若かりし頃にこの題名を聞いたときに「会社名の題名とは変わっているな」と勘違いしたのを思い出します。今日まで知らなかったのですが作詞は中島みゆきだったんですねぇ。
それはそうと平成21年12月30日に発表された「新成長戦略(基本方針)」についてが目に付きましたので新春から景気の良い話の確認をしてみます。全部見る気力も無いので、医療関連分野だけに留めます。医療関連分野のタイトルは
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ライフ・イノベーションによる健康大国戦略
【2020 年までの目標】
『医療・介護・健康関連サービスの需要に見合った産業育成と雇用の創出、新規市場約45兆円、新規雇用約280万人』
【主な施策】
目標に書かれている「新規市場約45兆円、新規雇用約280万人」なんですが、どちらもはっきり「新規」と書かれていますから、現在の市場の上に積み重なる、ないしは広がるものと考えてよいようです。そうなると現在の市場規模が気になるのですが、これについては前回CB記事から書いた時に、rijin様からコメントを頂いています。
総務省の労働力調査によると、医療・福祉分野の就業者数は既に628万人で、既に建設業を超えています。
労働力調査(基本集計) 平成21年11月分(速報)結果
http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/index.htm
医療費と介護保険給付の方は、同時期の統計はまだないものの、おそらく40兆円弱といったところで、間違いないところと思います。
データについては集計方法により差があるのでしょうが、この成長戦略により、
- 市場:40兆円 → 85兆円
- 雇用:628万人 → 908万人
1.医療・介護・健康関連産業を成長牽引産業へ
我が国は、国民皆保険制度の下、低コストで質の高い医療サービスを国民に提供してきた結果、世界一の健康長寿国となった。世界のフロンティアを進む日本の高齢化は、ライフ・イノベーション(医療・介護分野革新)を力強く推進することにより新たなサービス成長産業と新・ものづくり産業を育てるチャンスでもある。
したがって、高い成長と雇用創出が見込める医療・介護・健康関連産業を日本の成長牽引産業として明確に位置付けるとともに、民間事業者等の新たなサービス主体の参入も促進し、安全の確保や質の向上を図りながら、利用者本位の多様なサービスが提供できる体制を構築する。誰もが必要なサービスにアクセスできる体制を維持しながら、そのために必要な制度・ルールの変更等を進める。
それにしてもですが、無理からにカタカナ文字を使わなくても良いと思うのですが、散りばめられてますね。ライフ・イノベーションも何となく違和感を感じるのですが、
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世界のフロンティアを進む日本の高齢化
- 新たなサービス成長産業
- 新・ものづくり産業
それよりよくわからないのは、戦略で挙げられている2つの産業が具体的に何をするがサッパリわからない点です。5つの項目は基本的に独立しているはずで、少なくともこれから紹介する下記の施策以外の事業と解釈しそうになるのですが、どうなっているのでしょうか。ここは好意的に考えて、重複重畳していると受け取ります。
2.日本発の革新的な医薬品、医療・介護技術の研究開発推進
安全性が高く優れた日本発の革新的な医薬品、医療・介護技術の研究開発を推進する。産官学が一体となった取組や、創薬ベンチャーの育成を推進し、新薬、再生医療等の先端医療技術、情報通信技術を駆使した遠隔医療システム、ものづくり技術を活用した高齢者用パーソナルモビリティ、医療・介護ロボット等の研究開発・実用化を促進する。その前提として、ドラッグラグデバイスラグの解消は喫緊の課題であり、治験環境の整備、承認審査の迅速化を進める。
ここの軸は、
パーソナルモビリティとは何の事かと思ったらwikipediaに、パーソナルモビリティー(Personal Mobility)とは一人乗りの移動機器。人が移動する際の1人当たりのエネルギー消費を抑制するという意図のもとに、従来の自動車と一線を画した移動体として提案されている。
セグウェイみたいなものだそうです。あれはおもしろそうですが、日本の道路事情からしてどんなもかとは思ってしまいます・・・あそっか、パーソナルモビリティが安全に走れる道路整備で需要は喚起されます。なるほどです。後のものは育ってくれると「イイナ」としておきます。
3.アジア等海外市場への展開促進
医療・介護・健康関連産業は、今後、高齢社会を迎えるアジア諸国等においても高い成長が見込まれる。医薬品等の海外販売やアジアの富裕層等を対象とした健診、治療等の医療及び関連サービスを観光とも連携して促進していく。また、成長するアジア市場との連携(共同の臨床研究・治験拠点の構築等)も目指していく。
