新型インフルに地域区分、休校は各校判断 政府が新指針
政府は22日、新型インフルエンザ対策本部の会合を首相官邸で開き、国内での感染拡大を踏まえ、対処方針を改定した。症状が季節性インフルエンザと似ていることから対応を弾力化。発生地域を拡大状況に応じて二つに分け、患者の急増地域では学校単位で臨時休校できるようにする。一般病院での受診や軽症患者の自宅療養も認める。機内検疫は原則取りやめ、水際対策は縮小する。
新しい対処方針によると、新型インフルエンザでは、糖尿病やぜんそくなど基礎疾患を持つ人を中心に、症状が重くなって死亡する例があることを指摘。今後、国民生活や経済への影響を抑えながら、特に基礎疾患を持つ人への感染防止に重点を置き、「地域の実情に応じて柔軟に対応する必要がある」と明記した。
具体策は、厚生労働省の運用指針で定めた。発生地域を(1)患者発生が少なく、感染拡大防止に努めるべき地域(2)患者が急増し、重症化の防止に重点を置くべき地域――に区分し、(1)の地域はほぼ従来通りの方針で対応するが、(2)の地域は対応を大幅に緩和する。厚労省と相談のうえ、都道府県などがどちらの地域とするか判断する。
(2)の地域で、学校・保育施設に患者が多数発生した場合は、通常の季節性インフルエンザと同様、県や市など設置者の判断で臨時休校・休業措置をとれるようにする。塩谷文部科学相は22日の閣議後の記者会見で、学級閉鎖も「実情に応じてありえる」と述べた。修学旅行については「自粛を求める状況ではない」とも語った。
対策本部で麻生首相は「自治体が地域の実情に即した柔軟な対応をとれるようにすることが重要。ただ、今回の新型インフルエンザの特性から、対策の基本は感染拡大を防ぐこと、基礎疾患のある方々の重篤化を防ぐことであることは忘れてはならない」と述べた。
舛添厚労相は22日の閣議後の記者会見で、「感染初期の段階と(患者が急増した)大阪、兵庫は違う。きめの細かい対応の違いを示した。現場からの情報が一番貴重で、それが判断基準になる」と述べた。
対策緩和の方針を示したのですが、大筋は、
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発生地域を拡大状況に応じて二つに分け、患者の急増地域では学校単位で臨時休校できるようにする。一般病院での受診や軽症患者の自宅療養も認める。
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具体策は、厚生労働省の運用指針で定めた。発生地域を(1)患者発生が少なく、感染拡大防止に努めるべき地域(2)患者が急増し、重症化の防止に重点を置くべき地域――に区分し、(1)の地域はほぼ従来通りの方針で対応するが、(2)の地域は対応を大幅に緩和する。厚労省と相談のうえ、都道府県などがどちらの地域とするか判断する。
(問7)「基本的対処方針」の「二.」における「患者や濃厚接触者が活動した地域等」の具体的範囲如何。
(答)
そうなると新型インフルエンザ対策本部幹事会「確認事項」における感染拡大防止措置を図るための地域について(第5報)にある「患者や濃厚接触者が活動した地域等」の範囲になります。第5報は5/20付けですから、また変わるかもしれませんが、
兵庫県神戸市の全域、兵庫県芦屋市の全域、兵庫県明石市の全域、兵庫県西宮市の全域、兵庫県尼崎市の全域、兵庫県伊丹市の全域、兵庫県川西市の全域、兵庫県宝塚市の全域、兵庫県三田市の全域、兵庫県加古郡播磨町の全域、兵庫県加古郡稲美町の全域、兵庫県加古川市の全域、兵庫県高砂市の全域、兵庫県姫路市の全域、兵庫県豊岡市の全域、兵庫県養父市の全域、兵庫県朝来市の全域。兵庫県美方郡香美町、兵庫県美方郡新温泉町の全域。大阪府大阪市の全域、大阪府豊中市の全域、大阪府池田市の全域、大阪府吹田市の全域、大阪府高槻市の全域、大阪府茨木市の全域、大阪府八尾市の全域、大阪府箕面市の全域、大阪府三島郡島本町の全域、大阪府豊能郡能勢町の全域。滋賀県大津市の全域、滋賀県草津市の全域
公式には現在の方針は「感染の拡大を防ぐ」ですから、この地域以外で自治体の独自の判断で緩和するのは難しいかと考えられます。関西人以外にはローカルな地名なんですが、この「患者や濃厚接触者が活動した地域等」の分布が地図上でどうなっているかを確認してみます。
まずは兵庫県です。
当然ですが感染が未発見地域の市町村から、感染拡大地域の市町村への移動も頻繁に行なわれるわけです。関西人ならおおよその人の流れは想像がつくかと思います。そういう状況で感染拡大防止のスローガンはどんなものだろうと素直に感じてしまいます。何事も段取りがありますから、緩和方針も段階を追う必要があると理解しなければなりませんが、別に医療関係者でなくとも「???」はつくような方針じゃないかと感じています。
もう一つ素朴な疑問なのですが、麻生首相のコメントとして、
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自治体が地域の実情に即した柔軟な対応をとれるようにすることが重要
地図を見ればお分かりの通り、北部地域から大阪市にかけて感染拡大地域が広がっていますが、東部地域や南部地域は未発見地域となっています。しかし東部や南部地域から大阪市への人の動きは非常に活発です。そういう実情を勘案して、大阪府知事が「全府を蔓延地域とする」みたいな事はできるのでしょうか。「地域の実情に応じて」の裁量権ならそれぐらい与えられても良いとは思うのですが、実態はよく分かりません。
蔓延期に準じた治療となれば、現在の方針では新型インフルエンザの全例把握は困難になります。蔓延期とは感染者が増えてしまい、封じ込めが出来なくなった状態を指し、目に付く患者を治療しながら感染の鎮静を待つ状態です。そういう地域があれば隣接する地域が封じ込め作戦を展開しても、人の動きを制限しているわけではありませんから、感染は自然に蔓延します。
神戸も大阪も隔絶された地域ではなく、同一府県内だけではなく、他の都道府県からも活発に人が流れ込む地域です。とくに大阪は言うまでもなく関西の中心ですから、ここが蔓延期状態になれば、誰が考えても感染は全国に波及します。別に難しい話ではなく、誰が考えてもそうなる事は予想できるかと思います。そういう状況下で、蔓延期を現状追認で一部地域だけ認める方針に何か意味があるのかの疑問を抱いてしまいます。
今後の新型インフルエンザ対策は、医学的な面よりも、今後は政治的な落としどころが注目される展開になりそうな気がします。これは懸命になって発見を封じ込めている首都圏に蔓延するまでに必要な対策とも見る事もできそうです。つうことで、舛添大臣は来週も忙しいという事になりますから、御苦労様です。首都圏で感染が拡がると忙しさは数倍増でしょうし。