リンクは当ブログでも数え切れないぐらいしています。ウェブ情報と言うか、HTMLファイルの特性と言うべきもので、必要なときに必要な情報の場所にジャンプできる機能は画期的と言えるものです。ですからリンクが中途半端な情報は難儀する事がよくあります。お役所の通達などでもよくあり、
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○○については、△△省令××号に基く
ブログを書く上でもリンクは便利なもので、原文を全部引用すると長大になってしまうのを防げますし、あんまり長い引用をすると、著作権法の引用条件を満たすために、無闇に長い解説をタラタラと書き流す必要が出てきます。これもリンクを使っておくと、必要部分の引用だけで済みますから非常に重宝ですし、リンクを示す事によって、恣意的な引用かどうかの確認を読者にしてもらえます。
今までリンクはウェブでの便利なツールぐらいにしか思っておらず、これが著作権法とかに抵触するものとはあまり意識していませんでしたが、「そうではない」と主張する新聞社が現れたようです。4/6付J-CAST(Yahoo !版)より、
新聞業界で注目を浴びてスタートした日本経済新聞の「電子版」に、思わぬ形で逆風が吹いている。サイトへのリンクについての方針が、「個別記事へのリンクはお断り」「違反した場合は損害賠償を請求することがある」という異例の内容で、強い批判を浴びている。
簡単に言えば無断リンクはお断りと言うだけでなく、損害賠償も請求するとの宣言です。ちょっと理解し難いのですが、日経のウェブサイトは4000円で有料化されたはずです。有料サイトは金を払わないと見れないはずですから、たとえリンクされても料金を払っていない人間には全部は読めないはずです。現在日経のサイト(自力でお探し下さい)では、見出しとリードの一部のみが掲示され、もっと読もうと思ったら、
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日経サイトが有料化した目的は様々にあるでしょうが、至極単純にはウェブ読者を広く獲得したいというのはあるはずです。なんつうても4000円ですから、最悪紙媒体の読者が大量に流れ込んでも経営的にはペイするはずです。あわよくば新たなウェブ読者層が開拓されれば言う事無しのはずです。
従来の紙媒体読者からの移行や、従来からのウェブ読者からの有料申し込みは宣伝無しでも可能でしょうが、そうでない読者の獲得のためには日経サイトがある事を知ってもらい、それが有料である事を知ってもらい、「中身を読みたい」と感じさせるのが必要だと考えられます。知ってもらう第一歩はサイトを訪問してもらう事であり、そのためにはリンクは大きな武器になるはずです。
リンクを貼られるというのは、無料でサイト訪問の道案内をしているようなものであり、考え方やシチュエーションにもよりますが、排除すべき憎い物と言うより、むしろ有り難いものになりそうなものだとも思えます。リンクを辿って訪問しても、有料サイトですから詳しい情報はどうせ読めないからです。そこから4000円を払う気が起こるかどうかは訪問者の意志次第です。
ウェブ上でリンクが貼られない情報は検索順位がドンドン落ちると考えています。googleの優先順位の付け方は複雑なようですが、それでも被リンク数は小さくない要素ではあります。いくら日経でも被リンクがゼロではウェブ上の存在感がどんどん薄れます。そういう商売の方針はどんなものだろうと素直に思います。有料化だけでも有料読者以外のアクセスは急落しますから、被リンクまで排除してどうしようと言うんだろうと思ってしまいます。
これはいらぬ心配ですが、有料化、リンク排除によりアクセスが落ちれば、広告料にも響きそうに思います。ここはここでS/N比の問題もあって単純ではないのですが、それでもアクセス数が二桁単位で落ちれば影響は無いとは言えないでしょう。
日経の方針を前向きに受け取ると、完全な引き篭もり路線であるとは解釈できます。日経のサイトは4000円を払った読者のみのものであり、それ以外の訪問者は不要であるとの方針です。不要の中にはリンクでたまたま流れ着いた訪問者も含まれており、そういう者も含めて「あんたは不要」と宣言していると考えればよいのでしょうか。
そういう考え方が成立するには
- 有料読者の申し込みがテンコモリありウハウハ状態である
- 本音の方針が紙媒体誘導であり、ウェブに関してはジリ貧消滅でもノープロブレム
さて日経で寄り道してしまいしたが、問題はリンクの法的位置付けです。これは素人が考える限り著作権法ぐらいしか思いつきません。現時点では著作権法にウェブ上のリンクについての条文が明記されているわけではありません。ウェブ上のリンクについての著作権の解釈はこれまでの解釈の延長であり、もちろん「たぶん」ですが裁判所の判断が下されているわけでもないと思っています。
法律はあれで生き物ですから、条文や判例で判断されていない事柄に関しては、新たな解釈を立てて主張することは可能です。どこかの新聞社は催告書に著作権があると頑張っておられましたから、マスコミにとってもお家芸かもしれません。
ではでは現在のリンクに関する著作権法としての判断のポピュラーなものは何になるかになります。何がポピュラーかの判断も少々難しいのですが、J-CAST記事でも紹介されている社団法人日本著作権情報センターの見解は一定の信用が置ける判断します。もちろん著作権情報センターの見解も絶対と言うわけはありませんが、ここは著作権を保護しようと運動している団体のようですから、そういう点での信用です。
