新聞業界の販売部数や収入や利益がかなり不透明なのは周知の通りです。とくに販売部数の裏舞台は魑魅魍魎が蠢く世界で、何人かのチャレンジャーが挑んでいますが、強烈な防衛線の前に返り討ち状態になっています。今日はそんな事にチャレンジしようとは思っていませんので、ゴチゴチの公式データをまず紹介します。どれだけゴチゴチかと言えばソースは日本新聞協会だからです。
引用するのは新聞の総売上高の推移です。
年 | 新聞業計 | 販売収入 | 広告収入 | その他収入 |
1997 | 25293 | 12903 | 9127 | 3264 |
1998 | 24848 | 12297 | 8584 | 3337 |
1999 | 24688 | 12876 | 8448 | 3365 |
2000 | 25223 | 12839 | 9012 | 3372 |
2001 | 24890 | 12858 | 8687 | 3345 |
2002 | 23721 | 12747 | 7709 | 3265 |
2003 | 23576 | 12640 | 7544 | 3392 |
2004 | 23797 | 12573 | 7550 | 3674 |
2005 | 24189 | 12560 | 7438 | 4191 |
2006 | 23323 | 12521 | 7082 | 3715 |
2007 | 22182 | 12434 | 6557 | 3080 |
※2002年から集計は年度、それ以前は暦年集計 ※単位は億円 |
速報性も重要な新聞業界の集計にしては3月に出ているはずの2008年度のデータが出されていないのは遺憾ですが、公表されていないものは致しかたありません。新聞不況とは良く言われますが、データにある1997年と2007年度の変化をピックアップしてみます。
項目 | 1997年 | 2007年度 | 増減率 |
新聞業計 | 25293 | 22182 | -12.3% |
販売収入 | 12903 | 12434 | -3.6% |
広告収入 | 9127 | 6557 | -28.0% |
その他収入 | 3264 | 3080 | -5.6% |
あくまでも公式データですが、販売収入即ち新聞販売からの収入は殆んど変わっていません。新聞料金の推移が気になるところですが、戦後昭和史「新聞購読料と新聞広告費」によると、
年 | 朝日 | 旧毎日 | 読売 |
1993 | 3850 | 3850 | 3850 |
2004 | 3925 | 3925 | 3925 |
とくに2004年以降に改訂があったかどうかが不明なんですが、おおよそ変わらないとしても良いかと考えられます。新聞購読料に大きな変化が無いとすれば、販売収入は販売部数にほぼ比例すると考えてもおかしくありません。実際にこれも新聞協会のデータですが、
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1998年:5366万9886部
2008年:5149万1409部
- 販売部数は微減程度である
- 広告収入の減少が3割にもなっている
それと新聞業計(総売上)は1997年から2007年度の間に3111億円減少していますが、新聞協会加盟の新聞社は109社あり、厚労省の神の統計である「平均」で言えば1社あたり28億5000万円です。大きいか小さいかは微妙ですが、この程度は企業努力で吸収出来る範囲じゃないかとの見方も成立します。これは記憶に頼りますが2007年度の公式決算でも主要紙は黒字であったかと思います。
2008年度になり赤字決算のところも出たと思いますが、単年度の赤字1回ぐらいは内部留保等でまだ凌げる範囲とも外野からは思います。新聞の足腰の販売部数及びそれに伴う販売収入は非常に安定しているのは公式データが示すとおりです。
長々と新聞協会の公式データを引用しましたが、誰が考えても不思議な点については目を瞑っておきます。例えば販売部数が変わらないのに若年購読者の大きな減少が問題視されるのはなぜかとか、若年購読者が減った分をどこで埋め合わせしているかなどです。当然「押し紙」の話も出てくるでしょうが、ここは「不思議だな」にわざとしておきます。
長い長い前フリでしたが、11年間で12.3%の総売り上げが減った新聞社は業績改善運動に新聞協会を挙げて取り組まれているそうです。注意して欲しいのは新聞社ではなく新聞協会が取り組んでいる点です。業界全体の事ですから新聞協会が前面に立っても問題とは言えないのですが、その方向性が興味深いものです。
これから示すソースはネット上には公開されていません。「選択」と言う雑誌が掲載した記事の一部です。私もたまたま入手したソースですから、どれだけ信憑性が置けるかは、読まれる皆様の御判断にお任せします。2009 VOL.35 NO.7 P74 選択「経済情報カプセル」より(手打ちです)、
新聞業界も公的支援を要求/活字離れ食い止め策など浮上
収入源に苦しむ新聞業界をテコ入れするため、政府や行政から救済・援助を取り付けようとする仰天プランが新聞業界で浮上している。しかも、日本新聞協会を挙げての構想というから驚きだ。
プランの柱は売り上げ減の一つとされる、若者の新聞離れを食い止めようとするもの。若者が新聞購読する際の費用を政府が補助するよう求める考えという。このほか、各学校で新聞を読める環境を整えたり、学習教材に新聞を活用するよう行政に強く働きかける意向だ。
こうしたテコ入れを先導するのが、新たに新聞協会会長に就任した内山斉・読売新聞グループ本社社長。就任を控えた今春には自らの発案で、「広告対策特別委員会」を設置、これが発端となり、「政府支援プラン」の検討が加速したと見られる。新体制下で今後、関係当局へのトップアプローチが本格化するとの見方がもっぱらだ。もっとも、新聞業界へのバラマキプランにはやり過ぎではないか、との声も周辺から漏れ聞こえる。また政府支援を得ることで、政策への論調に緩みが生じるとの懸念も聞こえている。
キモは新聞協会が音頭を取って、
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若者が新聞購読する際の費用を政府が補助するよう求める考えという。このほか、各学校で新聞を読める環境を整えたり、学習教材に新聞を活用するよう行政に強く働きかける意向だ。