5月21日の感染地日記

行政や医師会通達的には大きな動きなしです。動いたばかりですから、週明けまでこのままで進み、週明けから休校措置の解除の動向と発見患者の治療動向を見極めて次の動きがあると予測しておきます。迅速かつ柔軟な反応は必要ですが、さすがに神戸では来週まで大きな動きはないと考えます。

ポツリ、ポツリと神戸・大阪以外でも発見があり、東京でも発見されたの報告も出てきました。これはあくまでも私の予想ですが、神戸・大阪の教訓を十分に活かした発見対策が取られると考えています。それでも発見されれば第二段階の対策になりますから、キットやマスクが不足しないかを心配しておきます。発見が無くても大量に必要になりますから、確保は末端医療機関では結構大変です。

ところでインフルエンザ対策はガイドラインを基本として行なわれています。舛添大臣も頑張って緩和の方針を打ち出しつつありますが、現時点では具体的にと言うか、システム的に体系だってどう緩和するかは打ち出せていません。時間が足りないですから仕方が無いのですが、今でも基本はガイドラインです。このガイドラインは具体的には、

第一段階 国外もしくは国内において新型インフルエンザ患者が発生したが、当該都道府県内にはまだ患者が発生していない段階
第二段階 当該都道府県内に新型インフルエンザ患者が発生し、入院勧告措置に基づいて感染症指定医療機関等で医療が行なわれる段階
第三段階 新型インフルエンザ患者が増加し、入院勧告措置が解除され、当該都道府県内の全ての入院医療機関において新型インフルエンザに使用可能な病床を動員して対応する段階
第四段階 入院が必要な新型インフルエンザ患者数が膨大となり、医療機関内の既存の病床以外にも、新たに病床を増設することが必要となる段階
第五段階 新型インフルエンザの流行が終息傾向に入った段階


このガイドラインは強毒性の鳥インフルエンザを想定して作られていますから、構想段階では第一から第五段階に進む事を想定していると思っています。感染の拡大規模により第三段階やとくに第四段階をスキップする事があっても第五段階に進んで体制解除みたいな運用です。今回の新型でも実態はともかく第三段階には突入していませんし、実態としても第四段階になる可能性は極めて低いと考えています。

ここでなんですが、現在の日本での発生段階は公式には第二段階となっています。一方で5月19日に神戸市が宣言したのは、

    「まん延期」直前状態
非常に味わい深い表現で、神戸市や兵庫県と、厚労省の間でどんな舞台裏の折衝があったかを想像するだけで凄いものがあります。ここでちょっと微妙なんですが、ガイドラインの五段階と厚労省発生段階と方針は微妙に食い違います。確認してもらえれば嬉しいのですが、第二段階までは同じと考えても良いのですが、第三段階がちょっと異なります。「発生段階と方針」の第三段階はさらに3つに段階化され、
    感染拡大期
    まん延期
    回復期
こうなっています。これをガイドラインにあえてあてはめれば、
    第三段階:感染拡大期
    第四段階:まん延期
    第五段階:回復期
こんな感じじゃないかと考えています。ではでは、神戸の宣言はどこに当てはまるかと言えば、「発生段階と方針」なら感染拡大期であるが、限りなくまん延期に近い状態と言えそうです。ただそう解釈するとガイドラインの第三段階と第四段階の内容と大きな差が出ます。神戸の「まん延期直前」状態の方針はどちらかと言うと、ガイドラインの第三段階の運用に実質するようなものですから、どうにも表現が玉虫色の感じがします。

それとこれもあくまでも私の感想ですが、厚労省は日本が現在第二段階であるとしています。この第二段階とはもっとも感染が拡大した地域が第二段階であると解釈するのが宜しいようで、国内には第一段階の地域と第二段階の地域が混在していると考えると思っています。第二段階の地域は5/20付け事務連絡「新型インフルエンザ対策本部幹事会「確認事項」における感染拡大防止措置を図るための地域について(第5報)」によれば、

兵庫県神戸市の全域、兵庫県芦屋市の全域、兵庫県明石市の全域、兵庫県西宮市の全域、兵庫県尼崎市の全域、兵庫県伊丹市の全域、兵庫県川西市の全域、兵庫県宝塚市の全域、兵庫県三田市の全域、兵庫県加古郡播磨町の全域、兵庫県加古郡稲美町の全域、兵庫県加古川市の全域、兵庫県高砂市の全域、兵庫県姫路市の全域、兵庫県豊岡市の全域、兵庫県養父市の全域、兵庫県朝来市の全域。兵庫県美方郡香美町兵庫県美方郡新温泉町の全域。大阪府大阪市の全域、大阪府豊中市の全域、大阪府池田市の全域、大阪府吹田市の全域、大阪府高槻市の全域、大阪府茨木市の全域、大阪府八尾市の全域、大阪府箕面市の全域、大阪府三島郡島本町の全域、大阪府豊能郡能勢町の全域。滋賀県大津市の全域、滋賀県草津市の全域。

えらく細分化していますが、現時点ではこれだけで、今日にも東京の地域が書き足されると考えます。しかしこれ以外の地域は第一段階と考えて良さそうです。いろんな思惑があるのでしょうが、そういう感じの運用になっていると見ます。

ここで神戸の「まん延期直前」状態も厚労省の第二段階の枠内で行なわれていると考えるのが妥当です。この「まん延期直前」みたいな段階は、今回の実態に合わせて作られた仮の定義みたいなものでしょうから、厚労省的にはあくまでも第二段階のはずです。そういう便宜的運用を行なうのは別に良いのですが、次がどうなるかに非常に興味があります。

ガイドラインは段階が進んで終息する建前で書かれているように私は読んでいますが、神戸の現状からすると発見の封じ込めにより、来週中にも新型インフルエンザの患者はいなくなる可能性が高くなっています。患者がいなくなった時点で一体どういう運用が為されるのかに関心が寄せられます。考えられる運用は3つで、

  1. あくまでも第二段階の枠内の仮の「まん延期直前」でしたから、普通の第二段階に戻す
  2. 患者が確認されなくなったのであるから第一段階に戻す
  3. 上った段階は戻せないから「まん延期直前」のまま据え置き
普通の第二段階に戻ると根こそぎ発見、根こそぎ治療の状態に戻ります。これはこれで医療サイドも、患者サイドに混乱を呼ぶ方針になるかと思われます。第一段階にバックすると言うのは住民にとっても医療従事者にとってもありがたいのですが、上った段階が下がる運用があるのかどうかが疑問です。ではでは据え置きにして、これが長期化すれば今度は風評被害の問題が深刻化します。

来週中にも舛添大臣は大きな決断を行なう必要が出てくると考えます。一生懸命準備はしているようには見えるのですが、東京は遠いですから実態はよくわかりません。それでも東京で発見されましたから、行動を加速する因子になっているとは思っています。