1月20日参議院本会議

hiro様のコメントの、

国会より

松あきら 「子宮頸がんのワクチン(最低3回で36,000円)を無料にしても120億、(ガンになってから治療費の国庫負担と比べたら3倍の効果がある!子宮頸がんはワクチン接種で防げる唯一のガンです!子宮頸がんはワクチン接種で防げる唯一のガンです!(大事なことなので2回言う松議員)(国庫負担でのワクチン接種の普及に関して)総理の英断を!」         
鳩山総理 「今のワクチンは対応できる種類が限定的、今後ワクチンの開発が進んだら考えます」

これのソースを確認してみます。1月20日参議院本会議で松議員が質疑に立たれており審議中継もあります。ただしこの審議中継部分だけでも38分56秒あり、松議員と鳩山総理の部分に限っても30分8秒ありますから、子宮頚癌ワクチン(サーバリックス)関連のところだけ文字で起してみます。

まず松議員ですが15分38秒あたりから始まります。

 最後に、子宮頚癌予防ワクチンの公費助成について、政府の見解を伺います。近年、若い女性の子宮頚癌が急増し、毎年1万人以上の方がこの病気で苦しんでおります。子宮頚癌は、ウイルスによって感染します。つまり粘膜感染です。しかし、実は、それを知らない方が殆んどです。女性も知らない方が殆んど、多いんです。しかも死亡率の高い子宮頚癌の増加傾向をこのまま放置する事は、日本社会にとって大きな損失であり、今こそ政府の真剣な対応が求められています。

 子宮頚癌対策は、海外では100カ国以上で予防ワクチンが承認され、大きな効果を挙げておられます。日本では、昨年12月にやっと発売が開始され、10歳以上の女性に予防接種が可能となりました。ところが、この予防ワクチンの接種費用は1回のワクチン価格、1万2000円。それを最低3回は接種する必要があり、3万6000円と高額になります。

 子宮頚癌は予防の出来る唯一のガンであります。予防が出来る唯一のガンであります。女性の誰もが平等に予防接種が受けられるよう、公費助成への英断を下して頂きたいのであります。公費助成でも約212億円と言われております。治療費との費用対効果を考えると、投資額に対して約2倍の効果の試算を示す専門家もおります。

 総理、この助成への明快な御答弁をお願いいたします。

これに対する鳩山総理の答弁は29分13秒あたりから始まります。

 子宮頚癌を予防するためのワクチン接種についての女性についてのお尋ねがございました。御指摘のワクチンは、作用するウイルスの範囲が限定的であり、現在我が国において、子宮頚癌の原因となるすべての型のユーズに対応するワクチンを研究開発途上である言う事でございますが、今後厚生労働省におきまして、子宮頚癌ワクチンの助成について、他のワクチンの開発状況なども踏まえて、総合的に検討する事としたいと考えております。

 この件に関して松議員が、重ねて大変強調されておられましたので、私どもとしても、積極的に検討してまいりたい。出来る限り早期に実現できるように努力してまいりたい。そのように考えております。以上です。

松議員の質問は質問はシンプルで、子宮頚癌ワクチン(サーバリックス)のメリットは大いに期待できそうなので、子宮頚癌対策として公費助成し、全女性に接種できる様にするべきだの趣旨です。

これに対しては鳩山総理の答弁は「前向きの姿勢で善処する」。つまり今は出来ないとの答弁と解釈すれば良いかと思います。鳩山答弁の前半は公費助成を行なわない理由の説明ですが、誰が考えたか知りませんが、かなり強引なロジックで構成されています。私も子宮頚癌やましてやサーバリックスに対する知識は怪しいところがあり、知識の基がサーバリックスのパンフである事を白状しておいてから、ロジックを分析してみます。

    作用するウイルスの範囲が限定的
子宮頚癌はヒトパピローマウイルス(HPV)によって引き起こされるとされます。もちろんHPV陰性の女性からも発症することはありますが、かなりの高い割合でHPV感染が発症の原因となります。そのうちサーバリックスはHPV16とHPV18の2つのタイプのウイルスしか予防しません。これはパンフのデータですが、12762例中、1021例にHPV感染を認めています。

1021例のうちHPV16/18は131例で12.8%を占めるに過ぎません。HPV16/18以外のHPV感染が8割近くあり、これを捉えて言えば「限定的」はロジックとして成立します。ただここで注意しておかないとならないのは、すべてのHPVが等しく発癌性を有するわけではないと言う事実です。これもパンフのグラフですが、CIN3+(上皮内癌の進行段階)の累積発現率が示されています。

HPV16/18の保有者の発癌率は20%近い数値を示す一方で、その他HPVの保有者は3%以下、HPV陰性の女性は1%程度になっています。つまり圧倒的にHPV16/18の発癌率が高いことがおわかり頂けるかと思います。鳩山答弁の「限定的」はウイルスの種類数のカバーの割合については間違っていませんが、子宮頚癌を引き起こす危険性が高いウイルスのカバー率としては無理がある答弁と思われます。
    現在我が国において、子宮頚癌の原因となるすべての型のユーズに対応するワクチンを研究開発途上
鳩山総理が答弁するぐらいですから、研究開発は行なわれているとは思われます。しかし研究開発がどの段階に至っているのかはこの答弁では不明です。たぶん鳩山総理も知らないと思います。発癌性が低くともすべてのHPVウイルスに対応できれば、サーバリックスより効果は向上しますが、向上する率はあくまでもサーバリックスのパンフのデータに過ぎませんが大きな数字でない可能性が強そうです。

大きな数字でないと言っても相手は生死に関わるガンですから、カバーするに越した事はありませんが、いつできるのか、それ以前に果たして出来るのかの問題があります。ワクチンの承認手続きも慎重を極めますから、臨床試験の最終段階に近づいていても、そこから製造承認、販売にいたるまで数年は必要と考えられます。ましてや研究室レベルで試行錯誤状態なら、10年単位の年月が必要となります。

サーバリックスの有用性は幸か不幸か世界100カ国以上で先に確認されています。国産の子宮頚癌ワクチンが完成し、サーバリックスを越えるものであれば、その時に助成対象の変更を検討すれば良いだけの事で、現在開発中だから、助成対象に相応しくないとの理由は少々詭弁の趣があるように感じます。


もっともその辺については、鳩山総理自身も答弁のレトリックに無理を感じたのかもしれませんし、助成しないと言い切って女性を敵に回すのは得策でないと空気を読んだのか、あくまでも「前向きの姿勢で善処する」ぐらいの含みを持たしているかと思われます。ただしなんですが、国会用語にそんなに詳しくはありませんが、答弁の真意はその場限りで「答えただけ」であり、実質はそれ以上でもそれ以下でもないと解釈するのが妥当とも考えられます。