インフルエンザ専門家会議のメンバーでもあります。さらに岡部氏は厚労省の専門家会議の「情報提供・共有」に名を連ねられておられます。ついでに言えば岡部氏は「予防と封じ込め部門」「ワクチン及び抗ウイルス薬」のメンバーでもあります。

さてなんですが、丸井教授の指摘はH5N1の対策を検討していた時の報告書の提言は「金のかかること、人の配置については全く実現されなかった」としています。それは事実でしょう。そうなれば実現されなかったから不備が生じたに話は結びつきます。そこも話としてはわかるのですが、政府の専門家諮問会議にも厚労省の専門家会議のメンバーが尾身氏以外は入っておられます。

委員が重複するのは問題はありませんが、広報に対する厚労省専門家会議の提言が却下された事もよく知っているはずです。却下された事が実現されていないと不備が生じる可能性がある事を知る立場に居た事になります。5人のうち4人がそうであると言う事です。そうなれば外野から感じるのは、厚労省の専門家会議の報告書時点で却下された対策を遅まきながらでも実現しようとしたかどうかになります。

政府の専門家諮問会議の委員長である尾身茂氏は第1回の総括会議においてこう発言されています。

とくにパンデミック初期は専門家会議以外にも公式非公式にたくさんの意見交換を行っていた。WHO等の情報もコンスタントに入っていた。2つを除いてほとんどすべての政策に専門家会議の意見が取り入れられた。

えらく具体的に数まで上げて

    2つを除いてほとんどすべての政策に専門家会議の意見が取り入れられた。
では尾身茂委員長が述べられた「2つ」は具体的に何かになりますが、これも第1回の総括会議でそれらしい事を述べておられます。

  • 専門家委員会ではむしろ安全性を重視して輸入ワクチンには慎重な姿勢をとっていた。
  • ワクチン接種スケジュールはまだ小児に広がっていない時期に作られた。専門家委員会では小児にまず接種すべきと言っていた。

これは素直に読んで尾身茂委員長が政府の専門家諮問会議が提言しても取り上げられなかった「2つ」に該当しそうな気がします。そうなれば残りの提言は政府に取り入れられた事になります。

であればです。丸谷教授が指摘する厚労省専門家会議で提言していたされる広報部門の強化充実については、政府の専門家諮問会議は提言していなかった事になります。専門家諮問会議が提言していれば政府は取り入れたはずであり、取り入れられていないの指摘があると言う事は、取り入れるように専門家諮問会議は提言していなかった事になります。

もっとも諮問会議とは諮問された事に答申する会議ですから、政府から広報に関して何も諮問されなかったから提言も行なわなかったのかもしれません。もちろん広報に関してどんな事が検討されていたかは議事録も資料も消滅した状態ですから確かめる術もありません。それと尾身茂氏があげた「2つ」がそもそも他のものを指している可能性もありますが、これについても何も判断情報はありません。