5月20日の感染地日記

昨日は大きな動きがありました。5/19 19:59着信の神戸市医師会新型インフルエンザ対策本部よりの新型インフルエンザ関連情報(第14報)です。

 本日5月19日午後4時、神戸市は下記に示しましたように新型インフルエンザの「まん延期」を宣言しました。つきましては、各医療機関におかれましては、別紙患者振り分けシステム(5月20日開始)に基づく対応をお願いします。

平成21年5月19日
神戸市医師会長 川島龍一様
神戸市保健福祉局長 桜井誠
新型インフルエンザ患者発生に伴う診療について(ご依頼)
 さて、神戸市内の高校生が新型インフルエンザに感染していることが判明し、調査を進めた結果、現在も新型インフルエンザは増加しつつあり、今後も感染拡大が危惧されます。

 当初は、発熱相談センターにお電話いただき、市民病院、西神戸医療センター等での患者の受け入れを行なってきましたが、相談件数の激増、受入医療機関の外来受診者の超過及び病棟が満床となっております。

 このような状況は、神戸市においては、「まん延期」直前と考えております。そして、医療体制について、「まん延期」に準じた協力をお願いします。

 なお診療にあたっては、感染防止対策に十分ご留意いただきますよう併せてお願いいたいします。

 なお、新型インフルエンザ患者(疑いも含む)に対する医療機関の一般的な対応については、別途お知らせいたします。

「別紙患者振り分けシステム」が気になるところですが、

画質が悪いのはFax画像をそのまま取り込んだのでお目こぼしください。私が位置するのは「診療している医療機関」になります。そこへの「新型インフルエンザを心配している患者」の流れは、
  1. 従来の発熱相談センター経由
  2. 直接受診(電話相談後も含む)
実質のところ昨日までと変わりません。変わったのは公式に直接受診しても良くなった点かと思います。昨日までは「発熱相談センターに電話がつながらない」からでしたが、今日からは必ずしもそうではないと言うことです。診察後の対応ですが、
  1. 診療所の判断で軽症者は治療が出来る
  2. 重症者は保健所予防衛生課医務・薬務係に電話相談
振り分けシステムには一般医療機関から直接病院に患者を依頼する流れもありますが、今日のところは保健所予防衛生課医務・薬務係に電話するのが妥当かと判断しています。もっとも電話しても「そっちでよろしく」とも言われそうですが、今の時点では協力病院が公表されていませんから、とりあえず電話することにします。

発熱相談センターの機能はガイドラインの関係もあって残るようですが、公式にも「普通のインフルエンザ」として取り扱うに方向が明瞭に転換されたと解釈します。実態としては一昨日時点と大きく変わりませんが、公式の事務手続きが簡略化されたのは助かります。私の手許にある公式情報はこれだけなんですが、中央区医師会新型インフルエンザ対策本部が会員に流したとされるFaxの内容もご紹介しておきます。

新型インフルエンザまん延期の医療体制に対する準備のお願い 

平成21年5月19日
中央区医師会新型インフルエンザ対策本部

 現時点では国内発生早期のフローチャートで動いていますが、中央市民病院も、重症者のみ入院で軽症例は自宅に戻しています。実質まん延期の状態です。正式にまん延期が宣言されますと、一般医療機関でも新型インフルエンザ疑いの患者も診ることになります。医療機関そのものが新たな感染場所にならないために、また十分な診断治療が出来るように以下の準備等よろしくお願いします。

  • 電話してから来院が原則
  • スタッフ全員最低限マスク着用、随時消毒
  • 他の患者との接触を避ける
    • 診るスペースを分離(ほぼ不可能)
    • 診る時間帯を分ける
    • 患者宅に往診する。
    • その他医療機関ごとに工夫して下さい。
  • タミフルリレンザ、を準備して下さい
      問屋に注文して入手できる体制になっています。
  • 簡易迅速検査キットも準備が必要です。
  • 安定している慢性疾患患者への長期投薬
 混乱を避ける為まん延期のフローチャートはその時点でお知らせします。またマスコミからも市民に周知するよう要請しています。