創薬ベンチャーでも思ったのですが、新薬開発は今や巨大産業が支配する時代です。大資本クラスでは太刀打ちできず、世界的巨大資本の下に、天文学的な予算を費やして激しい競争が展開されています。アジアで薬品販売と言っても、ライバルはアジアの製薬企業ではなく世界的な巨大資本が相手です。創薬ベンチャーと言うより、日本に巨大企業を出現させないとどうしようも無いと思うのですが、どんなものでしょうか。
ただ現時点の日本のアジアでの医療ブランドは高いそうで、その点は今後活かしていくのは悪い方向ではありません。その点は案外期待できるかもしれません。
4.バリアフリー住宅の供給促進
今後、一人暮らしや介護を必要とする高齢者の増加が見込まれており、高齢者が居住する住宅内での安全な移動の確保や転倒防止、介助者の負担軽減等のため、手すりの設置や屋内の段差解消等、住宅のバリアフリー化の促進が急務である。このため、バリアフリー性能が優れた住宅取得や、バリアフリー改修促進のための支援を充実するともに、民間事業者等による高齢者向けのバリアフリー化された賃貸住宅の供給促進等に重点的に取り組む。
ここはこれまでの施策と打って変わって非常に具体的かつ現実的な内容です。ただどうなんでしょう、これらの内容は現在でも行なわれていますから、新たな起爆剤と言うか、新規市場の開拓にどれほどの影響があるかと言うところです。ここも考えようで、どこかで新基準を作成して、それに合わせる為の改修を行なわせるなんて手法もありますから、堅実な成長を期待できる分野とは言えそうです。
5.地域における高齢者の安心な暮らしの実現
医療、介護は地域密着型のサービス産業であり、地方の経済、内需を支えている。住み慣れた地域で生涯を過ごしたいと願っている高齢者は多く、地域主導による地域医療の再生を図ることが、これからの地域社会において重要である。具体的には、医療・介護・健康関連サービス提供者のネットワーク化による連携と、情報通信技術の活用による在宅での生活支援ツールの整備などを進め、そこに暮らす高齢者が自らの希望するサービスを受けることができる社会を構築する。
高齢者が安心して健康な生活が送れるようになることで、生涯学習や、教養・知識を吸収するための旅行など、新たなシニア向けサービスの需要も創造される。また、高齢者の起業や雇用にもつながるほか、高齢者が有する技術・知識等が次世代へも継承される。こうした好循環を可能とする環境を整備していく。
書いてある事は正しいと思いますが、これって現在のところ、これまで自然に成立していた地域コミュニティによる支えあいが、少子高齢化、成長戦略によれば、世界のフロンティアに突入した事により失われている部分ではないかと考えられます。もちろんそれを取り戻す、ないしは新たな体制を構築しようとするのは方向性として否定しませんが、産業として成立するかどうかは少々疑問です。
現在でもこういう取り組みは地方で行なわれていますが、産業として成立しているのではなく、公的サービスとして辛うじて維持されている様に思います。これを成長のための牽引産業にするにはかなりの努力が必要そうですが、その辺がどうなっているのかは施策からは不明です。
最後にまとめみたいなところです。
これらの施策を進めるとともに、持続可能な社会保障制度の実現に向けた改革を進めることで、超高齢社会に対応した社会システムを構築し、2020年までに医療・介護・健康関連サービスの需要に見合った産業育成と雇用の創出により、新規市場約45兆円、新規雇用約280万人を目標とし、すべての高齢者が、家族と社会のつながりの中で生涯生活を楽しむことができる社会をつくる。また、日本の新たな社会システムを「高齢社会の先進モデル」として、アジアそして世界へと発信していく。
私は小児科医ですからとくにそう感じるのかもしれませんが、
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超高齢社会に対応した社会システムを構築
前回はCB記事からの感想でしたが、今回オリジナルを読んでみても感想はあんまり変わらないところです。施策の具体性が見え難い成長戦略ですが、わかる人にはわかるようです。成長戦略は、読む限り医療界と言うより財界へのメッセージみたいに感じますから、この戦略に反応した業界で具体的な内容を推測すると言うのはアリかと思います。
参考になりそうなのがTechTargetジャパン記事で、まずこうあります。
日本政府が2009年12月に発表した「新成長戦略(基本方針)」。その重点分野に「医療・介護・健康関連産業」が掲げられた。政府とともに、その産業育成と雇用創出を促進する役を担うキープレーヤーとは?
「キープレイヤー」と言うぐらいですから、10年間で45兆円の確実に一翼を担う存在と考えて良さそうです。でもって、その企業とは、
後はリンク先の記事を御参照下さい。なおssd様によるとリンク先の記事を読めば、軽く殺意を抱く医療関係者は5万人はいると見た。
だそうですから、間違ってコーヒーカップをディスプレイに投げつけない様にだけご注意下さい。