ワクチン問題 3月8日会議

今日はこれを書かないといけないのですが、まず基本的情報です。平成22年度第11回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会及び第2回子宮頸がん等ワクチン予防接種後副反応検討会(合同開催)と言う長い名前が専門家会議の正式名称のようです。ここに会議に使われた参考資料が公開されています。素早い公開に感謝します。

このうち問題になった5つの死亡例にだけリンクを張って置きます。残りの資料は厚労省のリンク先から御参照お願いします。

  1. 宝塚症例経過概要
  2. 西宮症例経過概要
  3. 川崎症例経過概要
  4. 京都症例経過概要
  5. 都城症例経過概要

私はまだじっくり読む時間が無かったので、個々の症例の評価についての個人的な見解は差し控えさせて頂きます。こういう資料を使われて出された昨日の結論が、このうちワクチン接種再開の可否についての部分のみ引用しておきます。

 国立感染症研究所が実施したワクチンの検定においても、これらのワクチンの死亡報告のあった症例に投与されたロットについての試験結果は、全て変動域内にとどまり、逸脱は認められなかった。なお、宝塚例と西宮例で肺炎球菌ワクチンのロットが同一であったことについては、製造工程等の逸脱等について確認する必要がある。

 その他、諸外国での状況や同時接種の安全性、接種者数等の情報について、早急に情報を収集し、次回検討することとする。また、死亡例とワクチンの関連性の検証のためには、関係者の協力を得て、今後、積極的疫学調査を行う仕組みを構築すべきである。

これでも長い引用ですが、結論は、

    次回検討することとする
昨日会議の結果は「先送り」であった事が確認できます。情報として、この会議結果の原案を提示しておきます。

小児用肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチンの安全性について

(案)
平成23年3月8日
安全対策調査会
子宮頚がん等ワクチン予防接種後副反応検討会

1.報告された5例の症例評価について

 平成3年3月2日以降、小児用肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチンを含むワクチン同時接種後の乳幼児において5例の死亡例が報告されており、これらについて評価を行った。

  1. 5例は0歳から2歳代までの乳幼児で、基礎疾患を有するものが3例、基礎疾患が明確でないものが2例であった。
  2. 接種から死亡までの期間は、翌日死亡が3例、2日後死亡が1例、3日後死亡が1例であった。
  3. 現在得られている各症例の経過や所見に基いて評価したところ、


    • 基礎疾患を有し誤嚥による呼吸不全の可能性のあるもの(宝塚)
    • 感染症による可能性のあるもの(西宮)
    • 吐物誤嚥又は乳幼児突然死症候群の可能性があるもの(川崎)
    • 基礎疾患の進行による可能性があるもの(京都)
    • 基礎疾患を有し死因もワクチンとの関連も不明であるもの(都城
    であった。


  4. 報告された5例については、現段階の情報において、いずれもワクチン接種との直接的な明確な因果関係は認められないと考えられるが、さらに入手可能な情報を次回までに収集する。なお、例えば先天的な心疾患など重度の基礎疾患を有する患者は、その状態によっては、重篤転帰に繋がる可能性があるので十分な注意が必要である。
2.ワクチンの検定結果について

 国立感染症研究所が実施したワクチンの検定においても、これらのワクチンの死亡報告のあった症例に投与されたロットに異常は認められていない。なお、宝塚例と西宮例で肺炎球菌ワクチンのロットが同一であったことについては、品質試験結果の逸脱等について確認する必要がある。


 その他、諸外国での状況や同時接種の安全性について、さらに情報を収集し、次回検討することとする。また、死亡例とワクチンの関連性の検証のためには、関係者の協力を得て、今後、積極的疫学調査を行う仕組みも検討すべきの意見があった。

決定稿とそこそこ違うところがあって興味深いのですが、比較検討は後日またやる事もあると思います。


会議の雰囲気は臨席した傍聴者のツイッターからの情報があります。流れてしまって引っ張り出すのが大変なので、私の記憶に頼って書きます。あくまでも私が又聞きで感じた感想程度のものですが、少なくとも「事故即廃止」の方向性ではなかったようです。もちろん委員の見解も様々であったでしょうし、ツイッターで中継してくれた方もすべての意見を拾い集めてくれたわけではありません。

会議の流れ的には、「いかにして再開するか」の意見が強かった様に感じています。つまりは再開条件の検討に流れがあったとは思っています。とは言うものの「問題なし、無条件即再開」には出来ないの認識はあったようです。そうなると限られた情報から再開条件を作る必要があります。その再開条件のコンセンサスが委員の間で出来上がらなかったと見ています。

会議の結果を読めばわかるように、再開条件の一つに「基礎疾患を有する患者」に何らかの再開条件を付けようとした形跡は認められます。これに同時接種を絡めて方向性を打ち出そうとした気配もありますが、再開を宣言するにはより具体的な条件と、それを裏付ける情報が必要の判断に傾いた様に感じています。ここは基礎疾患を有する患者の方が、よりワクチンの必要性が高いの正論もあり、方向性さえ決めかねたと見ることも出来ます。


もう一つの見方もあるようです。これはrijin様の意見の受け売りなんですが、この会議で再開条件を付けるにしても「再開」の方向を示せなかったのは大きな問題であると言う見方です。本気で早期再開を目指すのであれば、昨日の時点でせめて明瞭に再開の方向性だけは決定し、再開条件の検討のみを次回に持ち越すぐらいの見解は必要であったの考え方です。

つまり昨日の会議の結果は、なんとなく再開の方向性を示しながらも、再開ともこのまま中止とも明言していません。もう少しはっきり言えば、このまま廃止の可能性さえ残されてしまったと言う事です。次回の会議は2週間後だそうですから、その間に「ワクチン怖し」の感情論が強くなれば、再開はより困難になり、長期の接種中止を余儀なくされた上に、もし接種が再開されても再開条件は非常に厳しいものになるんじゃないかの観測です。

こういう会議の用語の使い方の解釈については、私のような不慣れな者にとっては何とも言えないところです。ただ次の会議までの2週間は非常に長いものになるであろう事は私も同感です。2週間の時間の重みがワクチンの行方をどう左右するかは、今後のワクチン行政の方向性を決めてしまうぐらいのものになりそうな感じはしています。