著作権情報センターの引用は少々怖いのですが、これはブログを書く者、コメントを書く者に取っても重要な情報ですから、見解を全文引用します。これはQ&Aにあり無断でリンクを張ることは著作権侵害となるでしょうか。の質問に答える形式となっています。
リンクとはホームページをほかのホームページに結び付ける機能をいい、ホームページに飛び先を書き込んで、それをクリックするだけで目指すホームページにジャンプできるようにすることを「リンクを張る」という言い方をします。リンクを張ることにより、他人のホームページにある著作物に容易にアクセスすることができるだけに著作権侵害とはならないかが問題となります。
結論を先にいえば、リンクを張ることは、単に別のホームページに行けること、そしてそのホームページの中にある情報にたどり着けることを指示するに止まり、その情報をみずから複製したり送信したりするわけではないので、著作権侵害とはならないというべきでしょう。
「リンクを張る際には当方に申し出てください」とか、「リンクを張るには当方の許諾が必要です」などの文言が付されている場合がありますが、このような文言は道義的にはともかく、法律的には意味のないものと考えて差し支えありません。ホームページに情報を載せるということは、その情報がネットワークによって世界中に伝達されることを意味しており、そのことはホームページの作成者自身覚悟しているとみるべきだからです。リンクを張られて困るような情報ははじめからホームページには載せるべきではなく、また載せる場合であっても、ある特定の人に対してのみ知らせようと考えているときは、ロック装置を施してパスワードを入力しなければ見られないようにしておけばよいだけのことではないでしょうか。
もっとも、クリックすることにより、他人のホームページ上の情報が自分のホームページのフレームの中に取り込まれるという形式のものであれば、話は別です。このような場合、自分のホームページの中に他人の情報を複製することになるので、複製権の処理が必要になってくるように思われますし、また取り込む情報が一部分であるならば不要な部分をカットしたということで同一性保持権も働く可能性があるからです。
まず無断リンクについての結論を明快に示しています。
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リンクを張ることは、単に別のホームページに行けること、そしてそのホームページの中にある情報にたどり着けることを指示するに止まり、その情報をみずから複製したり送信したりするわけではないので、著作権侵害とはならないというべきでしょう
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「リンクを張る際には当方に申し出てください」とか、「リンクを張るには当方の許諾が必要です」などの文言が付されている場合がありますが、このような文言は道義的にはともかく、法律的には意味のないものと考えて差し支えありません。
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リンクを張られて困るような情報ははじめからホームページには載せるべきではなく、また載せる場合であっても、ある特定の人に対してのみ知らせようと考えているときは、ロック装置を施してパスワードを入力しなければ見られないようにしておけばよいだけのことではないでしょうか。
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ホームページに情報を載せるということは、その情報がネットワークによって世界中に伝達されることを意味しており、そのことはホームページの作成者自身覚悟しているとみるべきだからです
喩えが悪いかも知れませんが、街角にポスターを貼れば道行く人すべてに公開しているのと同じ意味になります。当然の事ですが、そこにポスターが貼ってあるの情報も自由に交換できます。さらにどこそこにポスターが貼ってあるの情報を書いても常識的には問題にはなりません。そのポスターに
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このポスターのありかを他人に教えれば賠償請求します
最後に注意だけしておきます。このリンクに法的な問題は無いというのは、あくまでも著作権情報センターの見解であって、判例等で確立しているものではないはずです。確立していませんから、日経が損害賠償請求権があると主張して損害賠償を個人に請求するのは今の時点で止められません。さらに損害賠償請求を拒否した時に訴訟を起されるのもまた止められません。
訴訟の行方はどうも日経に有利とは言いにくそうな気もしますが、結果は水物ですし、それより何より労力と費用をかけて訴訟に付き合う必要があります。民事訴訟での被告側は勝っても得るものが殆んどない世界ですから、費用もそうですし、とくに労力を取り戻す術が無い関係になります。君子危うきに近寄らずですから、私は日経記事の取扱いは十二分に注意しておく事にします。
新聞社がネットの発展発達を抑制したいのはわかりますが、どうにもやり方が明後日と感じるのは私だけでしょうか。