ワクワクするような話

まず先行しようとしているところですが、3/26付webR25(Yahoo !)より、

各種調査によれば、ここ数年「新聞を購読せず、ニュースはネットで検索する」という人が増えているそうだが、この動きに対応するべく日本経済新聞が3月23日から有料の電子版新聞『日本経済新聞 電子版』をスタートさせる。

日本経済新聞のHPによると、購読料金は月額4000円。朝刊・夕刊の最終版が読めるのに加え、電子版独自のニュース解説も配信され、携帯電話でも閲覧できるほか、記事や株価などが検索できるという。

4000円とは思い切った値段ですが、紙媒体では

    朝・夕刊セット 4,383円
    全日版 3,568円

朝夕刊セットよりちょこっと安い値段設定です。でもって他紙も追随する動きを見せているようです。天漢日乗様の新聞各社が日経に続き、web有料化を年内にも実行、ポータルサイトも会員制へ移行を検討の噂なんですが、ソースが2chですから信用もそれなりですが、日経の結果を注目中かもしれません。

先行している日経に続いて他の有力紙が追随するかどうかは日経の結果を見てもあるでしょうが、流れとしてはありうるとは考えています。日経はやや特殊な位置付けの新聞ですが、新聞社の紙媒体の衰退はウェブサイトへの無料情報提供にあるとたぶん判断するでしょうからです。ネットで無料で情報を入手するから紙媒体が買われないのですから、ネットへの情報遮断が紙媒体回復のカギと判断してもおかしくありません。

ネットへの情報遮断のためには各社が足並みをそろえる必要があります。自分のところだけ情報遮断しても、他社がネットに情報を流したら兵糧攻めの効果が低くなるからです。


そういう展開になったらどうなるかです。新聞社の思惑通り、紙媒体への回帰や高価なネット記事に参加する人が増えるでしょうか。そうなる可能性も否定はしませんが、そうならない可能性もまた十分にあると思われます。

何度か指摘しましたが、新聞社のウィークポイントは情報伝達の基本を紙媒体システムに置いている事です。紙媒体システムはこれを維持するために大きな経費が必要です。損益分岐点が必然的に高くなり、そこから割り出される購読料が経営のために絶対に必要になります。日経の4000円も、ネットへの情報提供料と考えるより、紙媒体システムの維持費のために必要な金額と考える事は可能です。

ネットの購読料を安く設定してしまえば、有料システムに人気が出ても紙媒体の維持費が賄えないための料金設定と考えるのが妥当です。ネットに読者が流れても本体の紙媒体を維持できるようにするには4000円が必要と言う事です。ですから有料システムに流れなくとも、紙媒体に回帰してくれても損は無い計算と考えられます。


さてなんですが、各社が有料化による情報遮断を行なえば想定される事態は何かと言う事になります。考えるまでもなくネットの中の情報空白が生まれる事になります。新聞社側は空白に耐えかねて有料に走ると算段していますが、必ずしもそうはならないと考えます。とりあえずネットユーザーの財布は固いと言うのが現実としてあります。

ネットユーザーはネットを使うために既に接続料を支払っています。これは新聞の購読料と似た感覚であり、これ以上は支払いたくないというのが実感です。そのためネットでの有料サイトの成立が容易でないのはよく御存知かと思います。ちょうどテレビにNHKの視聴料を払って、さらに有料チャンネルを購入する意欲が低いのに似ています。

ネットユーザーの指向は

    どこかに無料で情報提供をしてくれるサイトはないか
これへの巨大な欲求が生まれてくると考えるのが妥当です。新聞社側は自分たち以外に情報提供を行なえる機関が無いという前提で戦略を組み立てていますが、ネットの中に巨大な要求が生まれれば、これを満たそうとする新たな情報提供機関が必ず生まれると考えます。ビジネスの基本は需要に対する供給ですから、新聞社サイトが撤退した後のネット上の情報需要は莫大と言う表現で良いと思います。ポッカリ開いた草刈り場としても良いでしょう。

実は今だって純ネットのメディアは存在します。しかし現在の純ネットメディアは苦戦しています。苦戦の理由は色々ありますが、その一つに新聞社のウェブサイトの存在は確実にあります。なんのかんのと言われても新聞社サイトはこれまでの信用の金看板があり、ネットユーザーは新聞社サイトの情報を重視します。純ネットメディアは信用性のアドバンテージをなかなか埋められないと考えています。

しかしこれが有料化で一斉に退場してくれれば状況は変わります。誰がどう見ても巨大なビジネスチャンスが創出されると言うわけです。大袈裟に言えば今後の情報提供機関の覇権を握るものはネットを握るものですから、次代の覇権を賭けての大競争時代が起こると考えても良いんじゃないでしょうか。

純ネットメディアは新聞社サイト較べ、紙媒体と言う足枷がないので遥かに軽量経営です。広告収入だけで無料化の維持は可能でしょうし、ネットの広告収入は拡大傾向を堅持しています。新聞社サイトが撤退すればアクセスは増えるでしょうし、アクセスが増えれば広告収入は比例すると考えられ、経営拡大のチャンスが十二分にあると考えます。


新聞社サイトの有料化は映像の主役が映画からテレビに映ったときを想起させます。テレビの急速な普及に対し、映画会社側は映画スターのテレビ出演を規制する対策を打ち出します。しかしテレビ側はテレビから新たなスターを輩出させて対応します。「映画 vs テレビ」の最終抗争はテレビ側が圧勝したのは歴史の伝えるとおりです。

情報伝達の主役は紙媒体からネットに間違い無く移行しています。この流れを紙媒体に引き戻そうとする行動は世界中でただの一つも成功していません。情報提供機関の主戦場はネットをいかに制するかの時代に遠の昔に突入しているわけです。その主戦場から撤退すると言う事は、次代の情報提供機関の主役の座を放棄したのも同様と言う事です。


純ネットメディアの発達発展を抑制していたのは実は新聞社サイトであったと言う皮肉があると見ても良さそうです。新聞社サイトが実質として消滅すれば、当然のように純ネットメディアが台頭するのは、もう必然として良いと思います。ネットが主役の時代の怖さはもう一つあります。これまでは紙媒体に報じられる事が重要でしたが、これからはネットに報じられない事は「無かったこと」になると言う事です。

さらにさらに、ネットに存在しないと言う事は、その存在価値でさえ希薄化していきます。ネットから新聞社が撤退してもすぐには希薄化しないかもしれませんが、ものの3年、5年もすれば存在さえ忘れさられる可能性は大だと言う事です。いくら紙媒体で書きたてても「誰も知らない」状態が来ても不思議とは思いません。

情報の主役の座がネットで報じるメディアになり、紙媒体で細々やっているメディアはマイナーに転落すると言う事です。情報の恐ろしさは、情報自体が持つ価値は当然のようにありますが、どれだけ広まるかの付加価値も重要と言う事です。伝達範囲の狭いメディアだけが報じる情報は、位置付けとしてそれだけ低く扱われます。

今で言うなら新聞に対する週刊誌の情報みたいなもので、週刊誌の情報も時にビッグニュースになりますが、普遍性に於てはかなり落ちる存在になってしまうと言う事です。これから数年でドラステックにメディアの勢力図が劇変しても不思議ありませんし、その引き金が新聞社サイトの有料化であったと後世に記録されても不思議とは思いません。


こりゃ、ワクワクするような展開だと思いませんか。若さとバイタリティがあれば、こんな巨大なビジネスチャンスを見逃す手はないと思います。誰が動くんでしょうね。こういう激動時には時代の英雄が現れますから、本当に楽しみです。