見通しですが、神戸市でも新規の発見の抑制には力を入れております。あくまでも小耳に挟んだ噂話ですが、某診療所でFluA(+)患者が発見されても「軽症である」「高校生と接触がない」であればそのまま治療を昨日時点でも指示されたようです。当院の患者の発熱相談センター相談者も類似の事を話していました。そうなれば自然に新規の患者の発見は抑制されます。

現在発見治療されている患者も今週中には大部分が軽快治癒に向うと予想されるので、順調に行けば来週中にも新型インフルエンザ患者はいなくなり実質の終息宣言がなされるかもしれません。ただし厚労省の公式対策が第二段階のままですから、これとの整合性がどうなるかが気になるところですが、それはその時にならないと「わからない」としておきます。


お昼の追加情報

5/20 10:08着信の神戸市医師会新型インフルエンザ対策本部による新型インフルエンザ関連情報(第15報)「『まん延期』直前の医療体制についてのお願い」からです。

 昨日午後、川島会長及び神戸市行政は共同記者会見で、神戸市は第三段階「まん延期」直前と発表されました。すなわち「まん延期」に準じた医療体制を整え協力する旨確認したわけです。今後は対応可能なすべての医療機関において新型インフルエンザ患者(疑い例を含む)を診察していただくことになりますからここにご案内します。医療機関でのさらなる感染拡大を防ぐためにも以下のことに十分ご留意ください。

  1. 当初に配布したA3版のポスターは実情に合わなくなったので廃棄して直近に配布したポスターに貼り変えてください。
  2. 患者振り分けのシステムについては、これまでの国内発生早期のフロー図は解消されます。今後は昨夜送付した新しいフロー図に従って対応してください。
  3. 新型インフルエンザを心配する患者さんが、発熱相談センターに電話相談する流れは従来通り最優先されます。また一般医療機関を受診する場合も事前に電話連絡していただくように様々なメディアを通じて情報提供お願いします。
  4. 診療にあたってはスタッフ全員の感染防御策を講じてください。最低限サージカルマスクの着用をお願いします。
  5. ドア、ドアノブ、カウンター、トイレ、洗面まわり等、人がよく接触する場所は随時消毒を行なってください。(入口等にプッシュ式アルコール消毒剤を備えるのが望ましい)
  6. 以下のように、一般患者との接触を避ける工夫をお願いします。
    1. 自家用車で来院していれば、車内に待機していただき医師が車まで出向き診察する事も考えられる。
    2. 院内に入れる場合は必ずマスクを着用していただく。
    3. 一般患者と別のアクセス法で隔離室に誘導する。(可能であれば)
    4. 診療スペースを別室にする。(可能であれば)
    5. 患者宅に往診する。(可能であれば)
    6. 病状が安定している患者に対しては長期投与も考慮してください。
    7. 電話連絡を受けた場合に時間外に別枠で受付する事も考えられる。
    8. タミフル等の院外処方箋を交付した際、直接患者に取りにいかせず、患者家族か医院スタッフに取りに行って頂くか、薬局に配送をお願いするとかして患者との接触を避ける工夫も考えられる。
※上記はあくまでも参考であり、各医療機関の状況に応じた工夫をお願いします。

公式通達としては現在の状況からこうなるとは思いますが、ほとんどの開業医ではマスク着用ぐらいが現実的かと思っています。玄関にウェルパスぐらいは置くところもあるとは思いますが、なにぶん品薄ですから、全部の開業医が設置したら、たちまち市内から消滅します。それは良いとして、ちょっと気になるのは、

    タミフル等の院外処方箋を交付した際、直接患者に取りにいかせず、患者家族か医院スタッフに取りに行って頂くか、薬局に配送をお願いするとかして
提案としてはよく理解できるのですが、たしかこういう行為を医院が院外薬局に行なうことは拙かったはずです。そんな平時の事をここで言うのはおかしいとも言われそうですが、感染地といえども現在は平時です。平時の法の適用は受けて医療は行なわれています。こういうところも今後の感染症対策として考慮しておいて欲しいところです。たぶん今月ぐらいは「お目こぼし」の運用という事にはなると思いますが、次の時には整備しておいて欲しいと思います。